2023/01/19 特集

2023年、飲食企業トップの戦略(2)~有限会社たるたるジャパン 齊藤崇氏~

飲食業界の注目の経営者5人にインタビュー。第2回は、有限会社たるたるジャパンの代表取締役・齊藤崇氏。東京・立川などで13店舗を展開しており、2022年4月に初の大箱店を出店。そこに込めた思いと展望を聞いた。

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【目次】
齊藤崇氏プロフィール/有限会社たるたるジャパン企業情報
コロナ禍での融資を前向きに捉え、会社の未来を見据えて積極的に出店
“ワクワク”をテーマに、飲食業の強みを生かしたイベント事業にも取り組む

 2023年の戦略について、注目の経営者5人にインタビュー。コロナ禍での取り組みを振り返ってもらいつつ、今後の出店・事業計画や人材不足・食材高騰といった課題への対応、インバウンド対策などについて聞く。

【2023年、飲食企業トップの戦略】
(1)~株式会社鳥貴族ホールディングス 大倉忠司氏~
(3)~株式会社ミナデイン 大久保伸隆氏~
(4)~株式会社マックスフーズジャパン 西田 勇貴 氏~
(5)~株式会社浜倉的商店製作所 浜倉 好宣 氏~

 第2回は、東京・立川などで13店舗を展開する有限会社たるたるジャパンの代表取締役・齊藤崇氏。コロナ禍でも店舗を撤退させることなく、着実に新店舗を増やし、2022年春には会社として初の大箱店「居酒屋さいちゃん」を出店。そこには「IZAKAYA NEVER DIE」という居酒屋文化へのリスペクトと再興への思いが込められていた。2万5千人の来場者を呼び込んだ「妖怪盆踊り」などイベントのプロデュースも手掛ける齊藤氏に、「居酒屋さいちゃん」出店に込めた思いや今後の事業展望などを聞いた。

居酒屋の火を消したくないと思い、「IZAKAYA NEVER DIE」を掲げて初の大箱店に挑戦しました。

齊藤崇/1972年、富山県生まれ。プロスノーボーダーを目指すも断念し、際コーポレーション株式会社に就職して、4年間で料理と店舗プロデュースの経験を積む。2006年独立。東京郊外を中心に13店舗を展開中。

■企業情報
有限会社たるたるジャパン/2006年創業。居酒屋、タイ屋台酒場、カレー店、餃子店など、東京都福生市、立川市を中心に9店舗、都心で4店舗を経営。2020年以降も出店を続け、2022年4月、立川に83坪107席の居酒屋「さいちゃん」をオープン。

コロナ禍での融資を前向きに捉え、会社の未来を見据えて積極的に出店

――東京の福生・立川エリアを中心に多彩な業態を出店し、コロナ禍でも出店を続けてきましたね。

 創業以来、20坪前後の規模で、大衆居酒屋「横田酒場」(立川)、タイ屋台酒場「カオマンガイ12号」(調布・福生)、餃子専門店「餃子のニューヨーク」(立川)などを立川などに出店し、都心では人気カレー店を承継した「FISH」(新宿)などを手掛けて、2019年までは順調でした。

 そんな中で迎えたコロナ禍は、まさに「天国から地獄」。銀行からの融資は受けられたものの、売上も利益も大幅にダウンして借入金だけが膨らみました。当初は不安しかありませんでしたが、店の多くが郊外立地だったこと、食事業態の復活が早かったことは幸いでした。カレーやタイ料理の店を持っていてよかったです。

 一方で、新店舗の出店にも踏み切りました。2020年に「FISH」丸の内店ととんかつ業態「トンカツX」(田町)、2021年に「カオマンガイ12号」(調布)と春巻を売りにした居酒屋「春巻のニューヨーク」(立川)を出店。「春巻のニューヨーク」は、立川エリアの経営者仲間とともに作ったフードマーケット「ガレーラ立川」への出店でした。春巻は何を巻いてもおいしい汎用性の高い商品。前菜、主菜、デザートにもなって、アルコールにもご飯にも合う。いろいろなニーズを取り込める料理として以前から注目していたので、「ガレーラ立川」の話をもらった時にチャレンジしようと考えました。

複数の飲食店が集まったフードコートのような飲食施設「ガレーラ立川」内に出店した「春巻のニューヨーク」。オーソドックスな「五目春巻」だけでなく、「ラムモッツァレラ春巻」「海老の湯葉巻き」など、独創的な春巻を売りに集客に成功している

 これだけ出店を続けたのは、融資額に見合う規模の企業にすると決めたからです。せっかく無担保で融資を受けられたのだから、出店せずにキャッシュを温存するのではなく、会社としての成長を含めた未来に向けて新規出店に舵を切ることにしたのです。

――2022年4月には、「居酒屋さいちゃん」をオープンしました。83坪の大箱ですが、不安はなかったのでしょうか。

 もちろん不安はありました。当社としても初の大箱ですし、そもそも大箱店はコロナ禍で大苦戦していましたから。この物件は40年以上前から立川の居酒屋のシンボルのような店があったところ。その店がコロナ禍で撤退してしまい、本当にショックを受けました。だから、勝算があるかないかということより、この苦境で居酒屋の火を消したくないという思いが強く、ファサードの店頭にも「IZAKAYA NEVER DIE」という出店への思いを掲げました。もともと居酒屋へのリスペクトが強く、いつかは自分も大箱居酒屋を作りたいと思っていたので、その思いを実現するチャンスだという気持ちもありました。

 現状、「さいちゃん」の月商は1,000万円以上ですが、まだまだFLコストに見合った売上とは言えません。今後もこの状況がしばらく続き、厳しい局面もあるかもしれません。でも、赤字にはなりませんし、潰れる心配もしていません。多くはなくても利益を出し続けながらFLをうまくコントロールし、ファンを増やしていけば、いずれ結果はついてくると考えています。

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2022年4月、約40年間居酒屋チェーン店が営業していた物件でオープンした「居酒屋さいちゃん」。店頭には「IZAKAYA NEVER DIE」という齊藤氏の思いが掲げられている
80坪以上ある店内はテーブル席がメインでカウンター席も備え、さまざまなシーンに対応

“ワクワク”をテーマに、飲食業の強みを生かしたイベント事業にも取り組む

――アフターコロナにおいて飲食店が生き抜くポイントは何だと考えていますか。

 特別なことではなく、「QSCV」(クオリティ・サービス・クレンリネス・バリュー)を向上させることが大前提だと思います。当社ではここに「W=ワクワク」を加えています。お客様をワクワクさせるような存在であることが飲食店の大きな存在意義だと考えているからです。このQSCV+Wを徹底的に追求することで、少しずつでも成長し、店も会社も長く続くと確信しています。

 例えば、「さいちゃん」は、月商をあと500万円伸ばせられれば一気に利益率がよくなります。イメージしているのは、大箱だけど、小さな居酒屋の集合体のような居心地の良さ。スタッフがお客様と仲が良くて、和気あいあいで活気に満ちたやり取りがあちこちで交わされている店です。もう少し具体的に言うと、大人数での宴会をしていたり、ファミリーやカップル、一人でお酒を楽しむ方、会社帰りに食事をするために来られたお客様など多彩なシーンが混在している店。「あそこに行けば、おいしい食事と酒がある」と最初に思い出す店、急な大人数でも「『さいちゃん』なら広いから入れる」と頼りにされる店です。

 だから、100点満点のとがった看板メニューに頼るのではなく、すべての料理が80点以上で「どれを食べてもおいしい」「ほっこり、安心できる」と感じてもらえるようにしています。逆に、集客の目的になるような写真映えする料理は、今のところ禁じ手にしています。古き良き“ザ・居酒屋”こそ、世界に誇れる日本の食文化だと思っているので、あまりトレンドに流されすぎず、長く愛される店を目指しています。

――一方で、イベントのプロデュース業もされていますね。

 3年前に、妖怪の仮装をして盆踊りをする「妖怪盆踊り」というイベントを始めました。コロナ禍で休止していたのですが、2022年夏に第2回を開催し、2万5千人を集客する成功を収めました。2023年は協賛企業も増える予定で、事業として収益化できる見込みです。今後、立川にインバウンドを呼び込むコンテンツとしても成長させられるのではと期待しています。

 イベント事業は飲食業とは違いますが、「街と人をワクワクさせる」という社の方向性としては合致しています。また、イベント事業のベースになっているのが、飲食業で培った経験とスキル、人脈であることは間違いありません。企画力、集客力、調整力など幅広い力が必要なのが飲食事業。飲食人である僕らだからできるイベント、僕らしかできない事業を展開して、立川を大いに盛り上げたいと思っています。

2019年以来、2回目の開催となった「妖怪盆踊り」。2万5千人が来場し、大成功を収めたことで来年の協賛企業が増え、「事業の収益化にめどが立った」と齊藤氏は手応えを語る

――今後の目標と展望を教えてください。

 2023年は、既存店をしっかり成長させることに集中します。食材の高騰による値上げは避けられませんが、それでも選ばれる店になるしかありません。人材不足も深刻で、今までと同じ求人方法では限界があるので、外国人の採用を含めて課題解決に取り組んでいます。

 中長期的に目指しているのは、労働環境を改善して働きやすい会社にし、みんなが生き生きと仕事に取り組んで、さらにいいサービスとおいしい料理を提供できる企業になること。週休2日はある程度できましたが、1日の労働時間が長いのが課題です。そこを整備することが人材不足の解消につながり、生産性を高めて利益体質を強化することにもなると考えています。

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