サーモンnoodle3.0
Key Point
- 経験10年以上のフレンチの料理人が商品開発
- ラーメン店として新たな客層である女性を獲得
- SDGsに通じる素材丸ごとの活用を実践
市場開拓の余地と海外展開の可能性を持つラーメンに着目
フランス料理の技法を生かし、サーモンを丸ごと使った独特のラーメンを提供する「サーモンnoodle(ヌードル)3.0」は、従来のラーメン店では集客しきれていなかった女性の獲得に成功している。2022年1月に東京の地下鉄神楽坂駅近くの路地沿いにオープン。11坪20席の店舗規模で1日平均200人を誘引し、うち女性が約半数を占めるのが特徴である。味わいも見た目も斬新さと繊細さを併せ持つラーメンもさることながら、モノトーンを基調色にした落ち着いた内外装や、陶芸家に店名を入れてもらったオリジナルの器など、細部まで女性を意識した店づくりを行っている。
経営元は2017年設立の縁petit(えんプティ)株式会社で、同社ではサーモンのほか、タイ(鯛)、タイ担々、カキ(牡蠣)、カキ担々、カニ、エビ、ウニ、貝、煮干しなど、特定の素材をテーマに、フレンチの要素や技術を加えたラーメン業態を開発してきた。2022年9月現在で、この「フレンチ×ラーメン」を都内に6店舗(うち直営4店舗)、大阪と神戸に3店舗(うち直営1店舗)を出店している。2023年末までに20ブランドまで増やす計画で、1ブランドにつき20店舗、計400店舗の全国展開を目標の一つに掲げている。同時に、海外からの観光客にはラーメンは和食の一つと捉えられ、人気も高いことから、アジアを中心とする海外出店も進めていく考えだ。
代表取締役の丸尾 聖(まるお きよし)氏は、1986年大阪生まれで、高校卒業後は大阪の調理学校の辻学園で学び、修了後1年ほど同校の職員として勤務した。その後、バーの多店舗化、カレーショップと農産物直売の複合店などに携わり、2012年に東京に移った。飲食店の開業指導、商品開発、人材育成などのコンサルティングに関わりながら、知人を支援し、たこ焼きバル、餃子バルなどの出店も手掛けた。その中で、調理師学校時代の同期生や後輩が料理人として十数年のキャリアを積み、中にはフランス修業を経験した友人もいたことから、仲のいい仲間とともに、おもしろい事業をやってみたいと考えるようになった。彼らの調理技術やセンスを生かしつつ、まだまだ市場開拓の余地があり、かつグローバル展開の可能性がある商材としてラーメンに着目し、フレンチ×ラーメンの商品開発に着手した。料理人、デザイナーも含めて話し合い、ターゲットとする客層に合わせたスープやタレなどの味、麺との組み合わせ、トッピングのバリエーション、見た目のインパクトなどを考慮し、来店客の記憶に残るような商品となるように工夫を重ねた。
加えて、自社の直営で多店舗化するのではなく、魅力ある業態を創出し、その仕組みを販売して加盟店に繁盛してもらうフランチャイズ展開を目指している。そのため、ラーメンの主要構成要素であるスープ、香味油、タレなどは、開発したレシピを信頼できるメーカーに開示し、プライベートブランド(PB)として製造している。これまでに20種ほどのPBをそろえ、それらの組み合わせにより新たな加盟店を出店できる体制を整えており、すでに面識のあるオーナーたちによる加盟店4店舗の出店を果たしている。
大手養魚場から仕入れる国産サーモンを丸ごと利用
「世界初のサーモンラーメン専門店」と謳う同店では、福島のサケマス養殖大手の林養魚場から1本丸ごとの状態で仕入れ、身だけではなく、頭から骨まですべて活用してラーメンを創り出している。
「サーモンは輸入ものがほとんどですが、国産のサーモンをブランディングし、さらに通常は廃棄されている頭や骨もスープなどに使って価値化すれば、SDGs(持続可能な開発目標)にも通じます。私たちはこれまでもタイのアラやエビの殻など、従来は捨てられてきた部分を活用したスープづくりを考えています」と丸尾氏は説明する。サーモンスープの味わいを生かした「ベーシックサーモン」(850円)のほか、ニンジンのピュレをエスプーマで泡状にしたものなどをのせた一番人気の「白サーモン」(940円)、自家製ラー油や3種のトウガラシを加えた「赤辛サーモン」(940円)、サーモンのうま味を凝縮したタレを絡めて食べる「汁なしサーモン」(940円)などの定番商品を提供するほか、季節メニューを適宜加える。また、サイドメニューのサーモンエキスで炊き込んだ「サーモンめし」(300円)は、最初はそのままで、途中からラーメンスープをかけてリゾット風にして楽しめる。ランチタイムの「サーモンめし」は、トッピングを減らしてラーメン+150円で提供しており、8割近くの来店客がオーダーしている。客単価は終日で1,300円になる。
同店がフレンチ×ラーメンとして新たなラーメンファンを増やしている要因は、以下のようになるだろう。
- フランス料理を10年以上経験した料理人が商品開発に関わっている。
- 従来のラーメン店が誘引し切れていなかった女性などの新しい客層をつかんでいる。
- 通常は廃棄される部分でスープを取るなど、SDGsに通じる素材の使いこなしを実践している。
同社では直営店の経営は1ブランド1店舗程度とし、間もなく加盟店の公募を開始して多店舗化を進める考えだ。
「私たちの存在価値は、ラーメンを通してお客様に喜んでもらい、生産者も加盟店も含めて全員を勝たせる、繁盛させるところにあると考えています」と、丸尾氏は力強く述べている。
(Text and photo by Food Biz)
住所
東京都新宿区神楽坂 6-26 カーサイオキ3 102
TEL 03-3528-9992
営業時間
11:00〜15:30(LO.15:10)、17:00~21:00(LO.20:40 )
定休日
無休
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