2023/05/16 特別企画

ブランディングから始まる“選ばれる店”づくり(3)

選ばれる店づくりの手段として、「ブランディング」を使った方法を紹介する3回シリーズ。3回目は、顧客とつながる情報発信メディアの選び方・使い方について、ブランドプロデューサーの大磯爵歌氏に話を聞く。

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顧客とつながる情報発信メディアの選び方・使い方

 第2回は、ブランディングは一朝一夕に育まれるものではなく、断続的かつ継続的に発信していくことが大切だという話をした。今回は、それを受けて、メインとなる情報発信メディアはどう決めればいいのか、という意外と悩みがちな問題にフォーカスする。

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株式会社ビジョンブリッジ 代表 大磯爵歌(くらか)氏
言葉で育む、ブランディング研究所主宰。法政大学経営学部にてマーケティング、ブランド論を専攻。卒業後、大手広告会社のプロデューサーを経て2021年独立。業界歴18年間のキャリアを通して、アルコール・自動車・化粧品・流通・官公庁など、さまざまな業種・業界プロジェクトを手掛ける。現在は、小規模事業主のブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーションの設計・ビジュアル開発・PRに至るまでを一手に請負い、その一気通貫した仕事は顧客から高い評価を得ている。

購買行動に合わせてメディアを分類

 人が商品の購入やサービスを利用するに至るまでに、

①認知する
②興味を持つ
③欲しくなる
④購買行動を起こす

 この順番でアクションに至ると言われている。さらに現代では、②と③の間でSNSやGoogleで「検索」を行い、本当に自分が求めるに足る商品なのかを比較検討するようになり、さらには④の購買後には利用した感想をSNSなどで「シェアする」という行動まで含まれるようになっている。複雑化する購買行動のなかでどう情報を発信したらよいのか、日々頭を悩ませる経営者様も多いのではないだろうか。

 「『たくさんある情報発信メディアのうち、どれを選べばいいでしょう』とご質問をいただくこともあるのですが、その時に思い出してほしいのが前述のお客様の購買行動なのです」と大磯氏。①認知する〜④購買行動を起こすまでに、どんな情報があれば顧客の興味が深まっていくのか、次の行動を起こしてもらいやすくなるのかを考えながら、メディアをプロットすることがポイントになる。

 まずは最初の入口になる「認知する」だが、ここではより多くの人に知ってもらうことが必要になるので無料で情報発信でき、拡散も期待できるSNS(Facebook、Twitter、Instagramなど)を活用するのが効果的。さらに商品・サービスに対する興味を深めてもらおうとするなら、ホームページやブログ、ノート(note)などの長文記事をストックできるメディアを活用するのがおすすめだ。SNSだけでは伝えきれない世界観が表現しやすくなるはず。さらに、興味が高まった顧客との関係性を深め「購買」へと促していくためには、ダイレクトにメッセージが発信できる公式LINEやメルマガなどが有用といえる。これらは顧客側に“登録してもらう”というアクションが必要なメディアなので、どういう人がどれくらい自社の商品・サービスに興味を持っているのかを測る指標になり、興味関心の高い人だけに直接情報を届けられることから信頼関係の構築にもつながりやすいと言える。

SNSそれぞれの特徴を知る

 さて、SNSを始める場合、どのメディアから着手したらよいのだろうか。「Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、TikTokなど、新しいものがどんどん出てきて選べない、取り組む余力がない、という相談もいただきます。もちろん、できることなら複数取り組んだ方がよいのでしょうが、以前申し上げたようにブランディングにおいては継続的・断続的にじわじわ浸透させていくことが重要です」と大磯氏。無理をして続かなくなってしまっては意味がない。まずはどれか一つを選んで、着手するとよいだろう。

 SNSには、それぞれ特徴がある。自分たちの顧客になり得る人はどんな媒体をよく見ているかを想像し、そこに絞ることが大切。実際に来店客に、何を見ているか聞いてみるのもいいかもしれない。

 一般的にFacebookはビジネスユースの人が多く利用していると言われている。年齢層も比較的高めで40〜50代がメインユーザー。本名での登録が原則なのでつながっている友達同士の信頼感は強く、「いいね!」のアクションを通じて友達の友達にまで拡散されるのが大きな特徴だ。

 Instagramは、Facebookのように拡散されていくようなメディアではないが、タグ付けやハッシュタグなどで共通の関心事がある人同士がつながりあっていけること、写真や動画によるビジュアルコミュニケーションができることから世界観を伝えやすいことも大きな特徴といえる。年齢層は20〜30代の女性が多かったが、利用者数の増加とともにユーザー層も広がってきている。

 Twitterは140字という文字数制限があって気軽に投稿できるのが特徴で、リツイートによる拡散も見込めるため即時性が高いと言われている。これらの特徴を踏まえ、顧客層に合うメディアを選定できるといいだろう。

 もう一つの選定基準として、発信者側が使い勝手の良いメディアを選ぶ、というのも実は大切。継続的に情報発信をするときに、操作・投稿しやすいメディアかどうか、という視点も忘れずにチェックするとよいだろう。

あさくまのブランディングをケーススタディ

 店のブランディングの話を進めてきたが、もう少し身近に感じてもらうために、具体的なケーススタディを大磯氏に聞いた。「先日、テンポスグループの『ステーキのあさくま』武蔵小杉店にお邪魔してきましたので、そこで感じたことと、私なりに考えたブランディング戦略をお話します。実は、『あさくま』にお邪魔したのは初めてだったのですが、少し驚きました。失礼な言い方に聞こえてしまうかもしれませんが、想像していた以上に素敵なお店でした」(大磯氏)。

 大磯氏は事前にホームページとSNSを見ていたが、その時点では雰囲気が掴みきれないところがあったという。しかし、いざ店に訪れると第一印象から好感が持て、「なんてハートフルで温かいお店なんだ!」と思ったそう。「美味しいものを思いっきり食べてほしいという心意気が、店のそこここにあふれているのです。かしこまりすぎない自由さが、大人にも子供にも心地がいい。そのための工夫も随所に見られました」と大磯氏は振り返る。

 “想像以上に素敵なお店だった”ということは、大きなポテンシャル。もしその姿を「あさくま」に行ったことがない人に伝えることができたら、来店してもらうチャンスは広がるに違いない。

 「『あさくま』は店舗数も多いので、もしかしたらそろそろホームページなどの表現の整備と公式SNSを本格的に運営していくフェーズなのかもしれません。66店舗それぞれで情報発信するのは大変なので、『あさくま』全体としてのオフィシャルな発信がいいと思います」と大磯氏。大切にしている思いやメニューの開発秘話、従業員の人柄や仕事ぶり、来店客の声を発信することで、店の顔立ちがオンラインでも浮かび上がってくるはず。それが新たなファンづくりにつながっていくと大磯氏は指摘する。

 情報の切り口も、創業70年という歴史の中でたくさんあるはず。ハンバーグやコーンスープなど名物料理ができるまでの物語や素材へのこだわり、季節のおすすめなど、いろいろな切り口から、見えていなかったあさくまをどんどん出していくことが重要になりそうだ。

 そして、実際の来店客とオンライン上の潜在顧客がそれぞれ持つ「あさくま」への印象が重なり合うようになると、今度はそこから相乗効果が生まれ始める。オンラインで情報を知った人が店に行ってみたいと思い、来店した人がオンラインで店の雰囲気を思い出して、また行きたいと思う。さらには、ECサイト「あさくまファーム」への期待感も上がるはず。リアル店舗とオンラインの情報発信がぐるぐる回って、「あさくま」のファンがどんどん広がっていくはずだ。

※株式会社テンポスホールディングス刊「スマイラー」83号より転載

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