2022/12/06 繁盛の法則

独自の食感の生地で差別化するナポリピッツァ専門店とは

東京・西池袋にあるナポリピッツァの専門店「PIZZA BORSA」。24時間以上かけて発酵させた生地をサクッとした食感に焼き上げるピッツァが特徴で、ランチでは1日50~60人、ディナーでは30~40人を集客している。

URLコピー

PIZZA BORSA(ピッツァ ボルサ)

Key Point

  1. 店内で仕込むピッツァ生地を使い、薪窯で焼成
  2. 味の決め手となる素材はイタリア産のものを使用
  3. 夜はワインやビールとともにアルコール利用を誘引

繁華街の外れの立地を選び、ピッツァの市場拡大に貢献

 店内で毎日仕込む生地を使い、イタリア製の薪窯で焼き上げるナポリピッツァの専門店「PIZZA BORSA」(以下、ボルサ)は、東京・西池袋の繁華街の外れといった立地ながら、平日のランチはウエイティングが絶えず、土・日曜日・祝日は予約で埋まるほどの人気を誇っている。ナポリピッツァといえば、ふっくら、モチモチした厚めの生地が特徴だが、同店では生地の表面がサクッとした食感に焼き上がっており、その軽やかな味わいが印象に残る。オープンは2014年7月で、店舗規模は10坪16席。ランチタイムだけで1日50~60人、ディナータイムも30~40人をコンスタントに集客している。

 経営元は合同会社TASCAで、代表の野木俊孝氏は都内の有名イタリアンで修業する中で、ピッツァに魅力を見出し、本場イタリアを訪ねて現地のピッツェリアを視察してきた。帰国後、ピッツァの名店「SAVOY(サヴォイ)麻布十番店」で3年半修業した後、独立開業に踏み切った。当時、日本でのナポリピッツァ専門店というと、都心部に高級店がある程度だったため、野木氏は住宅街に近いところでピッツァを広めていきたいという思いから、まず2012年8月に西荻窪の2階建ての物件で20坪22席の「GINA(ジーナ)」をオープンした。「ジーナ」「ボルサ」ともに、イタリア製の薪窯を導入し、本格的なピッツァを地元に根付かせてきている。

 「ピッツァ職人にとって一番大切で、難しいのは生地の管理です。季節はもちろん、温度や湿度によって毎日状態が変わっていきますから。生地を発酵させ、落ち着かせて、ピッツァを焼くのにベストな状態に持ってくるように努めています」と、「ボルサ」の店長を務める昆野敦規(こんのあつのり)氏は説明する。小麦粉、水、塩、イーストのみを使い、24時間以上発酵・熟成させて生地を作っている。1人前160gの生地を延ばし、具材やチーズをのせ、約500℃の薪窯で1分から1分15秒ほどで焼き上げることで、表面はサクッ、中はふっくら、もっちりとした食感に仕上げている。また、チーズ、トマトソース、オリーブオイルなど、味の決め手となる素材はイタリア・カンパーニャから仕入れている。

平日ランチの「Bセット」(1,280円)で、ピッツァは1番の人気商品であるマルゲリータ。生地の表面はサクッとし、中はモチモチした食感に焼き上げている。ランチセットとはいえ、注文した人の食べるスピードに合わせながら、適切なタイミングでの料理提供を徹底しているのも特徴。まずピーチティーとサラダが出され、続いて焼き立てのピッツァ、食べ終わった頃にデザートとドリンクを提供する。デザートは日替わりで、写真は栗のパウンドケーキ。ドリンクはコーヒーを合わせている

コロナ禍を機にテイクアウトを強化

 平日のランチタイムは、ピーチティー、サラダ、ピッツァが付く「Aセット」(1,000円)、Aセットにデザート、ドリンクが付く「Bセット」(1,280円)、Bセットに前菜盛り合わせが付く「Cセット」(1,600円)の3種を用意している。ピッツァは4種から選べ、人気の高いマルゲリータ、マリナーラに、日替わりで2種が加わる。ドリンクは、コーヒー、紅茶、エスプレッソ、カフェラテから選べる。できる限り焼き立て、熱々のピッツァを味わってほしいという思いから、数人で来店して数種のピッツァをオーダーしたグループには、1枚ずつ順に提供するか、同時に提供するかを確認し、タイミングを見計らって焼き上げている。また、ほんのりと甘いピーチティーは、イタリア産のものを利用しており、塩気のあるピッツァに良く合うと好評を得ている。各セットのオーダー比率は、AとBが各45%、Cが10%で、平日昼の客単価は1,300円になる。

 夜は、15種ほどそろえているイタリアワインや、5種ほどのイタリアビールを中心にアルコールを用意。前菜や、ピッツァ約10品目(1,000円~)、パスタ(夜および土・日曜日のみ提供)などと楽しむ人が多く、客単価は4,000円になる。なお、土・日曜日のランチは夜と同じメニュー構成で営業しており、90分制での予約を受けているが、予約客だけで満席となる日が多い。

 同店がナポリピッツァ専門店として、繁華街の外れにありながら、着実にファンをつかんでいる要因は以下のようになるだろう。

  1. 店内で24時間以上かけて作る生地を使い、イタリア製の薪窯で焼き上げる独特の食感のピッツァで差別化している。
  2. トマトソースやチーズなど味の決め手となる素材はイタリア産のものを使用している。
  3. 夜はイタリア産のビールやワインなども提供し、アルコール需要に応えている。

 なお、カップルの利用が多く、全体でも女性が7割を占める「ボルサ」に対し、西荻窪の住宅立地にある「ジーナ」では家族連れが多いため、パスタの種類も増やしており、夜の客単価は4,500円になる。

 もともとピッツァはテイクアウトにも向くアイテムであり、同店でも以前から対応していたが、コロナ禍前は売上の2~3%に過ぎなかった。しかし、コロナ禍当初の緊急事態宣言により外出制限が強く求められた期間は、イートイン利用は休止し、テイクアウトのみで営業を続けた。その後、イートイン客が戻るにつれ、テイクアウトの比率は下がってきたが、現在でも売上の2割弱をテイクアウト販売が占めている。

 「やはり焼き立て、熱々のピッツァを食べていただきたいので、できるだけ店内で楽しんでほしいです」と昆野氏。そのため、焼き上がりから食べるまでの時間がさらに長くなる可能性のあるデリバリーには対応していない。

 「今後も季節感を大切にしたメニューを提供していきたいですね。池袋の街で、ピッツァだったらここと、皆さんが食べに来てくれるような店として、末永く営業していきたいです」と昆野氏は語っている。

(Text and photo by Food Biz

PIZZA BORSA
住所
東京都豊島区西池袋3-30-8 渡辺ビル 1F
TEL 03-3986-1703
営業時間
11:00〜15:00(LO.14:30)、18:00~23:00(LO.22:30 )
定休日
無休(年末年始は12月31日~1月4日ランチまで休業、1月4日18時~営業)
https://r.gnavi.co.jp/ncp177x40000/map/

■飲食店経営の明日をリードするオピニオン誌「Food Biz」

「Food Biz」の特徴
鍛えられた十分な取材力、現場を見抜く観察力、網羅的な情報力、変化を先取りする予見力、この4つの強みを生かして、外食業に起こっている変化の本質を摘出し、その未来を明確に指し示す“主張のある専門誌”です。表層的なトレンドではなく、外食業に起こっていることの本質を知りたい人にこそ購読をおすすめします。読みたい人に直接お届け!(書店では販売しておりません)

購読のお申し込みはこちら
年間定期購読: https://f-biz.com/nenkei/
単号購読: https://f-biz.com/tango/
詳しい内容は: https://f-biz.com/mag/

発行:株式会社エフビー
〒102-0071 東京都千代田区富士見2-6-10 三共富士見ビル302
HP https://f-biz.com/ TEL 03-3262-3522