2021/01/07 繁盛の法則

大阪から東京に移転して進化を続けるスパイス料理店とは

大阪・谷町四丁目にあったスパイスカレー店「ゼロワンカレー」が、東京・三田に移転し「ゼロワンカレーA.o.D」として2019年9月にオープン。南インドスタイルのカレーに加え、夜はスパイスを使った料理も提供する。

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ゼロワンカレーA.o.D(東京・三田)

Key Point

  1. 南インドでの修業を基にした料理を提供
  2. 東京移転を機に商品や営業スタイルを一新
  3. 夜は酒類とスパイス料理の組み合せを提案

自炊生活の中で作ってきたスパイスカレーが出発点

 大阪・谷町四丁目で人気のあったスパイスカレー店「ゼロワンカレー」が、2019年9月に東京・三田に移転し、「ゼロワンカレーA.o.D」として新たなスタートを切った。南インドスタイルの定食「ミールス」に加え、夜はスパイスをふんだんに使ったオリジナル料理も提供し、周辺のビジネス街、住宅街、学生街から幅広い客層を誘引している。

 オーナーの立田侑志氏は、1988年宮崎市生まれで、19歳で大阪に移り、自炊生活の中でスパイスを使った料理をよく作るようになった。2012年から谷町六丁目のジャズバーを火曜日の夜だけ間借りし、「ゼロワンカレー」の営業を開始。2013年から、南森町でもかけ持ちで間借りしてカレー店を週4回営業するようになり、次第にファンを増やしていった。その過程で、自己流で作るスパイス料理に限界を感じるようになり、「どこかの地域で、伝統的かつ合理的なスパイスの使い方を学びたい」と、2013年から毎年1カ月ほど、スパイスの本場である南インドを訪ねるように。初回は料理修業のためにコーディネーターに依頼したが、以降は独自に旅程を組み、南インド料理の中でも高級リゾートホテルや中級以上のレストランで提供される洗練された料理を食べ歩き、ときには飛び込みで料理法を教えてもらいながら、実体験を積み重ねた。とりわけケララ州の料理の豊富さ、奥深さ、良質な材料をふんだんに使ったリッチな味わいに魅了されたという。

 その経験を生かすため、2014年8月、谷町六丁目のビルの地階に9.5坪12席の店舗を出店した。南インド料理のミールス専門店とし、夕方までに売り切れる日も多かった。そんな折、アルバイトとして応募してきたのが、パティシエールとしてケーキ店で働いていた妻の桃子さんで、2人は2016年に結婚し、桃子さんの腕を生かしてスイーツ類を「オカシモアルヨ」というネーミングでメニューに加えた。旬のフルーツやスパイス類を使ったケーキや焼き菓子を販売。焼き菓子はテイクアウトにも対応し、好評を得ていた。しかし、手狭な店舗では出したい料理を作れず、移転、拡大は喫緊の課題となっていった。

ベーシックなランチメニューの「2種ミールス」(1,250円~)で、チキンマサラ(写真奥一番右)とベジマサラ(同奥、右から2つ目)を選び、レモンライス(100円)にしたもの。ミールスでは、カルナータカ サンバル(同奥一番左)、ラッサム(同奥、左から2つ目)と、ライスの上のダールタルカ(豆の煮込み)、ライスの計4品はお替り自由。皿の上の料理を混ぜ合わせながら食べる

より広い店舗と新たな市場を求めて東京への移転を決意

 大阪でも物件を探したが、マーケットとしてより大きな東京に目を向けることにした。路面で、最寄り駅から近い物件を不動産業者に探してもらい、紹介された一つが20坪強の現物件。以前は青果店だったが、ほぼスケルトンだったため、間口の広さを生かして開放的で南国のリゾートのような内外装に。店名にも“南の香り”を意味する「Aroma of Dakshin(ヒンディー語で南の意)」の頭文字を加えた。

 東京移転を機に、料理は素材から全てを見直した。「大阪ではスパイスカレーの店が増えていますが、ほとんどがご飯にかける無国籍のカレーで、まずご飯ありきという、いわゆるカレーライスの文化が強過ぎるのです。ミールス以外の料理を食べてもらうには、大阪では難しいと考えたことも、東京移転を決めた理由の一つでした」と立田氏。東京でもランチはミールスを提供するが、「ベジミールス」(1000円)から「5種ミールス」(2650円)まで多彩な組み合せが可能で、しかも全てのミールスに9種の副菜が付き、うち3種はお替り自由。ライスもお替り自由で、「ゼロワンベーシック」、「レモンライス」(100円)、ケララ州産の「レッドマッタライス」(250円)の3種から選べる。カレー2種や副菜の量は少なめながら、好みのケーキとソフトドリンクが付く「レディースセット」(昼2150円、夜2450円)は、男性もオーダー可能で、ケーキも食べたいというお客に好評を得ている。カレーはチキン、野菜、ラム、魚、スペシャルの5種類を常時用意。使う素材は、旬を大切にしながら頻繁に入れ替えている。スペシャルでよく登場するのは、兵庫の猟師から直接仕入れる鹿肉を使ったカレーで、臭みがないため、シンプルなスパイス使いで仕上げることが多い。夜は、アルコール類とともにスパイス料理を楽しむというスタイルを提案。スパイスに合わせ、ビオワイン、フルーツワイン、クラフトビールなども提供する。客単価は昼1600円、夜3000円で、特に昼はウエイティングが途切れないほどの人気店となっている。

 同店が東京移転により、さらにパワーアップし、南インド料理をベースとする多彩なスパイス料理で支持されている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 毎年、南インドで料理修業し、自己流から脱した奥深いスパイス料理を提供している。
  2. 立地、店舗、商品を一新し、進化した営業スタイルを実践している。
  3. 夜は酒とスパイス料理を味わう楽しみ方を提案している。

 立田氏は今後も多彩なスパイス料理を提供していく意向で、そのためにもスタッフの増員を予定している。

ゼロワンカレーA.o.D
住所
東京都港区三田3-2-9 杉浦ビル 1F
TEL 03-6722-6380
営業時間
11:30~14:30(L.O.)、17:30~20:30(L.O.)
定休日
水曜日、木曜日