ラム肉酒場 ラムゴロー
Key Point
- 専門店としてラム肉好きのお客様を広域から集客
- スパイス類を駆使して食べやすいラム料理を開発
- 羊をテーマにユーモラスな内外装で楽しさを表現
ヘルシーな素材として人気上昇中のラム肉に注目
ラム肉料理に特化した居酒屋「ラム肉酒場 ラムゴロー」が、東京・神田駅周辺では珍しく、20~30代の若年層や女性の誘引に成果を上げている。オープンは2021年9月で、JR神田駅南口から徒歩30秒の4階建てビルの1、2階、計22坪60席の店舗である。大きく「ラム肉酒場」と書かれた看板と、2階の窓から店内を覗き込む、ユーモラスな羊のオブジェが目を引く。
ラム肉というと、その独特な風味で好き嫌いが分かれるが、同店では主にオーストラリア産のチルドのラム肉を使い、スパイス類をうまく使って、気軽に食べられる商品をそろえているのが特徴である。また、ラム肉にはたんぱく質、ビタミン類、鉄分や亜鉛などのミネラル類、脂肪の燃焼を助けるL-カルニチンなどが含まれ、しかも低カロリーとあって、健康志向の強い層や、特に女性の間でじわじわと人気が高まってきている。
経営元は、神田駅周辺で直営5店舗、FC3店舗を運営する株式会社スマイルリンクルである。直営店は、広島お好み焼き「Big-Pig(ビッグピッグ)」と、「酒場五郎」「酒場ゴロー」フレンチと和食をかけ合わせたビストロ「Tchin-Tchin GORO (チンチン ゴロー)」の五郎シリーズを徒歩3分圏内にドミナント展開しており、神田エリアに勤務するビジネス層には認知度が高い。
コロナ禍により飲食店が大打撃を受けていた2021年6月頃に、同ビルの1~3階で営業していたスパニッシュバルが撤退することを知り、代表取締役社長の須藤剛氏は一棟借りを決断。外階段もエレベーターもなく、使い方の難しい物件で、以前のスパニッシュバルのときも4階はスケルトンのまま未使用の状態だった。須藤氏はこのビルをどう使いこなすかを熟考し、作業効率を考えて飲食店は1~2階で営業し、4階に本社を移転させたほか、3階は仕込み用のキッチンとし、周辺の飲食店の仕込み作業を請け負う事業を開始した。現在は2社の仕込み代行製造を行っており、今後は人手不足に悩む飲食店からの受注がさらに増えると予測している。
また、これまでは神田駅周辺のサラリーマンに好まれる大衆酒場業態で基盤を築いてきたが、今回はラム肉という食材の魅力で、都内の広域から集客できるような店舗を作ろうと考えた。ラム肉の代表的な料理である「ラムチョップ」(550円)、「熟成ラム串」(190円)などのほか、低温調理法を用いた「ラムのレバ刺し」(890円)、「ラム肉のたたき」(890円)など、専門店ならではのアイテムを提供している。ドリンクは、香りの強いラム肉との相性を考え、ジンや焼酎などにスパイス類を漬け込んでベースを仕込み、炭酸で割った「名物スパイスサワー」(6品目、各590円)で特徴を出している。客単価は3,500円で、1日平均60人を誘引しており、うち約4割を女性が占めている。
神田でナンバーワンの飲食企業を目指す
同社の創業は1994年にさかのぼり、広島出身の森口康志氏が脱サラから出店した10坪のお好み焼き店がスタートだった。約30年の間に30店ほどの飲食店を出店したが、うち20店以上撤退してきた経験がある。ところが、神田駅周辺の各店舗は地元のニーズをうまく掴み、いずれも堅調に推移している。
現社長の須藤氏は、1983年福島生まれで、高校卒業後の2002年、知人の紹介で入社した。創業社長の森口氏の人柄に惹かれながら、研鑽、経験を積み重ね、2019年秋ごろから次期社長への就任準備を進めた。2020年4月に正式に着任し、森口氏は会長となり、実質的に事業を継承した。
須藤氏は、今後3年ほどは神田でのドミナント展開に集中する中期計画を策定し、「神田でナンバーワンの飲食企業になる」という目標を掲げている。「売上、店舗数はもちろん、飲食業界での幸福度ナンバーワン企業を目指しています」と須藤氏は公言する。
新体制の下、まずはラムフリークをターゲットとする同店で、神田以外の地区からの目的来店の獲得に挑戦している。また、内外装は業態のテーマ性を生かすデザイン力で定評のある株式会社スパイスワークスが手掛けており、外観のみならず、店内、トイレの中まで、羊づくしの楽し気なしつらえが印象に残る。
同店がコロナ禍の影響を受けながらも、口コミなどでじわじわと売上を伸ばしてきた要因は、以下のようになるだろう。
- ラム肉という素材に着目し、ラム好きの人を広域から集客するコンセプトを打ち出している。
- スパイス類を駆使したラム料理や特製サワーで、ラム肉独特の香りを抵抗なく楽しめるように工夫している。
- 羊をテーマとするユーモラスな内外装で、楽しさ、非日常などを表現し、口コミでの情報拡散に繋げている。
典型的なビジネス街であり、居住人口の少ない神田周辺は、土・日曜日は人通りが激減し、一面では非常に難しいマーケットである。そのため、神田で多店舗展開している飲食企業は少なく、またクリスマスイブなどには、隣接の丸の内などの賑いとは裏腹に閑散としてしまうのがこれまでの状況だった。
「私たちは神田が大好きなので、大好きな街に人が集まるような店を作っていきたいと思うのです。大衆酒場はいっぱいあるので、今後は神田にはなかった、デートにも使えるようなおしゃれな業態を作りたいですね」と、須藤氏は抱負を述べている。
(Text and photo by Food Biz)
住所
東京都千代田区鍛冶町1-3-7 SWビル 1、2F
TEL 03-6260-9797
営業時間
17:00~23:30(LO.22:30、ドリンク23:00)、土曜日16:00~23:00(LO.フード22:00、ドリンク22:30)
定休日
日曜日、祝日
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