2022/07/05 繁盛の法則

インパクトの強い自家製太打ちうどんで勝負する専門店とは

埼玉・さいたま市にある「肉汁うどん 桜」。豚肉やネギがたっぷり入った肉汁で食べるうどんを主力に平日はビジネス層、土・日曜日はファミリーを中心に集客する人気店だ。

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肉汁うどん 桜

Key Point

  1. 武蔵野地方で人気の高い肉汁うどんに着目
  2. 高品質な小麦粉で自家製麺する太打ちうどんで差別化
  3. コロナ禍での利便性を考え販売方法を多様化

創業2年で週末は1日300人が来店する人気店に成長

 東京の多摩地方と埼玉にまたがる、いわゆる武蔵野エリアは、良質な小麦の産地であり、独特のうどん文化が育まれてきた。中でも、太打ちでコシの強いうどんを、具がたっぷり入った温かいつけ汁で味わう食べ方は人気が高く、専門店も多い。さいたま市見沼区にある「肉汁うどん 桜」は、看板通り、豚肉やネギがたっぷり入った肉汁で食べるうどんが看板で、平日はビジネス層、土・日曜日はファミリーを中心ににぎわいを見せている。

 オープンは2020年7月で、コロナ禍の第一波が落ち着きを見せていた頃だった。とはいえ、2020年4〜5月の最初の緊急事態宣言により機器類の納入に遅れが生じ、6月に予定していた開業がずれ込むなど、オープン前からコロナ禍の影響を受けてきた。その後も緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に伴う要請に従い、時短営業やアルコール類の提供自粛などを遵守しながら営業を行っている。

 また、当初は60坪の店舗に38席の客席を設けていたが、感染予防対策としてアクリル板を設置したり、客席間隔を広げたりするなど、現在は33席に減らしており、当面はこの席数で営業を続ける考えだ。さまざまな規制が解除された2022年春以降は、平日で1日平均150人、週末は300人を集客している。

 経営元は株式会社サンコースタッフサービスで、さいたま市内のうどんの繁盛店で7年強働いていた吉田翔太氏を店長として迎え、新規事業としてうどん店の出店を進めた。店舗物件を探す中で、いくつかの候補地が出てきたが、ロードサイドに立地し、家賃も手頃な、元はコンビニエンスストアだった現物件を選んだ。最寄り駅であるJRさいたま新都心駅から約2.5kmの距離があり、路線バスの利便性もあまりよくないことから、来店客の9割以上が車利用で、ほか近隣の常連客が自転車や徒歩で訪れている。

 店名の「桜」は、1枚1枚の花びらが一つになって美しい花を咲かせる桜のように、スタッフ一人一人の力を合わせて繁盛店にしていこうという意味が込められている。同時に、看板や器に桜色を使い、女性も入りやすい雰囲気を出している。来店客の男女比は全体では7対3だが、一人で来店する女性も少なくない。

手前が看板商品の「肉汁うどん」(並750円)。自家製麺のうどんは、風味豊かな 高級小麦粉「金斗雲」を使い、2日かけて製麺する。しょうゆベースの温かいつけ汁には、国産豚のバラ肉、埼玉産の長ネギ、油揚げがたっぷり入っている。うどんは太打ちでコシが強いため、1本ずつ汁に付け、よく噛んで食べることになるが、それにより小麦本来の味や香りをしっかりと楽しめる。奥は冷たい「ぶっかけうどん」(並880円)で、温泉玉子、さっと茹でた豚バラ肉、大根おろし、カイワレ菜、刻みノリ、揚げ玉を乗せている

開業後も販売方法の多様化や新商品の開発を行い、進化を続ける

 うどんは独自に試作を繰り返し、小麦粉選びから新メニューの開発まで、スタッフ全員が意見を出し合いながら試行錯誤してきた。小麦粉は、数種の粉を使って製麺し、食べ比べた上で、日清製粉グループの「金斗雲(きんとうん)」を選んだ。やや黄色味がかった色合いと、香りの高さ、うどんにしたときのもちもち感やつるつる感などを特徴とする小麦粉である。さらに2日かけて製麺し、コシが強く、噛み応えのある独特の太打ち麺で個性を出している。

 「しっかりと麺を噛んでもらって、その食感や、鼻に抜ける小麦粉の風味を楽しんでいただきたいからです」と吉田氏は説明する。

 外出や外食の自粛が求められていた期間は、デリバリーやテイクアウトに対応し、一時はデリバリーが8割を占めたこともあった。テイクアウト用の商品は、1時間後に食べたときのおいしさを考え、特に時間が経つと柔らかくなり過ぎてしまう長ネギは、さっと火を通す程度にして容器に詰めるなど、調理法や包材を工夫。その効果もあり、テイクアウトが平均で売上の3〜4割を占めるようになった。テイクアウトを大口で注文する常連客も増えてきたため、以前は店舗まで取りに来てもらっていたが、5,000円以上の場合は自社の車で配達を行っている。

 同店が肉汁うどん専門店として、コロナ禍をしのぎながら地元のファンを獲得してきた要因は、以下のようになるだろう。

  1. 武蔵野地方で人気のある肉汁うどんを看板メニューとしている。
  2. 自家製麺によるインパクトの強い太打ちうどんで個性を出している。
  3. コロナ禍でのお客の利便性を考え、デリバリー、テイクアウト、配達など販売方法を多様化させている。

 うどんの中では「肉汁うどん」がオーダーの8割を占めるが、新メニューの開発にも取り組み、夏季限定(4月1日〜10月31日)で食欲を刺激する「ピリ辛スタミナうどん」(並980円)、冬季限定(11月1日〜翌年3月31日)で体がポカポカと温まる「カレー南ばんうどん」(並850円)を提供するなど、季節商品で目新しさを加えている。

 「スタッフみんなで工夫してきたうどん店なので、ゆくゆくは全国にチェーン展開したいですね」と、吉田氏は夢を膨らませている。
(Text and photo by Food Biz

肉汁うどん 桜
住所
埼玉県さいたま市見沼区南中野91-1
TEL 048-878-8233
営業時間
10:00~21:00(LO.20:30)(変更の場合あり)
定休日
無休(臨時休業あり)
https://r.gnavi.co.jp/6rcrbncr0000/

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