初回公開日:2022.7.19
営業利益率10%を維持!原価管理とメニュー設計の極意
「売上高はあるのに、なぜか手元にお金が残らない……」。これは、多くの飲食店経営者が直面する深刻な悩みです。集客や売上アップに成功したとしても、利益をしっかり残せるビジネスモデルを構築していなければ、長く安定した経営を続けることは難しいです。常に店舗の利益構造を意識し、食材原価や人件費などのコストから無駄を排除しながら、メニュー設計や集客で効率よく利益を残す仕組みを作ることが重要です。
飲食店が利益を出すには欠かせない、「飲食店の利益率・平均」「損益分岐点」の指標や、「利益率はどう計算するのか」という基本から、利益を最大化するための具体的な3つの方法まで詳しく解説します。
飲食店の営業利益率・原価率を見直したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
飲食店の利益率の算出方法や目安は?
(1)「営業利益率」と「原価率」が経営の最重要指標
(2)営業利益率10%以上が、安定経営の目安
「損益分岐点」を理解・意識する
営業利益率を高める方法①コスト削減
営業利益率を高める方法②メニュー構成・価格見直し
営業利益率を高める方法③売上を最大化する
利益率の高い飲食業態は?
利益率の高い居酒屋メニューは?
まとめ:正確な数値把握が繁盛店への第一歩
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飲食店の利益率の算出方法や目安は?
(1)「営業利益率」と「原価率」が経営の最重要指標
一言に「利益」といってもさまざまな種類がありますが、飲食店経営において最も基本的な指標として把握しておくべきなのが「粗利益」と「営業利益」、そして「原価率」の3つです。
まず、粗利益(売上総利益)とは、売上から食材原価を抜いた額のことで、計算式にすると、
粗利益=売上ー食材原価
になります。例えば、500円のドリンクを提供するためにかかった食材費が100円であれば、粗利益は400円となります。
また、「原価率」は販売価格に対する原価の割合のことで、
原価率=食材原価 ÷ 販売価格 × 100
で算出できます。上記のドリンクの例では、原価率は20%となります。
営業利益は、売上から食材費を含むすべての経費を差し引いた額のことで、
営業利益=売上ー全コスト
で算出できます。ここでいう全コスト(経費)には、
・固定費(人件費、家賃など)
・変動費(水道光熱費、販促費など)
の2種類があります。
ここで重要になるのが、「飲食店 営業利益率」という指標です。利益率はどう計算するのかというと、以下の計算式を用います。
営業利益率(%) = 営業利益(売上 - 全経費) ÷ 売上高 × 100
例えば、1日の売上高が50万円で、すべての経費を引いた後の営業利益が6万円残った場合、営業利益率は12%となります。売上がいくら上がっても、経費がかさみすぎてこの比率が低くなってしまえば、持続的な経営は困難になります。
(2)営業利益率10%以上が、安定経営の目安
一般的に、飲食店が健全な経営を続けていくための目安となる「飲食店 営業利益率」は10%以上とされています。
総務省の「2025年(令和7年)個人企業経済調査」によると、飲食サービス業の年間営業利益率は平均10.8%という結果が出ています。もちろん、業態や店舗の規模、立地によって飲食店の利益率・平均は変動しますが、まずは10%〜12%という数値を一つの目標に設定し、自店の収益構造をチェックしてみるのがよいでしょう。中には、徹底したコスト管理と付加価値の高いメニュー提供により、20%近い利益率を叩き出している繁盛店も存在します。
「損益分岐点」を理解・意識する
安定的な経営を目指す上でもう一つ忘れてはならないのが、飲食店の「損益分岐点」の把握です。これは「売上=経費」となり、利益も損失も出ない(営業利益がゼロになる)売上高を指します。つまり、「このラインを下回ると赤字になってしまう」という、経営における最低防衛ラインといえます。
飲食店 損益分岐点は、以下の計算式で算出が可能です。
損益分岐点 = 固定費 ÷ { 1 - ( 変動費 ÷ 売上高 ) }
例えば、毎月の売上高が250万円、固定費(家賃など)が120万円、変動費(食材や光熱費など)が100万円かかっている場合、計算式にあてはめると損益分岐点は200万円となります。この店舗の場合、月に200万円以上の売上を上げれば黒字となり、現在の売上250万円であれば、差し引き50万円の利益が出ていることが分かります。
赤字にならないための最低ラインを知ることは、不測の事態に備えるためにも欠かせません。新規出店を検討している場合なら、想定する客単価や客数からこの数値を導き出し、その立地や価格設定が適切かどうかを慎重に判断する材料になります。
なお、損益分岐点は家賃などの固定費を低く抑えるほど下がります。例えば自宅兼店舗のように、月々の家賃負担が少なければ、売上の変動に左右されにくいタフな経営が可能になります。
営業利益率を高める方法①コストの削減
(1)FLRコストを下げて、適正な割合を保つ
まずは、支出の大部分を占める「FLRコスト」の削減を検討しましょう。FLRコストとは、Food(食材費)、Labor(人件費)、Rent(家賃)の頭文字を取ったものです。自店のコストが適正かどうかは、売上に対するこれら3つの費用の割合を示す「FLR比率」で判断します。
FLR比率 =(食材費 + 人件費 + 家賃) ÷ 売上 × 100
健全な経営のためには、この比率を70%未満に抑えることが一般的な目安です。もし70%を超えている場合は、早急な対策が必要です。
| FLR比率 | 判定 | 経営状態のアドバイス |
|---|---|---|
| 60%以下 | 優良 | 非常に高い収益性。更なる投資も可能 |
| 70%以下 | 合格 | 一般的な繁盛店の目安。維持に努める |
| 75%以上 | 注意 | 仕入れやシフトなどコストの見直しが必要 |
| 80%以上 | 危険 | 損益分岐点を超えていない可能性大 |
具体的に飲食店 原価率(F)を抑えるには、仕入れ先を見直して安い食材を確保するだけでなく、日々の在庫管理を徹底して食材ロスを極力なくす工夫が求められます。また、人件費(L)に関しては、アイドルタイムのシフト調整や、モバイルオーダー、POSレジといったDXツールの導入による業務効率化が有効です。ただし、過度なコストカットはサービスの質を低下させ、客足が遠のく原因にもなるため、お客様の満足度を維持できる範囲で行うことが重要です。
家賃は固定費の中でも比重が高い一方で、FoodやLaborに比べると“出店後に削減しにくいコスト”でもあります。それだけに出店前の物件選びが重要。物件を決める前に、予測売上や損益分岐点を計算して、家賃に見合った業績を上げられるかをシミュレーションする必要があるといえるでしょう。
FLRコスト抑制策
■Food(=食材原価)を抑える方法
・仕入れ先を見直す
・規格外食品など、もっと安い食材を仕入れる
・在庫管理を日々行い、適切に発注して食材のロスを極力なくす
・メニュー数を絞り、使用する食材を減らす
■Labor(=人件費)を抑える方法
・従業員数を抑えて経営する
・来客数が少ない時間帯を把握してスタッフのシフトを変更する
・オペレーションや動線の見直し、生産性を高める
・DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、業務を機械化&デジタル化する
■Rent(=家賃)を抑える方法
・オーナー(大家)と交渉して家賃を下げてもらう
・空中階や郊外、地方など家賃の安い立地で出店する
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(2)水道光熱費・通信費を抑えて損益分岐点を下げる
水道光熱費や通信費は、FLRコストに比べると月々の支払額はそれほど大きく感じられないかもしれません。しかし、「塵も積もれば山となる」の言葉通り、毎月の固定費を少しずつでも抑えることが、長期的に見て損益分岐点を下げ、安定した利益アップにつながります。
■水道光熱費・通信費を抑える方法
・節電を徹底する(こまめな消灯や空調温度の管理)
・LED照明に取り替える(初期投資はかかるが長期的なコスト減に)
・節水ノズルを活用する(洗い場などの水の使用量を劇的に抑える)
・ガス料金の安い会社と契約する(基本料金の再確認、割引商品の検討)
・電気・インターネット料金を見直す(セット割引の検討)
(3)減価償却費・リース料を抑える工夫
厨房機器や設備の「減価償却費」も、経営を圧迫するコストの一つです。高機能な新品を購入するのも一つの手ですが、初期投資を大幅に抑えるためには中古品やリースのような選択肢も検討を。「固定費の棚卸し」を定期的に行うことが、結果的に営業利益率の向上に直結します。
■減価償却費・リース料を抑える方法
・中古品やリースで賄う(ガスレンジ、冷蔵庫、調理台などの厨房機器)
・リース契約の乗り換え(他社と比較してより安いプランへ変更する)
・使用頻度の低い機器の解約(本当に必要な設備だけに絞り込む)
(4)営業日・時間を見直して生産性を高める
さらに、無駄な人件費や光熱費を削減するために「営業日や営業時間そのものの見直し」も有効な手段です。自店の立地がビジネス街か住宅街か、また主な客層が誰かによって、最適な営業時間は異なります。長時間営業は幅広い客層を取り込める一方で、光熱費や人件費が高騰し、食材ロスのリスクも高まります。さらに、スタッフの長時間労働がサービスの質を低下させる懸念もあります。
ただし、店を閉めている間も家賃は発生し続けるため、近年では「店が稼働していない時間に店舗を別の事業者に活用してもらう(間借り営業など)」といった取り組みで家賃比率を下げる成功事例も増えています。現状の営業体制が、コストと売上のバランスにおいて最適かどうか、今一度客観的に分析してみることが重要です。
■営業日・時間見直しによる利益アップ法
・集客が弱い曜日を定休日にする
・メイン客層のニーズに合わせ、アイドルタイムの営業を休止する
・深夜・早朝営業の採算性を再検討する
営業利益率を高める方法②メニュー構成・価格見直し
コスト削減が「守り」なら、メニューの見直しは「攻め」の戦略です。
飲食店の利益率を高めるためには、単に安く売るのではなく、顧客満足度を下げずに一品あたりの粗利益額を最大化する視点が欠かせません。
自店の全メニューを、「注文率は高いが原価率も高い看板商品」と「原価率は低いが注文されやすい利益貢献商品(ドリンクやサイドメニューなど)」に分類して分析してみましょう。その上で、おすすめの仕方を工夫したり、盛り付けや演出で付加価値を付けて価格をブラッシュアップしたりすることで、店舗全体の平均的な原価率をコントロールし、収益性を高めることが可能になります。
営業利益率を高める方法③売上を最大化する
最後に、利益率向上の母数となる「売上の最大化」に取り組みます。
飲食店の売上は「客数 × 客単価」で構成されます。客単価を上げるにはメニューのブラッシュアップが有効であり、客数を増やすにはSNSや飲食店検索サイトを活用した集客が欠かせません。また、店内のオペレーションを見直して回転率を上げることも、売上アップへの近道となります。
さらに最近では、イートイン以外の収益源としてテイクアウトやデリバリー、EC販売(ネット通販)などを取り入れ、仕入れのボリュームメリットを活かしつつ利益を積み上げている店舗も増えています。
利益率の高い飲食業態は?
飲食店の中でも、比較的高い営業利益率を叩き出せる業態が存在します。代表的な4つの業態と高利益率を実現できる理由を紹介します。
(1)アルコール業態
【理由1】アルコールの高利益
アルコール類は、原価率が15〜20%程度と低く、調理の手間もかからないため、注文されればされるほど利益率が上がります。
【理由2】「おつまみ」のスピードと低原価
スピードメニューは、仕込みや調理の手間(人件費)がほぼかからず、原価も安いため、利益を押し上げる原動力になります。
(2)ラーメン店
【理由1】圧倒的な高回転率
客の滞在時間が短く、席数が少なくても1日に何度も席が回転するため、坪単価を極限まで高められます。
【理由2】低い仕入れ原価とオペレーションの単純さ
スープや麺などの原価率を比較的低く抑えやすく、メニューが絞られているため食材廃棄(ロス)がほとんど出ません。また、職人技が必要な工程をスープの工場一括管理などで自動化すれば、アルバイト中心で回せるため人件費も削れます。
(3)高級専門店
【理由1】原価率が高くても「利益の絶対額」が大きい
原価率が高くても、客単価が3万円であれば1人あたり1万8,000円の粗利が出ます。大衆店が1人あたり500円の粗利を積み上げるのとは、効率が違います。
【理由2】完全予約制によるコストの最適化
「完全予約制」を採用している高級店が多く、その日に必要な食材だけをピンポイントで仕入れるため食材廃棄が発生しにくいです。また、客数が事前に分かるため、無駄な人件費も発生しません。
(4)カフェ・喫茶店
【理由1】原価率が驚異的に低い
コーヒーやソフトドリンクの原価率は10%以下であることが多く、フードメニューに比べて圧倒的に粗利が高くなります。
【理由2】テイクアウトによる「席数制限」の突破
スタンド型のコーヒーショップなどの場合、狭い店舗(低家賃)で、席数の上限に関係なく売上を伸ばせるため、飲食店の弱点である「席数の上限」を克服できます。
これらの業態から分かる「利益率の高い飲食店」の共通点は、以下のいずれか(または複数)を満たしていることといえるでしょう。
・「調理の手間」を減らして人件費を下げている
・「滞在時間」を短くして回転数を上げている
・「事前予約」でロスとシフトの無駄をゼロにしている
・低原価のドリンクを売っている
利益率の高い居酒屋メニューは?
1)スピードおつまみ
塩キャベツ、枝豆など、宴会のスタートダッシュを支えるメニューです。もやし、キャベツ、冷凍枝豆などは仕入れ値が極めて安く「もやしナムル」や「叩ききゅうり」などは、ごま油と塩、調味料を和えるだけで完成するため、火を使わず、誰でも30秒で作れます。 熟練の料理人の人件費を必要としない点も、隠れた高利益の理由です。
2)イモ&粉もの系
粉物(小麦粉)やジャガイモは、食材の中でも原価が安い食材です。例えば、「お好み焼き」はキャベツと粉が主成分で、肉や海鮮の量を調整すれば原価を極限まで抑えられますし、ポテトフライも冷凍の業務用を大量仕入れして揚げるだけなので、ロスが出ず、原価・人件費ともに優秀です。
3)体験の付加価値があるメニュー
「すり鉢で自分で潰す!出来立てポテトサラダ」や「丸ごと1個自分で絞る!生搾りレモンサワー」など、お客様にとっては「自分好みの粗さに潰せる」「エンタメとして楽しい」という体験価値が生まれるため、通常より高い価格設定でも注文されます。一方、お店にとっては、本来なら厨房で行う「調理(潰す・絞る)」の労働力を、お客様が代わりにやってくれるメリットがあります。人件費(オペレーションコスト)を究極に削りつつ、客単価を上げられる付加価値メニューです。
4)「動画映え」を狙ったメニュー
「目の前でバーナーで炙る!肉寿司(またはしめ鯖)」や「これでもかと目の前でおたまから溢れさせる、いくら・ネギトロのっけ寿司」など、動画撮影を意識したメニューも付加価値が高いです。お客様は「料理」だけでなく「SNSに投稿して盛り上がるネタ(動画)」にもお金を払います。目の前でジュージューと音を立てて肉が焼ける瞬間や、山盛りに盛られるライブ感は、それだけで付加価値を乗せる理由になります。
5)ストーリー性・希少性の付加価値メニュー
「〇〇農場直送、朝採れ無農薬野菜のバーニャカウダ」や「お店で3日間煮込んだ、自家製ホロホロ牛すじ煮込み」といった、食材や調理法などのストーリー性や希少性を価値にしたメニューです。単なる「野菜サラダ」「牛すじ煮込み」なら500円ですが、「朝採れ」「3日間煮込んだ」というストーリー(手間や背景)を付けることで、「ここでしか食べられない特別なもの」と感じ、800~1,000円でも納得して注文してくれるはずです。
まとめ:正確な数値把握が繁盛店への第一歩
飲食店の利益率や原価率を改善することは、決して容易ではありません。しかし、現状の数値を正しく計算し、損益分岐点を把握した上で一つひとつの対策を講じれば、必ず結果は現れます。感覚的な経営から脱却し、データに基づいた「利益の残る経営」へと舵を切ることが、長く愛される繁盛店への近道といえるでしょう。
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