COST MANAGEMENT① 正しい数字を把握する
FLRコストは70%以内に。現状を知ることが重要
飲食店経営において、コスト管理は避けて通れない大命題。それゆえ、常にコスト意識を持つことが、持続的な店舗運営に欠かせないのは、言うまでもないだろう。だが、Credo税理士法人・代表の水野剛志は、「自店舗のコストを考えるための大前提である、正しい数字を把握できてないケースが非常に多い」と指摘する。
「とりわけ3店舗以上を展開している場合、コストに関して各店舗で正しい数字が見えていなければ、経営は成り立ちません。それにも関わらず、売上の数字だけを意識している、“どんぶり勘定”の経営者も多いのが現実です。そうなると、経営が危うくなる可能性は極めて高いと言えるでしょう」。財務を中心に数多くの飲食店をサポートしてきた水野氏の経験上、個店、特に歴史の長い店などで、コスト意識が低いケースが見られるという。
飲食店の場合、きちんと利益を上げられるかどうかは、三大コストである「FLRコスト」をいかにコントロールできるかに大きく左右される。FLRコストとは、変動費の「Food」(食材原価)と「Labor」(人件費)、そして、固定費の「Rent」(家賃)のことを指す(下囲み参照)。
水野氏は、「FLRコストの売上に対する構成比率の適正水準は70%以内」だと語る。「FLRコストが売上の約70%であれば、利益はおおむね10%程度残ります。75%であれば、利益は5%程度となり、FLRがそれ以上になってしまうと、ほとんど利益は残りません。これはどんな業態にも共通した数値です」(水野氏)。
FLRコストを売上の70%以内に保つには、変動費であるFLコストの管理が重要。一般的にFLともに30%が目安と言われるが、それぞれを正確に把握するにはどうすればよいのか。
人件費は給与や賞与のほか、社会保険料や通勤費などを足して算出する。一方、食材原価については、毎月の棚卸しが大事になってくる。棚卸しをして食材やドリンクなどの在庫数を出し、仕入れた数と売り上げた数を照らし合わせることで、正確な原価率が算出できる。「そもそも棚卸しをしておらず、毎月の材料費がどれだけかかっているのか、把握できていない店も多い」と水野氏。ただ、経営者が日々の営業に追われる個店では、毎月棚卸しをする余裕がないということも少なくない。「その場合は、2カ月平均の原価率を算定することから始めてください。単月の仕入れ金額だけを見ていると、月をまたぐ在庫などの兼ね合いから、正確な原価率を見誤ることもあります。2カ月平均で見ると、おおむね正確な原価率を把握することができるはずです」(水野氏)とアドバイスする。
また、FLコスト(特に棚卸し)は、店長など責任者を決めてやるようにすれば、計算の誤差も生じにくい。「とにかく、正しい数字を出すことがコスト管理のスタートラインです」(水野氏)。