2020/05/25 特集

【飲食店の数字の見方】損益計算書を楽に作るための3つのポイント

現在、多くの飲食店が直面するお金の問題。そこで、計数管理コンサルタントの東海林健太郎氏に店舗の数字の見方・操り方を3回にわたり解説してもらう。第1回では、損益計算書の作り方と店舗運営に生かす方法を解説。

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更新日:2023.11.27

目次
厳しい状況の今だからこそ、お店の数字を理解しよう!
店舗の数字は見方がわかれば、簡単に理解できる
店舗の数字は2つのポイントを理解すればOK
1日の目標で考えると対策が立てやすくなる
家賃の坪単価が2万円上がると、どれくらいの客数増が必要か?
テイクアウトのコストをよく理解する
販促企画は数字で考える

 コロナ禍で飲食店は売上や利益が不安定になりがちだ。しかし、計数管理コンサルタントの東海林健太郎氏は、「店の売上や利益が把握できるよう計数管理をしっかり理解して、店舗運営に役立てることができれば、より強い店に成長できる」と話す。そこで、東海林氏に飲食店の計数管理について3回に分けて教えていただく。第1回の今回は、分かりやすい「損益計算書」の作り方、損益計算書を分析して店舗運営に生かす方法、テイクアウトや販促での効果的なコスト管理などを解説する。

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株式会社アップターン 代表取締役 東海林 健太郎氏
1968年、大阪生まれ。IT企業で業務改善活動に従事し、コンサルタント会社を立ち上げた後、飲食業界にも進出。現在、大阪、神戸で和カフェ「Mamezo&Cafe」を3店舗のほか、食パン専門店(FC)を運営する。その一方、計数管理コンサルタントとして外食企業の収益改善セミナーを10年以上実施。自店を中心に検証を繰り返し、そのノウハウを全国の飲食店に届けている。近著に「脱・どんぶり勘定!これからの飲食店 数字の教科書」(同文館出版)がある。

厳しい状況の今だからこそ、お店の数字を理解しよう!

 新型コロナウイルスの影響は、誰もが想定外のことだったかもしれません。しかし、今後も同様の事象が発生する可能性はあります。そのときのために、経営者や店長は考える力をつけておく必要があるでしょう。

 大阪・兵庫にある私が経営するカフェも、2020年春、家賃交渉を行いました。ここ数年、特に都市の中心部などは家賃が上がり続け、大家さんも強気な契約条件を提示していました。それでも多くの集客・売上が見込めるので、借り手は絶えませんでしたが、このような状況下では固定費を払えずに閉店・撤退する店が増えます。そして、経済状況を考えると次の借主もなかなか見つからないことが予想されます。そうなると、大家さんは家賃交渉に応じてくれやすくなるでしょうが、できれば目の前の数カ月だけではなく、2~3年先を見据えた交渉をして、長いスパンで固定費を下げる努力をするべきだと思います。

 また、経費でいうと、メニュー数、食材を絞る必要性も高まっています。「自分たちの強みは何なのか」を考え、「うちはこれで勝負するんだ!」という商材を見つけたら、それを軸にメニュー数を絞っていく。そうすることで食材費を抑えることができます。また、それに伴い、飲食店の専門店化も進むのではないでしょうか。

 感染対策だけでなく、コロナの影響が強くなれば営業自粛や短縮営業への対応など、飲食店にとって厳しい状況になりますが、経営における数字に関して見直しを行い、理解を深める良い機会でもあります。この特集で生きた数字の使い方を理解し、コロナの苦境を乗り切る取り組みをスタッフ一丸で行っていってほしいと思います。

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店舗の数字は見方がわかれば、簡単に理解できる

 店舗の状況を把握するためには、数字を理解することが重要です。数字が苦手という人は、「数字の見方がわからない」ことに原因があります。特に飲食店の店長は、店長になってから数字の管理を始める人がほとんどで、正しい数字の見方を知らない人が多い。そこで、まずは店長の立場から、店舗の数字を理解するための前提条件として“店の成績表”である損益計算書を分解し、よりわかりやすい表を作っていきましょう。

 店舗会議などでよく使われる店ごとの損益計算書。この項目(科目)の中で、変動費にあたるものだけが店長がコントロールできるコストになります。そして、その振り分けの方法は至って簡単です。

 最初に、店長の管理から外れる固定費を抜き出していきましょう。固定費とは、文字通り、固定で発生する項目(科目)のことを指します。もっと簡単に言うと、1日も営業しなくても支払わなければならない項目(科目)が固定費です。コロナ禍の現状に照らし合わせるなら、店が1カ月まったく営業していなくても発生する項目(科目)が固定費です。この固定費を損益計算書から抜き出します。下の表を見ながら具体的に考えていきましょう。

【図1】損益計算書

代表的な固定費

<地代家賃>
土地や物件の賃借料。店舗物件を借りた場合、営業していなくても毎月の家賃を支払う必要があります。

<人件費の中の社員給与(給与手当)>
まったく営業をしていなくても、社員として雇い入れている限りは、毎月の給与として支払いが伴います。

<法定福利費>
社員として雇い入れた場合、厚生年金や、健康保険、雇用保険、労働保険といった会社負担分が発生し、営業しようがしまいが支払う必要があります。

<賃借・リース料>
主に厨房機材などの什器はリースで購入することが多く、これはリース会社が代わりに購入し、それを一定の契約期間で借り受けます。これも営業の有無に関係なく、おおむね5~6年の間、毎月一定の費用を支払い続けることになります。

<減価償却費>
自分で用意したお金や、銀行に借り入れたお金で、店舗の造作や、照明、椅子、机などの最初の店舗の附帯設備を購入しますが、これは支払いを一括で行っても費用は国で定めた法定対応年数に合わせて、分割して費用計上していく必要があります。これもやはり、営業の有無に関係なく、毎月費用計上していくものです。

 上記のように抜き出してみましたが、1日も営業しなくても支払わなければならない項目(科目)と理解していれば、抜き出しは簡単です。

 店長の管理から外れる固定費を抜き出してしまえば、残ったものが変動費になります。この変動費が、店長がコントロールしないといけない項目(科目)です。その中でも飲食店の場合、食材原価(商品仕入高)をフードコスト、パート・アルバイト(PA)の人件費(雑給)をレイバーコストと言い、この2つを合わせたものがFLコストやプライムコストと言われるものです。

 店長が最も管理しないといけないのがFLコストで、日々、しっかりコントロールできれば、大きな問題を排除していくことができます。このことが理解できると、見るべき項目がかなり絞り込まれてくると思います。

 また、それ以外の変動費項目(科目)である水道光熱費、広告宣伝費、事務用消耗品費、通信費、旅費、衛生管理費などは、一般的に全て合わせても全体の10~15%程度。これらを合計して「その他諸経費」として管理することで、管理項目(科目)はグッと少なくなります。

まとめると、

  1. 固定費は店長がコントロールできないもの
  2. 変動費の中でFLコストが一番コントロールしないといけないもの

 これさえわかっておけば、損益計算書の見方がすごくシンプルになってくるはずです。そして、このFLコストだけを抜き出せば、毎日の売上と比較して、1カ月のうち今日までの食材原価率によって、無駄な仕入れを行っていないかが見えやすくなります。パート・アルバイトの人件費も同じです。働いてもらった総時間に平均時給を掛けると、今日までの人件費が見えてきます。さらに、それを売上で割ると、人件費率がオーバーしていないか確認できます。つまり、ムダが出にくい状況になるのです。

 大事なことは、大きく捉えて、問題があるときだけ細かく見ていく運営です。自店のFLコストを売上に対して何%にするか、基準を決めておけば、日々の管理はそこから大きく外れていなければ細かく見る必要はありません。逆に大きくオーバーしているときには、どこに問題があるのかを細かく見ていけば良いので、非常にシンプルな管理ができるようになるでしょう。

 そして、固定費は一度抜き出してしまえば、ほぼ毎月同じ金額ですので、各項目(科目)の細かい金額は気にせずに、合計金額だけを覚えておけば大丈夫です。また、固定費は営業しなくても発生する項目(科目)なので、実は月初1日目ですでに決まっていると言えます。さらに言うと、この固定費の合計金額を上回る営業利益を出さないと赤字になるということが、月が始まる前にすでに決まっているということです。例えば月の固定費の合計が上の表のように150万円の店舗で、30万円の利益を残したい場合は、この2つを足した180万円が月間の営業利益目標になります。

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店舗の数字は2つのポイントを理解すればOK

 数字を理解しやすくするためには、もう少し損益計算書を分解する必要があります。実は、損益計算書には客数が含まれていません。しかし、図1に下の図2のように客数(2,000)を入れると、売上高が500万円なので、客単価2,500円が算出できます。

 客単価は平均なので、「お客様1人をもてなすためのコスト」=「変動費単価」と、全体の変動費の構成比は同じ60%になります。同様に、「お客様1人からいただける利益」=「変動利益単価」と、全体の変動利益(営業利益)の構成比も同じ40%になります。これが大きなポイントです。これをもとにこの店の1人当たりの変動費単価と変動利益単価を計算してみましょう。

  • 変動費単価=客単価×変動費率=2,500円×60%=1,500円
  • 変動利益単価=客単価×変動利益(営業利益)率=2,500円×40%=1,000円
【図2】変動費単価と変動利益単価

 この店は1人のお客様から平均2,500円いただきますが、1人当たり平均すると、1,500円を食材原価とPA人件費、その他諸経費の合計分を支払うために残しておく必要があります。

 そして、残った1,000円が1人のお客様からいただける利益として蓄えられていきます。では、1人当たりに残る1,000円が全て自由に使えるお金かというとそれも間違いです。まずは、この1,000円を蓄えて固定費合計分を稼ぎ出さなければ赤字になってしまいます。

 先述したように、1人の利益、つまり、変動利益単価を積み上げていき、赤字にならないようにしなければなりません。ということは、固定費合計を変動利益単価で割ってあげれば、必要客数(損益分岐点客数)が出てきます。

固定費合計(150万円)÷変動利益単価(1,000円)=損益分岐点客数(1,500人)

 このお店は1,500人以上のお客様に来店してもらえれば、赤字にならなくてすむということです。この数字が損益分岐点客数になります。

 数値管理に強くなるためのポイントとして、固定費合計と1人当たりの変動利益単価、この2つの数字を理解できると、店舗運営のいろいろな計算が非常に簡単にできるようになります。

 次に、この固定費に利益目標を加えれば、月の目標客数が瞬時に計算できるようになります。例えば、この店で50万円の利益を出すために、何人のお客様の来店が必要になるでしょうか?

 50万円残すためには、固定費合計の150万円を足して変動利益(営業利益)を200万円稼ぎ出す必要があるため、200万円を変動利益単価で割ってあげれば必要客数が算出され、これに客単価を掛ければ必要な売上が求められます。

必要客数=200万円÷1,000円=2,000人
必要売上=2,000人×2,500円=500万円

 全て、変動利益単価(1人当たりの利益)で割ってあげれば、必要客数が出せるので、売上目標よりも客数で理解することにより、より具体的に対策が打ちやすくなってくるのです。

 損益計算書をここまで分解できれば、もう、ややこしい損益計算書を使って毎回計算を行わなくても、この簡単な表を使って管理が行えるようになり、素早い対策と行動につなげていくことができます。大事なことは、まず一度、自店の損益計算書をこの簡単な表に分解してみることです。

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1日の目標で考えると対策が立てやすくなる

 前項で50万円の利益を残すためには、2,000人のお客様の来店が必要だとわかりましたが、まだ大きすぎて漠然とした数字にしか見えないと思います。数字は、より具体的に想像できることが大事です。そのためにも、1日の目標に置き換えて考えるといいでしょう。例えば、2,000人の目標客数を営業日数で割ります。

2,000人÷30日=1日66.66人≒67人

 この67人を1日の目標とすれば、毎日の達成が具体的に見えてきます(下の表参照)。今日何人足らなかったのか。明日以降どんな対策が必要なのか、1カ月終わる前にいろいろな対策が考えられるようになります。人は具体的で、より身近に感じるものでないと、先延ばしにしてしまう傾向にあるので、日で区切るのは最も有効な対策だと言えます。

【図3】1日の目標客数

 誰もが簡単につかめる数字で、みんなで対策を考え、チャレンジしていくことで、店をスムーズに運営することができます。数字を簡単に理解できるようになると、数字で考えられる強いスタッフも生まれてきます。まずは、日の目標を共有して、対策を実行できるスタッフを育てていきましょう。

家賃の坪単価が2万円上がると、どれくらいの客数増が必要か?

 計算の仕方が理解できたと思うので、具体的な問題に入っていきましょう。

 20坪40席の居酒屋を同じ条件で運営している2店があります。違いは、家賃の金額だけです。

<A店>
家賃は坪2万円で20坪40席、客単価3,000円、原価率34%、人件費率27%、
その他店舗諸経費合計が14%

<B店>
家賃は坪4万円で20坪40席、客単価3,000円、原価率34%、人件費率27%、
その他店舗諸経費合計が14%

 固定費は家賃以外に、社員給与・法定福利費に月額40万円、厨房機材のリース料に月額10万円、初期投資を行った減価償却費に月額6万円かかっていました。つまり、固定費の合計はA店、B店それぞれ以下となります。

A店 2万円×20坪=40万円
   40万円+40万円+10万円+6万円=96万円
B店 4万円×20坪=80万円
   80万円+40万円+10万円+6万円=136万円

 A店とB店、それぞれ月間何人のお客様の来店が必要になるでしょうか?
最初は遠回りのように思えますが、1人に置き換えて計算していきます。

【図4】家賃坪2万円の店が必要な家賃は?

①客単価3,000円×変動費率75%=2,250円
②客単価3,000円×変動利益率25%=750円
③固定費960,000円÷変動利益単価750円=1,280人

【図5】家賃坪4万円の店が必要な家賃は?

①客単価3,000円×変動費率75%=2,250円
②客単価3,000円×変動利益率25%=750円
③固定費1,360,000円÷変動利益単価750円=1,814人

 坪単価2万円のA店は、月間1,280人のお客様が必要となり、25日営業として考えると、1,280人÷25日=1日51.2人≒52人のお客様の来店が必要。また、席数で割ると、1日に1.3回転が必要になります(実際の稼働率は65%程度として計算すると、感覚的には約2回転させる必要があります)。さらに、売上は1,280人×客単価3,000円=384万円を超えないと黒字にはなりません。

 坪単価4万円のB店は、月間1,814人のお客様が必要となり、25日営業として考えると1,814人÷25日=1日72.56人≒73人のお客様の来店が必要。また、席数で割ると1日に1.825回転必要になります(実際の稼働率は65%程度として計算すると、感覚的には約2.8回転させる必要があります)。さらに、売上は1,814人×客単価3,000円=544万2,000円を超えないと黒字にはなりません。

 坪単価が2万円上がっただけで、プラス160万2,000円の売上(約42%アップ)が必要となり、これだけ上げてA店と同じ損益になります。そして、売上の基準を上げるということは通常、それだけ人も増え、取り扱う食材も増えていきますので、ロスも出やすくなりますし、管理もそれだけ複雑になることを意味します。

 さらに、固定費は1日も営業をしなかったとしても発生する費用です。そのため、計画段階でそれだけのお客様を見込めるのか、入念に周りの店などを視察して来店予測を立てておく必要があり、身の丈にあった出店をすることが大切です。

 なお、固定費が下がると経営もかなり楽になりますので、この機会に適正家賃の交渉も積極的に行うことをおすすめします。

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テイクアウトのコストをよく理解する

 コロナの影響で、テイクアウトを始める店も増えています。新しい取り組みを行うこと自体は悪くはないのですが、実施するのであれば、それが本当に役に立つものなのかを数字的に見ていくことが重要です。

 C店は周りの店に合わせるように、600円の弁当を販売しました。食材原価率35%、包材原価率(容器、袋、お箸、お手ふき)10%、人件費率30%、その他店舗諸経費合計として10%だったと仮定します。このとき、1つの弁当からいくらの利益が残るでしょうか?

【図6】600円の弁当でいくらの利益が残りますか?

①客単価600円×変動利益率15%=90円

 テイクアウトは包材原価が余分に発生し、その包材もロットで購入する必要があるため、なかなか利益にはつながりにくいものです。周りの店と歩調を合わせて実施すると、途端に値引き競争に巻き込まれ、上の表のように1つ販売して90円の利益しか残らないという状況に陥ってしまいます。

 いっそのこと店から飛び出して、人が集まるスーパーの軒先や、商店街の空きテナントの軒先を借りるなどして、より多くの人に自店の宣伝をしていくのもおもしろいと思います(私の経営する店でも商店街での販売を定期的に行い、チラシを入れて認知度を上げる取り組みを行っています)。

 また、テイクアウト販売をするのであれば、次につながることを意識したいところ。例えば、テイクアウト商品を入れる袋の中に二次元バーコードを掲載した店のチラシやメニューを同封し、そのバーコードを読み込んで、応援メッセージを送っくれた人には、この状況が収束した後に使える「スペシャル感謝祭ご招待券」などを送付することも有効です。こういったつながりを得る目的があれば、薄利でもテイクアウトをやる意味があると思います。

 さらに、夜型の店であれば、“家飲み”ニーズの獲得に力を入れ、おつまみなどの単品商品を用意した方が、購入点数も増え、売上につながりやすいでしょう。どうせやるなら、自店の得意な料理でお客様に他店との違いを理解してもらう商品内容で実施した方が、客単価を上げることもできます。そして、それを発展させて、家で楽しむプチ贅沢なお重など高単価の商品を打ち出したり、思い切って店の軒先を貸す「場所貸しビジネス」もコストを掛けない手法として良いと思います。

 加えて、消費期限が長く、保存できる商品(実はギフト商品の販売が厳しい状況ですので、安く仕入れることもできます)を仕入れ、店頭で“訳あり商品”として売ることも可能です。

 周りがテイクアウトを始めたから、自店も同じようにやるという発想での参入は避けるべきだと思います。

販促企画は数字で考える

 飲食店は通販を行わない限り、自店の商圏は一般的に小さいものです(徒歩で来られるお客様は店を中心に半径500m程度、車・バイク・自転車を利用してのお客様は半径2km程度)。この距離が離れれば離れるほど、リピート回数は減っていきます。

 ということは、いかにこの範囲で働いている人、住んでいる人に支持してもらえるかが、より今後の明暗を分けていくと考えるべきでしょう。

 そこで、D店は8万円のコストをかけ、店から2kmの範囲に「ご近所優待」が付いたチラシを計1万部ポスティングしました。

 この店の客単価は3,000円、食材原価率35%、人件費率25%、その他店舗諸経費合計が10%と仮定します。また、特典としてシメのデザート無料券も付けました(原価100円)。ポスティングの販促効果は、掛けたコストに対して倍のお客様が来れば成功と考えたとき、何人の来店で成功したと言えるでしょうか?

【図7】1人の利益を理解して、費用対効果を算出

①客単価 3,000円×変動利益率 30%=900円

 来店特典として、デザートサービスに100円使うので、900円-100円=1人当たりの変動利益単価は800円になります。また、かけたコストの倍の効果があれば成功としているので、80,000円×2倍=160,000円の効果をあげる必要があります。

 目標とする金額を1人の変動利益単価で割れば目標客数が算出できるので、160,000円÷800円=200人のお客様が来れば成功。そして、1万部配布して200人の来店ということは、200人÷10,000部=2%の効果があれば成功と言えます。

 1人のお客様から得られる利益(変動利益単価)がわかっていれば、目標利益金額をその1人の利益で割ることで目標客数が算出でき、具体的な行動に変えていくことができます。

 また、アルコール業態の場合はたいてい2人以上での来店が見込めるため、1枚のチラシが倍以上の効果として表れてきます。そう考えると、1%弱の反応があれば成功と言えるでしょう。

 実際には、新聞折り込みやポスティングの効果は0.3%程度と言われています。広い範囲に送りすぎることにより、効果が薄くなるということも多いのです。半径2kmの範囲に配る場合と半径4kmに配る場合では面積は4倍に増え、当然コストも4倍近くかかってきます。そうであれば、半径2kmの範囲に絞って4回配る方が、刷り込み効果も生まれ、足を運んでもらうためのきっかけにもなると思います。

 普段から地元のお客様に定期的に店の変化を発信し、来店頻度を上げる取り組みが大切です。自店の近くにいるお客様が最も再来店の可能性が高いお客様なのですから。

 なお、せっかくチラシを作ったのであれば、店内でも配り、あなたの店を選択し、来店してくれたお客様にもアピールして、さらにリピートの可能性を高めましょう!

 第2回では、客数・原価の面から実践的に店舗の数字を見ていきます。

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