ピッツァ・ケイ 新御茶ノ水店
Key Point
- イタリアでも修業を積んだオーナーシェフが料理を提供
- ピッツァはS、M、Lの3サイズを用意し、Sサイズ384円~で販売
- コロナ禍の状況を見ながら無理のないスタートを切る
1号店は「怪しげな店」として、独特の存在感を発揮
イタリア製のピッツァ用小麦粉を使って生地を手作りし、石窯で焼き上げる本格的なナポリスタイルのピッツァを、Sサイズ384円~という手ごろな価格で提供している「ピッツァ・ケイ 新御茶ノ水店」は、周辺で勤務する人や休日に訪れるファミリーなどを集客し、じわじわと顧客を増やしている。
経営者である株式会社カルドの社長・須方京(すがた けい)氏は、1970年東京生まれで、1990年代を中心にキャバクラ、ホストクラブ、寿司店、バー、たこ焼き居酒屋など、いわゆる夜の店を東京・新宿の歌舞伎町と西麻布で手掛けた経歴の持ち主。西麻布のバーでは腕利きのシェフを雇っていたが、経営が思わしくなくなってきた際、そのシェフに代わって自身がキッチンに入ることにしたが、それほど簡単にはいかなかったため、いったん閉店してイタリア料理を修業することにした。2007年から株式会社グローバルダイニングの「ラ・ボエム」で1年、株式会社HUGE(ヒュージ)の六本木ヒルズ内「リゴレット バー アンド グリル」で2年修業を積んだ。そして、自身が経営していた他の店舗が従業員の独立や経営環境の変化により閉店を余儀なくされる中、唯一残っていた東新宿のたこ焼き居酒屋をリニューアルし、2010年1月、「ピッツァ・ケイ 新宿店」(32坪39席)をオープンした。
ピッツァをメインとしたのは、テイクアウトに強いという特性と、都内で増え始めた高単価のナポリピッツァ専門店と差別化するのが狙いで、ピッツァはS(生地80~90g)、M(160~170g)、L(240~260g)の3サイズを用意し、「マルゲリータ」や「マリナーラ」はSサイズ384円という手頃な価格で打ち出した。これにより、パスタとピッツァのS、あるいは2種のピッツァをSサイズで1枚ずつ、といった組み合せで注文しやすくなり、1人や少人数の来店客に喜ばれている。また、修業先で学んだ料理を中心とする小皿料理も300円~、ワインはボトル1,500円均一と、気軽にオーダーできるようにした。
一方、店内は閉店した他店舗で使っていたシャンデリアや彫像などで装飾したため、独特の怪しげな雰囲気を醸し出している。当初、須方氏はこの内装に引け目を感じていたが、「怪しげなお店だけど、価格は安いし、なかなかおいしい」という評判を得て、ついには「この店は怪しげだからこそ意味がある」と評されるまでになった。また、スタッフも育ってきた2017年に、1年間のイタリア修業を敢行。現地では料理学校と飲食店で研鑽を積み、日常生活に根付いたピッツァや料理に触れた。
海外進出への試金石として、2号店を出店
帰国後は「イタリアで修業したシェフの店」としてさらに評価を高めたが、一方で「2020年の東京オリンピック後は日本は不景気になる」という予測を憂慮し、打開策を探り始めた。そんな中、たまたまベトナム関連の人脈の多かった須方氏が、経済成長と人口増が顕著なベトナムで、日本人が経営する高級ピッツァチェーンが台頭しているという話を聞き、現地を見てみようと準備を整えた。ところが、2020年3月頃からのコロナ禍の影響でベトナム入国時の規制が強化され、現地訪問はいったん延期することにした。
コロナ禍の様子を見ながら、都内でも物件を探したところ、見つけたのが地下鉄新御茶ノ水駅近くの現物件だった。路地沿いではあるが、角地にある1階15坪35席の物件で、2面がガラス張りとなり、オープンカフェ風にも使える開放的な造りが気に入り、2021年7月に契約した。「ここでうまくいかなければ、ベトナムに出店しても成功するわけがない」という思いも出店を決めた理由だった。ピッツェリアに不可欠の石窯は、状態のいい中古品を調達したが、他は居抜きの造作を生かすことで初期投資を抑え、将来的に売上が上がったら逐次改装したり、2階を借りるなどしようと考えた。さらに、須方氏がこだわったのが、店内奥に置かれたアップライトピアノ。いわゆる「街角ピアノ」が注目される中、生演奏やミニコンサートなどができたら楽しいだろうという思いから、ネットオークションで見つけて購入したという。
翌8月はコロナ第5波がピークで、7~9月は東京オリンピック・パラリンピックが開催されていたこともあり、この期間のオープンは避け、感染状況が落ち着いてきた10月半ばからランチで営業を開始。11月からはディナーも営業するようにした。2022年の年明けから3月21日まで、まん延防止等重点措置が発令されていた期間は、ディナーのイートイン営業は21時までとしていたが、デリバリーは23時まで対応。また、豊洲市場の仲買人や、全国の漁港とネットワークを持つ業者を通じ、新鮮な魚介類の入手ルートを確保しており、コロナ禍が落ち着き客数が安定してきたら刺身で存分に味わって欲しいと、看板には「PIZZERIA+TRATTORIA+SASHIMI」と掲げている。周辺には企業や病院、学校などが多くあるため、平日のランチ需要も高く、週末には近くの音楽教室に通う子どもを連れたファミリーなどが毎週のように来店するという。
同店がコロナ禍にあっても2店目の出店に踏み切り、認知度を上げている要因は以下のようになるだろう。
- イタリアでも修業したオーナーシェフによる手作りのピッツァや料理を提供している。
- ピッツァはS、M、Lの3サイズを用意し、Sサイズ384円~という手ごろな価格を打ち出している。
- コロナ禍の状況を見ながら、初期投資を抑えた。
須方氏は、まだベトナム出店を諦めたわけではなく、今後の情勢を見極めながら、将来的にはベトナムのほか、シンガポール、イタリアにも出店したいという夢を持つ。スタッフにも海外勤務を経験できるチャンスがあることを示して、楽しく働いてもらいたいと考えている。
(Text and photo by Food Biz)
住所
東京都千代田区神田小川町3-26-20 大築ビル 1F
TEL 03-5577-7033
営業時間
11:00~15:00(火~日曜日)、17:00~23:00(火~土曜日)(変更の場合あり)
定休日
日曜日・祝日の夜、月曜日
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