ベジ郎 渋谷総本店
Key Point
- 八百屋直営の野菜炒め専門店というストーリー性を持つ
- 野菜不足を気にする働き盛りの男性に訴求
- 味付けや量で多彩な選択肢を用意
高火力で炒め、鶏の唐揚げや豚の背脂も選べるなど、家庭料理と差別化
「日本人の野菜の摂取量不足を解消したい」「コロナ禍で行き先がなくなった野菜の廃棄ロスを減らし、供給量を増やしたい」という熱い思いから、業務用青果卸業の株式会社フードサプライが、野菜炒め専門店「ベジ郎」の展開を開始した。1号店は東京・渋谷に2021年12月にオープンした渋谷総本店(12坪14席)で、続いて2022年4月に池袋東口店(20坪18席)を、いずれも直営で出店した。注文は食券式で、客単価900円台のカジュアルな業態でありながら、渋谷総本店は月商900万円、池袋東口店は1,100万円を超える月もあるほど人気だ。2022年10月には初のフランチャイズ(FC)店として、東京・小平市のロードサイド立地に東大和店(36坪36席)がオープンし、2022年中にはさらに千葉・松戸、柏にもFC店がオープンする予定である。
野菜の摂取量を増やすには、生食ではなく、加熱したほうが効率的であるため、野菜炒めに着目した。同時に、野菜炒めは家庭でも頻繁に登場する定番料理であるが故に、外食における野菜炒め専門店は、ありそうでなかったニッチな存在でもある。その一方で、家庭での野菜炒めとどのように差別化し、魅力ある商品にするかがポイントとなる。同店で通常使用する野菜類は、キャベツ、モヤシ、タマネギ、ニンジンで、風味付けにおろしニンニク、おろしショウガを加えている。キャベツとタマネギは店内での手切りにこだわり、高火力の中華レンジを使って1人前ずつ一気に炒めることで、家庭では難しいシャキシャキした食感に仕上げている。
味付けは、醤油、ポン酢、味噌と、2022年10月から登場したうま辛ポン酢の4種から選べる。いずれも、ベースとなる調味料にひと手間を加え、独自のタレとして使用している。ちなみに、ポン酢は株式会社Mizkan(以下、ミツカン)のロングセラー商品「味ぽん」をベースにしていることから、ミツカンとのコラボレーションが実現し、同社新商品の「味ぽんうまピリ」を使用した、うま辛ポン酢を加えることになった。また、野菜だけでは物足りないと感じる来店客も少なくないと予想し、鶏の唐揚げを一緒に炒めた「肉野菜炒め」を用意し、その上に豚の背脂をのせてさらにコクを加えることもできる。
1店で1日約350kgという野菜の消費量を実現
社長の竹川敦史氏は1979年鳥取生まれで、大学卒業後に大手外食チェーン勤務や飲食企業のコンサルティングなどを経験した後、2009年にフードサプライを設立した。業務用野菜卸として関東圏をメインに約5,000店舗の飲食店に供給し、年商約70億円を上げるまでに急成長させた、野菜卸業の創業者として希有な存在である。コロナ禍にあってはドライブスルー八百屋などの対策を打ち出し、外食業への時短要請などが一段落してきたタイミングで「ベジ郎」の展開に着手した。2022年の年明けからのオミクロン株による感染再拡大は予想外だったが、「ベジ郎」のコンセプトや八百屋直営というストーリー性がメディアなどで紹介されたこともあり、着実に顧客をつかんできた。
野菜をたっぷり食べてほしいという狙いだが、来店客の好みや食欲に合わせて、きめ細かく量を選べるのも特徴である。野菜の量は「少なめ」(300g)〜「マシマシ」(600g)、肉の量は「なし」〜「肉特盛」(200g)、背脂は「なし」〜「鬼油」(80g)、ご飯は「少なめ」(130g)〜「特盛り」(400g)があり、さらにトッピングとしてバター、パクチー、ニラなどを追加することもできる。これらはタッチパネル式の食券機で注文。まず利用は店内かテイクアウトかを選択し、次に野菜炒めの単品か、ご飯とスープが付く定食かを選び、味付け、量、トッピングをカスタマイズしていく。
「渋谷総本店では、肉入り野菜炒め定食のオーダーがほとんどで、野菜の量はマシの500gが半分ほどを占めています。客層は30〜40代を中心とする働き盛りの男性が8割を占め、コロナ禍の影響もありテイクアウトとデリバリーを合わせてコンスタントに売り上げの2割を占めています」と、飲食事業部の古町卓也課長は述べる。
同店が豪快な野菜炒め専門店として男性を中心に支持されている要因は、以下のようになるだろう。
- 八百屋直営の野菜炒め専門店というストーリー性を背景としている。
- 野菜不足を気にする働き盛りの男性への訴求力を持つ。
- 味付けや量で多彩な選択肢を用意し、カスタマイズを可能にしている。
渋谷や池袋という都心の繁華街での直営店の実績を基に、今後はFC展開に基軸を移していく考えだ。
「『ベジ郎』では、1店で多い日には1日350kgほどの野菜を使うのですが、これは通常の飲食店の15〜20倍の量です。われわれとしては、本業の野菜卸での販売量が増えればいいので、店舗の運営は卸し先のお客様に任せ、繁盛店にしていただきたいです」と竹川氏は語る。また、各地の生産者と強いつながりを持つため、例えば契約農家でホウレンソウや九条ネギが穫れ過ぎて余っているという情報が入れば、「ベジ郎」の野菜炒めの中に一時的に加えることで、スピーディーに供給先を確保でき、産地での廃棄処分などをなくせると考えている。同様に廃棄ロスを低減しようと開発した「コールスロー」(50円)は、野菜類のカット工場から大量に出るキャベツの芯を、適度な大きさにカットして仕入れて店内で調味したもので、サイドメニューとして人気上昇中である。
FC第1号の東大和店は、ラーメン店から転換したケースで、厨房はほぼそのまま使え、もともとノウハウのあるチャーハンや餃子をメニューに加えるなど、独自のアレンジが加味されている。このような柔軟性を持ちながら、当面は月1店舗ほどのペースでFC店を出店していく予定である。
(Text and photo by Food Biz)
住所
東京都渋谷区道玄坂2-23-11 1F
TEL 03-6427-8470
営業時間
11:00〜22:00(LO.21:50)、金・土曜日~翌3:00(LO.2:50 )
定休日
無休(年末年始など休業の場合あり)
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