2023/01/26 特集

2023年、飲食企業トップの戦略(4)~株式会社マックスフーズジャパン 西田 勇貴 氏~

飲食業界の注目の経営者5人にインタビュー。第4回は、株式会社マックスフーズジャパンの代表取締役社長・西田勇貴氏。父・眞氏の後を継ぎ、新たな時代のかじ取りを任された彼に、新規出店の狙いなどを聞いた。

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【目次】
西田勇貴氏プロフィール/株式会社マックスフーズジャパン企業情報
コロナ禍に始めたデパート催事事業が軌道にのり、中目黒の新店舗も上々のスタート
アフターコロナを生き抜くための「選ばれる店」を目指して

 2023年の戦略について、注目の経営者5人にインタビュー。コロナ禍での取り組みを振り返ってもらいつつ、今後の出店・事業計画や人材不足・食材高騰といった課題への対応、インバウンド対策などについて聞く。

【2023年、飲食企業トップの戦略】
(1)~株式会社鳥貴族ホールディングス 大倉忠司氏~
(2)~有限会社たるたるジャパン 齊藤崇氏~
(3)~株式会社ミナデイン 大久保伸隆氏~
(5)~株式会社浜倉的商店製作所 浜倉 好宣 氏~

 第4回は、株式会社マックスフーズジャパンの代表取締役社長・西田勇貴氏。東京・新橋を拠点に、もつ焼き居酒屋を5店舗運営しており、主力業態の「やきとん まこちゃん」は1968年の創業以来、50年以上もの間、ビジネス層を中心に多くのファンに愛されてきた。

 西田氏は、2019年に父親の眞氏の後を継いだものの、直後にコロナ禍が発生。難しいかじ取りを担うことになったが、主力業態「やきとん まこちゃん」の強みを生かしつつマイナーチェンジを施したスピンオフ業態「まこちゃん 中目黒店」をオープン。ホームエリアだったビジネス街の新橋を離れて、これまでとは客層の異なるエリアで勝負に出た経緯や狙い、今後の事業戦略などを聞いた。

一つのエリアに絞った出店にリスクを感じ、新天地で新業態に挑みました。

西田勇貴/1983年生まれ、東京都出身。大学卒業後、食品メーカー勤務を経て、30歳で父親が創業した株式会社マックスフーズジャパンに入社。2019年、代表取締役社長に就任。デパート催事や新業態の出店など事業拡大に尽力する。

■企業情報
株式会社マックスフーズジャパン/1968年、創業者である西田眞氏が東京・目黒駅前に創業店「やきとん まこちゃん」を出店。その後、新橋エリアに同ブランドを4店舗構え、人気店として確たる地位を築く。2022年11月には、やきとんを主力としつつおしゃれな内観にこだわった「まこちゃん 中目黒店」をオープンした。

コロナ禍に始めたデパート催事事業が軌道に乗り、中目黒の新店舗も上々のスタート

――お父様の後を引き継いで代表になったのが2019年。その直後にコロナ禍が発生し、前途多難な船出でしたね。

 正直、「何てついてないんだろう」と思いました。当社は“ザ・ビジネス街”の新橋で「やきとん まこちゃん」を5店舗展開していましたが、コロナ禍の自粛の影響で人が一気にいなくなってしまいました。それでも創業以来受け継いでいるタレを使った「やきとん」(1本160円)を愛してくださっている常連のお客様に支えられて、苦しいながらも一定の売上は上げられていました。ただ、アフターコロナでも生き抜いていけるかという視点で各店舗の総合力を分析し、業績が良くなかった約10坪の店舗を2021年に手放しました。

新橋にある「やきとん まこちゃん 本店」。ビジネス層を中心に多くの常連客を獲得しており、コロナ禍の逆風の中でもファンに支えられた
秘伝のタレが決め手の看板「やきとん」は1本160円で、ボリュームもあり、おいしさはもちろん、コストパフォーマンスの高さも人気の秘密

 一方で、コロナ禍で新たに始めた事業もあります。一つはキッチンカー。やきとんは仕込みも含めて手間が掛かるので、簡単に調理できるカレーパンを開発し、JRの駅前などで販売しました。テイクアウトのニーズが高まっていたこともあり、一定の売上にはつながりましたが、ガソリン代などの経費が掛かり費用対効果が低いと判断して、撤退することにしました。

 二つ目の取り組みがデパートの催事への出店です。最初は自分から売り込んで参加させていただき、徐々にお声掛けされるようになってきました。「新橋やきとん まこちゃん」という屋号で、「やきとん串」などを販売し、五反田の商業施設では2週間で売上900万円に達したこともあります。場所にもよりますが、2週間で平均500万円前後の売上があり、今ではデパートの催事が飲食業とは別の柱として確立してきました。

 そして最も注力したのは、社員の採用です。コロナ禍になってすぐに大手飲食企業が人員整理を進めたと知って、優秀な人材を確保する絶好のチャンスだと思ったんです。今後、会社を続けて行く上で優秀な人材は間違いなく必要です。コロナ禍で赤字になったとしても10年後に取り戻せばいいと考え、とにかく人に投資しました。

 この3年間で増やした社員は15人。内訳としては、デザイナーなどの本社スタッフが5人、現場を束ねていけるマネジャークラスのスタッフが10人で、彼らの経験やアイデアは中目黒の新店舗にも生かされています。

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――その新店舗が、2022年11月にオープンした「まこちゃん 中目黒店」ですね。ホームエリアである新橋を離れての出店ですが、狙いは?

 新橋の「やきとん まこちゃん」の主な客層は40代以上のビジネス層で、約9割が男性です。新橋周辺は大手企業が多いので、コロナ禍が明けても一定数はリモートワークを続けるでしょうし、新橋だけに店舗を構えるのはリスクが高いと考えました。

 そこで、コロナ禍の影響をあまり受けずに行動する若者をターゲットにするべく、中目黒と恵比寿で物件を探しました。その結果、中目黒駅からほど近いビル1階に良い条件の物件があり、出店を決めました。

 中目黒店は当社がこれまで出してきた店の中では一番大箱で、テラス席を合わせて35坪80席あります。この広い空間を生かしつつ、20半ば~30代の女性が気軽には入れるような店にするため、内装・外装、メニュー構成を含めてこれまでとは180度異なる店づくりをしました。屋号は「まこちゃん」で「やきとん」が主役の店ですが、幹は変えずに枝葉を変えた、いわばスピンオフ業態です。

 コンセプトは「おしゃれ」と「レトロ」を組み合わせた「おしゃレトロ」。客席から一段上げてステージのようにした焼き台を囲むようにカウンター席を設置し、外から店内が見やすいようにガラス張りにして、「おしゃれな空間で、おいしいやきとんを食べる」という新しい外食シーンの創出を狙いました。

 このチャレンジに対して「新橋のまこちゃんを、そのまま持って行ったほうがいいよ」と反対する人もいました。でも、ターゲットとする客層が違いますし、空間にこだわり、付加価値を付けることで、客単価も上げられるはずという思いもありました。新橋本店の平均客単価は2,800円ですが、中目黒店は3,500円くらいを想定して店づくりを進めました。

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「まこちゃん 中目黒店」の外観。ガラス張りで店内の明るい雰囲気が外からも見え、入店のハードルを下げている
「まこちゃん 中目黒店」の内観。中央の焼き台を囲むようにカウンター席を配し、奥にはテーブル席なども用意した全80席。中目黒の客層に合わせて、「まこちゃん」のイメージを180度変えるスタイリッシュな内装にした

――メニュー構成や価格設定は、新橋の店とどう変えたのでしょうか。

 主力メニューの「やきとん」は新橋の本店と全く同じものを提供します。ただ、価格は中目黒店が1本182円で新橋の本店(1本160円)よりも少し高めに設定しています。それでも1本50g以上あるので、女性であれば5本も食べたらお腹いっぱいになるボリュームです。

 また、サイドメニューは本店と同じ料理は2割くらいにして、「もつ煮込み 麻辣味噌」(638円)や「モツ焼きそば」(638円)といった秘伝のタレやみそを使ったメニューや、「マッシュルームサラダ」(748円)などの女性を意識した料理も用意。ドリンクも、広島・瀬戸田町の無農薬レモン農家と契約して「瀬戸田レモンサワー」(583円)を開発するなど、ラインナップを一部を変更しました。レトロな大衆酒場感を演出するため、提供にはグラスは使わず、本店と同様にジョッキで提供するなど、「まこちゃん」の良さは継承しています。

  • 中目黒店で提供している「もつ煮込み 麻辣味噌」(638円)。秘伝みそに合わせてスパイスを配合した「自家製麻辣ダレ」は、辛さの中にもうま味を感じさせる一品
  • 「モツ焼きそば」(638円)も中目黒店用に開発。秘伝のやきとんダレを使用し、ブラックペッパーがアクセントの甘辛ソースが特徴

 狙い通り、20~30代を中心に集客できており、お客様の6割が女性です。オープン初月の売上は1,000万円と悪くはありませんでしたが、ポテンシャルはまだまだあると考えています。まずは、月商1,300万円まで引き上げ、最終的には2,000万円を目指しています。

 その目標を達成するための直近の課題は客単価のアップ。想定の客単価は3,500円でしたが、現状は2,500円になっており、テコ入れが必要です。注文率6割の「やきとん5本盛り合わせ」の内容を変えて値段を見直すなど、満足感は落とさずに客単価を上げていく施策を考えています。

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アフターコロナを生き抜くための「選ばれる店」を目指して

――2023年以降の展望について教えてください。

 中目黒店が軌道に乗ったら、このスピンオフ業態を一つのブランドとして店舗展開していくことを考えています。いろいろなエリアに対応できるように、客単価2,800円の新橋の店を低価格帯の業態、3,800円の中目黒店をミドルゾーンの業態として成長させ、今後は新たに7,000円の高級業態も構想中です。

 また、別業態のブランドも3つほど準備していて、こちらはFC展開を見据えています。まだ詳しくはお話できませんが、一つは食事業態で「やきとん まこちゃん」の秘伝のタレを生かしたメニューを売りにする予定です。

 近年、食材の価格が4%ほど上がっていますが、「やきとん まこちゃん」で値上げは一度もしていませんし、現状では考えていません。しっかりしたメニューやサービスのクオリティーを保っていれば「選ばれる店」になり、集客力を維持できるはずだからです。売上が上がれば人件費率や家賃比率が下がり、原価の高騰分を吸収できると考えています。

 現在、新橋の本店も一時の低迷を抜け出して売上が回復し、2022年10月には過去最高の月商1,300万円を達成しました。リピーターは約8割で、20坪50席で週末は4~5回転しています。

 当社のスローガンは「明日への活力を」。来店してくれた方々に「明日も頑張ろう」と思ってもらえるにはどうしたらいいかを念頭に置いて運営しています。明日への活力が提供できれば、楽しい気持ちで帰宅できるので次の来店にもつながる。そうして「選ばれる店」になることで、アフターコロナでも生き残れると考えています。

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