2019/04/16 特集

何が変わる? どう変わる? 消費税10% Are You Ready?(3ページ目)

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時流に適合した新しい収益モデルを。外食ならではの価値もアピール!

今こそ収益構造の見直しと自店の強みの進化を!

 現状、消費税率アップと軽減税率の導入は、飲食店にとってプラスの材料とはいえない。増税が消費を抑制する可能性が高く、外食が軽減税率の対象外になったことで、内食や中食が促進され、「外食離れ」も予想される。人手不足や経費増に苦しんでいる外食産業にとっては、まさに追い討ちにも等しい事態。二杉氏も「これまで飲食企業が重ねてきた企業努力も、そろそろ限界に近い」と分析。様々な調整を実施して、人件費をはじめとしたコスト増をなんとか凌いできたのだが、「既存の収益構造を抜本的に見直し、新しい仕組みや収益の柱を生み出すことがどうしても必要」と断言する。

 実際、大手企業を中心に新しい動きが生まれている。1つは、軽減税率導入によってニーズの高まりが予想されるテイクアウトを、新たな販売経路として開拓する動き。すでに、味のバリエーションや「できたて」にこだわり、飲食企業のノウハウを発揮したテイクアウト専門業態も生まれている。これは「マーケットの移行先で受け皿を作る戦略」(二杉氏)だ。一方、「大胆な改革を断行して、飲食店の新たなフォーマットを探る試みもある」(二杉氏)。例えば、機械化・IT化による新しいオペレーションで、無人化やキャッシュレス化を進める試み。人件費を大幅にカットすることで利益率を高める方法だ。また、「食べ放題」業態を中心に、無駄を省いて新たな付加価値を備えた新業態を模索する企業もある。「大切なのは、外食ならではの価値を高めながら、次の時代に通用する収益モデルを追求すること。外食は、なんといっても『できたて』が大きな武器で、例えば、焼鳥は専門店とコンビニでは調理法も味付けも根本的に違いますし、炭火で焼く焼鳥は家での再現はまず無理。それに近年人気の“大衆酒場”は、家飲みでは味わえない活気が持ち味です。そういった価値を堅持しつつ、次の成長戦略が求められています」(二杉氏)。

 一方、「消費増税を機に、単純な値上げを行うことは避けたい」と二杉氏は釘をさす。お得感のない値上げは客数の減少に直結するだけだからだ。もちろん、価格を据え置く代わりに、明らかに質・量を低下させるのもNG。店離れ、外食離れを招くことになれば、負のスパイラルにはまってしまう。さらに、「消費増税は確かにマイナス要素が強い。だが、チャンスでもあります。周りが軒並み値上げをするなかで、戦略的な価格設定をすれば成功する可能性は高く、新しい収益の柱をいち早く開拓できれば、一気にブレイクし、トップランナーになることもできる。市場が拡大しているインバウンドへのアプローチも一案です」とも。

 「商売の原点は『原理原則』と『時流適合』。時流が動いている今、適合努力の放棄はリスクでしかない」(二杉氏)。この機会にしっかりと戦略を練り、新しい飛躍を展望しよう。

今からでも間に合う!飲食店がしておきたいこと、考えておきたいこと

軽減税率対象商品の認識
自店が扱う商品の中の、軽減税率対象品目を洗い出す。テイクアウト、デリバリーは対象なので8%で販売可能。仕入れも細かいチェックが必要。酒は対象外(10%)だが、ノンアルコール飲料は対象品目。

仕入れ・メニューの見直し。価格の検討も
例えば「外食」の場合、税込2,000円のメニューは現在、本体価格が1,852円で消費税額は148円。ただし消費税が10%になると、税額は185円になり売価は2,037円。売価を2,000円に据え置くと、差額の37円は店の負担(利益の減少)になる。仕入れやメニューを見直し、自己負担を増やさない工夫が必要だ。

価格表示の変更
同じ商品でも、イートインとテイクアウトを両方やっている店では売価が異なってくる。来店客が混乱しないように、価格表示をわかりやすく変更する必要がある。

税率の異なる商品に対応するレジシステムの導入
複数の税率に対応できるレジシステムが必要に。助成制度が利用できるので(条件あり)、有効に活用したい。

スタッフへの知識・認識の共有
軽減税率とその対象品目、会計上の処理方法は、経理担当者だけでなく、スタッフ全員で共有しておきたい。税率8%でよいのに10%で請求したりすると、店の信用に関わるし、トラブルになる可能性も。

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