2022/06/07 繁盛の法則

独自の料理と多彩な酒類を提供するスパイス居酒屋とは

東京・文京区向丘にある居酒屋「スパイスバル コザブロ」は、スパイス料理を核にしつつ、旬の食材を使った週替りの料理が人気の店。住宅立地で地域密着型の運営をして集客に成功している。

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スパイスバル コザブロ

Key Point

  1. 料理教室で多様なスパイス料理を習得
  2. 旬の素材を使った料理を毎週打ち出す
  3. 住宅立地で地域密着型の運営を継続

居酒屋の出店を目指す中で、ランチ対策としてカレーに着目

 店主の菅原孝三郎氏が工夫を凝らして作るスパイス料理が楽しめる「スパイスバル コザブロ」は、居酒屋風の気取らない雰囲気も魅力で、生活の一部のように頻繁に立ち寄る地元のファンが多い。オープンは2017年4月。東京の地下鉄本駒込駅から徒歩5分ほどの場所にある。店の看板は小さいが、周辺は閑静な住宅街で明かりが少ないため、夜でも十分に目立つ。店舗規模は11坪14席で、カウンター席の後ろの壁面には、スリランカをイメージした明るい絵が描かれている。現在は新型コロナウイルス感染予防のため、店内が密な状態にならないように調整している。

 菅原氏は1975年東京・文京区生まれで、高校卒業後はさまざまな仕事を経験したが、28歳の時に東京・上野の焼き鳥店に入って3年ほど勤務し、いずれは小さな居酒屋を経営したいと思うようになった。また、独立したら昼も営業しないと採算が取れないだろうと考え、ランチのメニューとして人気の高いカレーに着目した。当時は特定の国や地域に特化したカレーへのこだわりはなかったため、スタッフを募集していた東京・築地市場内の「印度カレー中栄(なかえい)」に2007年に入社した。「中栄」は大正元年(1912年)創業の老舗で、日本的な懐かしい味わいのカレーで定評があり、2018年からは豊洲市場で営業している。市場内の食堂とあって始発電車で出勤する日々の傍ら、菅原氏はスパイスの講座を受講し、そこで知り合ったスパイス料理好きの仲間との交流を深め、インド料理のイベントなどにも参加するようになった。

 中でも多大な影響を受けることになったのは、インドおよびスパイス料理研究家であり、東京・西荻窪で料理教室「サザンスパイス」を主宰する渡辺玲(あきら)氏との出会いだった。「サザンスパイス」では単発でさまざまな料理を分かりやすく教えてもらえることから、菅原氏は40回以上受講し、習った料理は自宅で再現して奥さんに試食してもらい、時には知人を招いて振る舞うようになった。次第に味への評価が高まり、レパートリーも増えていく中で、居酒屋をやりたいという以前からの漠然とした思いが、スパイス料理を核にするという具体的なビジョンとして固まっていった。

 「料理教室に通ううちに、お酒に合うインド料理もいろいろあると分かってきました。一番の決め手となったのは、スパイスを使った野菜料理が主役になる場合もあることです。肉や魚に加え、野菜も食べられるような店にしたかったのです」と菅原氏。物件探しも並行して進め、土地勘のある立地で、一人でも稼働できるような規模の現物件を契約した。「中栄」は2016年末で退社し、本格化に開業準備を始めた。

写真左は「アチャール盛り合わせ 5種」(1,980円)。アチャールは、インド風スパイスオイル漬けのこと。手前右がウドの 芽、以降時計回りに、砂肝、マッシュルーム、ツブ貝、ウズラ卵。内容は季節によって適宜変わる。写真右の「お好みのカレー2種合いがけ」(レギュラー 1,320円)は、レモングラスとコブミカンの葉を入れてタイ風のテイストを加えた「サメのカレー」(左)と、イ ンド・ゴア風に仕上げた「ラムキーマビンダル」(左/+200円、計1,520円)を選んだもの。カレーは定番4品目のほか、週替わりのデ ィナー限定カレーが加わる

季節の素材と自由な発想で作った料理を毎週ラインナップ

 同店のスパイス料理は、インドに限らず、ネパール、スリランカ、タイ、ベトナムなど、さまざまな国や地方の料理法を採り入れ、日本の旬の素材を生かしながら、菅原氏の感性で仕上げるものが多い。

 「渡辺玲さんに教えていただいたので、スパイスの基本的な使い方はある程度体にしみ込んでいますし、自分の根幹になっているのかなと思います。習ったことそのままではなく、自分なりに解釈し、表現できるようになってきたのも、渡辺さんのおかげだと思います」と菅原氏は語る。

 アルコール類は好きなものを自由に選んでほしいという考えから、ビール、ワイン、日本酒、焼酎、カクテルなど約40種をそろえている。冷菜、温菜、串焼き、一品料理などを酒類と共に味わい、最後はカレーで締めるという利用が多く、客単価は4,500円ほどになる。またランチをきっかけに夜の来店につなげたいという狙いから土・日曜日のみ、カレーをメインにランチタイムも営業し、客単価1,500円弱で1日平均30~40人を集客している。来店客の年齢層は20~60代と幅広く、うち女性が5~6割を占めており、一人で来店する女性客が多いのも特徴といえよう。

 同店が個性的なスパイス居酒屋として健闘している要因は、以下のようになるだろう。

  1. 料理教室に通ってさまざまなスパイス料理を習得。
  2. 定番商品に加え、日本の季節の素材を生かしたメニューを毎週打ち出している。
  3. 住宅立地にある隠れ家的な店舗で地元密着型の運営を続けている。

 「私はこんなふうに、お客様と対面でやり取りできる居酒屋が一番やりたかったことですし、このくらいの店舗規模が自分にはちょうどいいと感じています。また自分が楽しんで作った料理は、お客様も楽しんでくれるのではないかと思います。毎週違う料理が並びますが、自分がこういうふうに作りたいから作ってみましたという感じで、試作もしないし、レシピを書き留めたりもしていません。こんな大ざっぱなやり方ですが、その料理を食べてくれる、付き合ってくれるお客様がいるのは、本当にありがたいですね。料理を作りながらお客様と他愛のない話をしますが、それも楽しみに『また来るね、また来週ね』と言ってリピートしてくれるお客様が結構多いのです」と、菅原氏は確かな手応えを感じている。

スパイスバル コザブロ
住所
東京都文京区向丘2-34-8、1F
TEL 03-6874-1597
営業時間
18:00~23:00(LO.22:00)
土曜日11:30~14:30(LO.14:00)、18:00~23:00(LO.22:00)
日曜日・定休日以外の祝日11:30~14:30(LO.14:00)、17:00~21:00(LO.20:00)
(変更の場合あり)
定休日
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