2023/01/30 特集

横丁のヒット請負人・浜倉好宣氏に聞く!外食+エンタメの次世代マーケットが伸びる理由

飲食業界の注目の経営者へのインタビュー企画。第5回は、株式会社浜倉的商店製作所の代表取締役社長&総合プロデューサー・浜倉好宣氏。横丁のプロデュースでコロナ禍でも“酒場のにぎわい”を生んだ戦略を聞く。

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更新日:2023.10.23

 今、注目の経営者にインタビューする企画。コロナ禍での取り組みを振り返ってもらいつつ、今後の出店・事業計画や人材不足・食材高騰といった課題への対応、インバウンド対策などについて聞く。

 第5回は、株式会社浜倉的商店製作所の代表取締役社長&総合プロデューサー・浜倉好宣氏(ほかの記事へのリンクはこの記事の最後にあります)。コロナ禍にオープンした「渋谷横丁」(東京・渋谷)が大成功するなど、暗い話題の多かった飲食業界に明るいニュースをもたらした。2023年春には東京・新宿に「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」をオープン予定の浜倉氏に、コロナ禍での取り組みや、横丁プロデュースを含めた今後の事業計画について聞いた。

【目次】
浜倉好宣氏プロフィール/株式会社浜倉的商店製作所企業情報
懐かしいけど新しい大衆文化を体感できる大規模な「横丁」の創出に手応え
二極化が進む外食シーンで、重要なのは「コミュニケーション」と「エンターテインメント性」

外食&エンタメの次世代マーケットを切り開き、飲食業界をさらに魅力的な場所にしたい。

浜倉好宣/1967年、神奈川生まれ。18歳で飲食店を初プロデュースし、飲食企業で経験を積む。2008年に独立。主に都内で数々の独創的な飲食店や飲食街をプロデュース、運営。2021年から社団法人日本居酒屋協会の会長を務める。

■企業情報
株式会社浜倉的商店製作所/2008年創業。東京・恵比寿の旧公設市場を「恵比寿横丁」として再生するなど、新業態の開発や産地との提携、飲食横丁の構築などを手掛ける。2023年4月に創業する新宿・東急歌舞伎町タワーに「新宿カブキhall~歌舞伎町横丁」をオープン。

懐かしいけど新しい大衆文化を体感できる大規模な「横丁」の創出に手応え

――昭和の空気感が色濃い酒場や飲食街・横丁を次々とオープンさせ、コロナ禍でも勢いが止まりません。

2008年に東京・恵比寿の旧公設市場を「恵比寿横丁」としてよみがえらせてから今日まで、浜焼きや水産系居酒屋、産直食材をベースにした専門店などとともに、複数の飲食店の集合体である「横丁」や「飲食街」などを十数カ所でプロデュースし、運営してきました。そのほとんどが新宿、渋谷、有楽町、銀座、上野、新橋といった都心の繁華街です。

中でも、2020年8月にオープンした渋谷「MIYASHITA PARK」の「渋谷横丁」は、大手ディベロッパーからお声掛けいただいた大規模なプロジェクト。全長100m、総面積1,000平米の空間に、都道府県別のご当地&ソウルフードの店や生産者直結の食材別専門店、純喫茶&スナックなど19件の飲食店を集めました。コンセプトは「毎日がフェス!」。施設内の通路や広場ではDJライブ、ギター流し、全国津々浦々のお祭りなどをテーマにしたイベントを開催し、新旧の大衆文化を体感できるエンターテインメント性を前面に打ち出しました。コロナ禍のオープンのため心配しましたが、若い人を中心ににぎわっており、2020年の秋には月商3億円を超え、「これなら大丈夫!」と気持ちを強くしました。

2020年8月、渋谷「MIYASHITA PARK」の開業と同時にオープンした「渋谷横丁」。19件の飲食店を集め、若い世代を中心に集客。同年の秋には月商3億円をたたき出すなど、コロナ禍をものともしないにぎわいを見せている

ほかにも、2021年4月「日本食市」「韓国食市」(東京・有楽町)、同年12月「大宮グルメコート」(埼玉・大宮)、2022年7月「新宿 屋台苑」(東京・新宿)など、この3年間で6つの飲食施設を手掛けました。

直近では、2022年10月に「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」(新宿)をオープンしました。ここは、新宿駅東口至近のビルの地上階と地下1~2階を使って魚・貝・牛・豚・鳥・寿司・鉄板焼き・韓国料理・タイ料理・中国料理・イタリア料理など、900平米の空間に全17店舗が集まる横丁です。地上階は日本全国のご当地グルメやアジア各国の料理が楽しめるアジア専門飲食街で、地階はクラブ系の雰囲気でさまざまな屋台が集まっている空間になっています。

  • 2021年4月、東京・有楽町のガード下に「日本食市」「韓国食市」を同時併設オープン。合計120坪480席のスケールで、日本全国のご当地めしや韓国料理が楽しめると話題に
  • 2022年7月にオープンした「新宿 屋台苑」。貝屋台「貝道」、和牛焼肉屋台「新宿苑」、麺屋台「辛麺」、朝挽き焼鳥屋台「布袋」という4つのネオ屋台が集まった飲食空間だ
2022年10月に「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」をオープン。ビルの地上階と地下1~2階を合わせて900平米の空間を使い、これまで横丁プロデュースで生み出したさまざまな業態を組み合わせ、全17店舗が集まる横丁を作り上げた

これらの新しい横丁も、現状の集客は順調です。ただ、コロナ禍の影響はまだまだ大きいですから、状況が落ち着いたらさらに伸び代もあると考えています。

――人が集まりにくいコロナ禍でも、これだけの集客に成功した要因はどこにあるとお考えでしょうか。

一つは規模の大きさとエンタメ性です。コロナ禍で長い期間自粛を強いられた経験から、若者に限らず多くの人々は気軽に楽しめる空間を求めていたのではないでしょうか。

ただ、飲食店だけではエンターテインメントとして物足りません。そこで、「渋谷横丁」では大胆にエンタメ性を加えました。来店動機が刺激され、行ってみるとこれまで経験したことのないさまざまな食とアミューズメントに出合える。そのことがSNSで拡散され、多くの人を引き付けたのだと思います。

加えて、昭和の時代に流行った大衆的な食文化を、現代的な映像や音楽と組み合わせることで、若者にも受け入れられるようにアレンジしたことも、成功の要因にあると思います。昭和の文化は少し泥臭いですがエネルギッシュで、地域ごとの特色も際立っています。東京はあらゆる地方から人が集まっている場所ですから、地元への懐かしさや誇らしさも手伝って幅広い層に興味と関心を持ってもらえたのではないでしょうか。

また、コロナ禍以前から当社が運営する多くの店舗で24時間営業にしていて、さまざまな時間帯で集客するためのノウハウを蓄積していたことも成功要因だと思います。これは、東日本大震災のときに夜の集客がピタッと止まったことが教訓になっています。夜しか営業していないことのリスクを感じて、多くの店を24時間営業にしたことが結果的にコロナ禍でも生きました。ランチなどの集客と売上があることは、経営面でもスタッフのモチベーションの面でもプラスに働いたと感じています。

とはいえ、営業自粛要請に応じていた期間は売上が上がらず、固定費の割合が跳ね上がりますから、少しでも下げる方法を常に考えていました。仕入れや輸送の方法を見直して食材原価を下げたり、家賃交渉をしたり、手を尽くしたことで、財務体質は随分と改善されました。ただし、人材の確保は依然として厳しいですし、これからの課題と言えます。

二極化が進む外食シーンで、重要なのは「コミュニケーション」と「エンターテインメント性」

――今後の展開をどのように考えていますか?

外食産業はますます二極化が進んでいます。例えば、コロナ禍でも回復が早いのは常連客の囲い込みができている個店で、逆に大箱の居酒屋チェーンは苦境に立たされている印象です。でも「渋谷横丁」のようにエンタメ性の高い空間は盛況です。外食は単に飲食を提供するだけでなく、楽しめる要素、すなわちコミュニケーションやエンターテインメント性が求められていると思います。

私たちが得意なのは、個店の業態開発ではなく、外食とテーマパークを融合させた体感型の空間づくりです。コロナ禍を経て、ビルオーナーさんやディベロッパーさんは、これまでの飲食ビルのように業態の違うさまざまなテナントを誘致するやり方では、集客に限界があると思い始めていると感じます。そうした背景から、ビル1棟丸ごと、もしくは広場やフロア全体を総合的にプロデュースする当社に注目してくれるようになったのだと思います。このビジネスモデルをさらに追求することが、縮小しつつある外食業界において、次世代の新たな展開につながるのではないかと期待しています。

例えば、直近で取り組んでいる新宿・歌舞伎町に2023年4月オープンの「東急歌舞伎町タワー」。これはライブホールや映画館などとホテルを備えた大規模な高層階の複合商業施設で、当社はメインフロアとなる2階の1,000平米ワンフロアを担当します。その名もエンターテインメントフードホール「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」。「渋谷横丁」のように、全国のご当地料理の地域業態や韓国フードなど全10店舗は全て当社の直営で、そのほかに巨大LED映像モニター、DJブース、カラオケ、ステージなどを設置し「祭り」をテーマにさまざまなパフォーマンスを毎晩のように繰り出す予定です。飲食店や飲食店街を超えた、次世代の外食&エンタメシーンの一つになると考えています。

2023年4月開業の「東急歌舞伎町タワー」(新宿)の2階にある飲食フロア(1,000平米)をプロデュース、運営。全国のご当地料理や韓国フードなど10店舗とともに、巨大LED映像モニター、DJブース、カラオケ、ステージなども設置し、さまざまなイベントを行う

――今後の外食産業の展望は?

「渋谷横丁」や「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」のような新しい形の集合体が成功していけば、飲食業界はもっと活性化し、価値が上がって魅力的な業界に成長すると展望しています。今はメニューの価格が安すぎますし、賃金も低すぎます。今後は、幹部クラスには完全週休2日と高い給与を保証し、短時間勤務を希望する人はそれぞれの働き方と安定した収入を保証できるようにしていきたい。そうすることで、流出した人材を呼び戻せるようになりたいと考えています。

数年後には、都心ビル1棟丸ごとの外食や宿泊、レジャーなどを兼ね備えた大型施設を企画・製作し、それをパッケージ化して海外にライセンス販売することを狙っています。まだ、何も決まっていませんが、規模感は4,000~6,000平米。まさに異次元ですが、こうした“野望”を言い続けることも大切。言葉が言霊(ことだま)となって人と人をつないで、次代につながると信じています。

【こちらもチェック!】
(1)~株式会社鳥貴族ホールディングス 大倉忠司氏~
(2)~有限会社たるたるジャパン 齊藤崇氏~
(3)~株式会社ミナデイン 大久保伸隆氏~
(4)~株式会社マックスフーズジャパン 西田 勇貴 氏~

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