2023/02/02 繁盛の法則

透明感のある独特の麺と豪快な天ぷらで魅了するうどん店とは

東京・新宿御苑前の「萬田次郎」は、写真映えするメニューがSNSで話題となり、20~30代を中心とする顧客を獲得。ランチタイムには7~8割を女性が占め、土曜日や祝日は遠方から来店する目的客が多い。

URLコピー

萬田次郎

Key Point

  1. 北九州を源流とする独特のうどんで差別化
  2. オーダーごとに生地をのして切り、茹でたてを提供
  3. ごぼう天など写真映えするトッピングで訴求

2日かけて熟成させた生地で茹でたてのうどんを提供

 透明感があり、しなやかなコシを持つ独特の麺と、写真映えする巨大なごぼう天などで人気上昇中のうどん店が、東京・新宿御苑前の「萬田次郎」である。地下鉄新宿御苑前駅から徒歩2分ほどの個性的な飲食テナントが多い路地沿いにあり、特にランチタイムにはウエイティングの絶えない店として存在感を見せている。

 オープンは2022年2月で、福岡市に2017年6月にオープンした「萬田うどん」の2号店という意味から、「萬田次郎」という店名を付けた。

 独特の麺は、「豊前裏打会(ぶぜんうらうちかい)」といううどん店のグループ特有のものだ。「豊前裏打会」は、北九州市の「津田屋官兵衛」を源流とし、福岡県を中心に40店舗が加盟している。豊前は、現在の福岡県東部と大分県北部に相当する地方の旧国名で、「うどんで有名な讃岐が表ならば、自分たちは裏の存在として、独自の麺を追究していきたい」という志から命名し、1990年代後半に発足したグループである。「津田屋官兵衛」もしくは加盟店で修業を積んだうどん職人が独立開業する際に、認可を受けて加盟できる仕組みになっている。うどん作りや商品開発の詳細は各グループ店の創意工夫に任されているが、「萬田うどん」、「萬田次郎」では、「津田屋官兵衛」からオリジナルブレンドの小麦粉や、だしに使う昆布、カツオ節などを仕入れ、「豊前裏打会」加盟店としての基盤を押さえた上で、バリエーションメニューや季節メニューなどを加えている。

 和食店の居抜きを利用して出店した「萬田次郎」は、10坪13席の小ぢんまりした店舗である。入り口の鳥居のような門構えや、コの字型のカウンター席は、以前の店舗の造りをそのまま使っている。厨房スペースも限られているが、新たにコンパクトな製麺機、茹で麺機、熟成庫などを導入し、大きな天ぷらが多数出るだろうという予想から、フライヤーは大型のものに入れ替えた。

 麺の特徴である透明感としなやかなコシを出す秘訣は、生地の熟成方法にある。まず、小麦粉に塩水などを加えてミキシングした後、1kgずつに小分けして熟成庫に入れる。庫内で高温と低温を繰り返しながら、2日かけてじっくり熟成させている。ほどよい状態になったら冷蔵庫に移し、オーダーが入るまでその状態を保つ。

 また、どんなに多忙な時間帯でも、オーダーが入ってから生地をのし、切り、茹で上げるという提供方法を徹底。うどん1人前は茹で上がりで300g、大盛りは450gで、1kg玉で3~4人前になる。

 福岡の名物トッピングであるごぼう天は、丼からはみ出すほどの長さに揚げており、初めて実物を見た人からは歓声が上がるほどだ。良質な国産ゴボウを仕入れ、薄くスライスして10分ほど水にさらし、衣を付けて菜箸で形を整えながら揚げていく。サクッとした食感と心地よい香りがあり、ゴボウのおいしさを再認識させてくれる。店名を冠した「萬田うどん」(温、1,300円)、「萬田おろしぶっかけ」(冷、1,100円)など、ごぼう天が付くうどんメニューが計6品目あるほか、追加トッピングとしてもオーダーできる(+300円)。 

透明感のある独特のうどんを広めたいと、福岡から東京に進出。手前が麺そのものの味わいや食感を楽しめる「ざる」(冷、600円)。奥が「萬田うどん」(温、1,300円)で、巨大なごぼう天を丼のふちに渡しているほか、甘辛く煮た牛肉、とろろ、卵が入っている。「旨塩むすび」(150円)は、純米吟醸酒を加えて炊いたご飯を、うま味のある塩を使っておむすびに握ったもの

インパクトのある商品写真がSNS上で話題を集める

 オープン時は、まん延防止等重点措置の発令中だったこともあり、静かなスタートを切った。2022年3月末に規制が解除されて以降、徐々に客数が増えてきた。その大きな原動力となったのは、写真映えするメニューが次々とSNSに投稿されたことによる話題性で、それを見た20~30代を中心とする顧客がじわじわと増えていった。特にランチタイムは女性が7~8割を占め、土曜日や祝日は同店を目指して遠方から来店する人が多いため、ランチだけで100人以上を集客する日もある。当初は15~18時はクローズしていたが、ウエイティングが増えるにつれて徐々に営業時間を長くし、現在の午後の休憩時間は16~17時の1時間としている。

 同店が豊前裏打会加盟店ならではの個性的な麺で、都心でも注目度を上げている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 北九州を源流とする豊前裏打会の加盟店として、独特の透明感のあるうどんで差別化している。
  2. 2日間かけて熟成させた生地を使い、オーダーを受けてからのし、切り、茹でた麺を提供している。
  3. ごぼう天をはじめ、写真映えするトッピングでSNSなどでの訴求効果を高めている。

 ランチタイムはうどん専門店として営業しており、客単価は1,000円前後。夜はまず酒類と、夜だけ提供している酒肴を軽く楽しみ、うどんで締める人も増えるため、客単価は1,500円ほどになる。

 定番メニューのほか、月替わりの限定メニューも登場する。1月は「豚バラと白菜出汁の絶品うどん」(温、1,000円)、「舞茸天とすだちのぶっかけ」(冷、1,000円)を販売したほか、春はタケノコの天ぷら、夏はトウモロコシのかき揚げ、秋は揚げナスなど、旬の素材を採り入れた商品が好評で、リピーターを引き付けている。

(Text and photo by Food Biz

萬田次郎
住所
東京都新宿区新宿1-12-1 サンサーラ第三御苑 1F
TEL 03-6380-1126
営業時間
11:30〜16:00(LO.15:30)、17:00~21:30(LO.21:00)
定休日
日曜日・第1、3月曜日
https://r.gnavi.co.jp/6nhss05m0000/map/

■飲食店経営の明日をリードするオピニオン誌「Food Biz」

「Food Biz」の特徴
鍛えられた十分な取材力、現場を見抜く観察力、網羅的な情報力、変化を先取りする予見力、この4つの強みを生かして、外食業に起こっている変化の本質を摘出し、その未来を明確に指し示す“主張のある専門誌”です。表層的なトレンドではなく、外食業に起こっていることの本質を知りたい人にこそ購読をおすすめします。読みたい人に直接お届け!(書店では販売しておりません)

購読のお申し込みはこちら
年間定期購読: https://f-biz.com/nenkei/
単号購読: https://f-biz.com/tango/
詳しい内容は: https://f-biz.com/mag/

発行:株式会社エフビー
〒102-0071 東京都千代田区富士見2-6-10 三共富士見ビル302
HP https://f-biz.com/ TEL 03-3262-3522