フリホーレス 恵比寿・代官山店
Key Point
- ヘルシーでボリュームのあるブリトーを提供
- クイック提供でオフィス街のランチ需要に対応
- ハード、ソフト両面の改善で売り上げ増を実現
メキシコ起源のブリトーが主力のファストカジュアル業態を開発
トルティーヤ(トウモロコシ粉や小麦粉を使った薄い生地)で、野菜類を中心に好みの具材をたっぷりと包んだブリトーを主力商品とする「フリホーレス」が、都心のビジネス街のランチ需要に合致し、連日長蛇の列ができている。
同店のブリトーはレギュラーサイズで約480g(1,080円~)、グランデサイズともなると約700g(1,560円~)のボリュームがあり、午後の仕事へのエネルギー補給になりながらも、野菜が多いのでさっぱりと食べられ、胃もたれすることもない。さらには「グリルドチキン」「ポーク」「ビーフステーキ」「ヴィーガン ベジタリアン」のメイン4種類のほか、サルサソース、ビーンズ、トッピングなどを好みで選べるので、その組み合わせは3万通り以上になり、飽きることなく頻繁に来店するリピーターが多いのも特徴である。
加えて素早い提供を徹底しており、スタッフに自分の好みを伝えながらブリトーを包んでもらうのに30秒ほどしかかからず、注文レーンに並び、好みの商品をオーダーし、多様な支払い方法が可能なセルフレジでの精算まで、約3分で完結できる。限られたランチタイムに来店するビジネスマンやキャリアウーマンにとっての利便性が考慮されている。
フリホーレスとはスペイン語でインゲン豆の意で、ブリトーはメキシコを起源とし、アメリカのテキサス州経由で広がったテックスメックス(Tex-Mex)料理の代表的なアイテムの一つでもある。同店は、レストランと同等のクオリティーの料理を、ファストフード店のように素早く、リーズナブルな価格で提供する、いわゆるファストカジュアル業態として開発されている。
経営元のフリホーレス株式会社は2009年3月の設立で、現在、麻布十番店(オープン2010年1月)、六本木店(同2011年2月)、大手町ファーストスクエア店(同2013年9月)、恵比寿・代官山店(2017年10月オープンの代官山店を2021年9月に移転)、八重洲ミッドタウン店(同2022年9月)の5店舗を有する。2023年2月期は年商4億9,400万円を上げた。さらに2023年は8月に渋谷道玄坂店、11月に田町タワー店をオープンする予定で、2024年2月期は年商8億円に達しそうな勢いだ。
新社長の下でコロナ禍を契機に大規模な改善策を着々と実施
コロナ禍による打撃から順調に回復してきたかのように見える好調ぶりだが、実際には2014年に代表取締役に就任した浅場信三氏が、試行錯誤しながら基本理念、価値観、オペレーション、スタッフの行動指針、チームワークなどを再構築し、ようやく軌道に乗せてきたという経緯がある。
浅場氏は1964年生まれで、1987年に慶應義塾大学経済学部卒業後、信託銀行に9年、外資系証券会社に16年勤務した経歴を持つ。フリホーレスは、外資系証券会社時代の後輩でアメリカ・カリフォルニア育ちの知人が、その友人と2人で創業した事業である。
アメリカでポピュラーなブリトーを主力に、日本在住のアメリカ人たちの憩いの場のような店を作ろうという発想でスタートした。麻布十番や六本木などニーズのある立地で、ターゲットを絞って展開していたため、次第に伸び悩みに直面するようになった。
また浅場氏は2008年のリーマンショックの影響で組織や職場環境が大きく変わったことから、2012年、48歳でサラリーマン生活に終止符を打ち、金融関係以外の勉強をしながら、今後の人生を模索していた。そのタイミングで先述の後輩から相談を受け、もうひとりの創業者が同社を離れ、浅場氏が社長に就任することになった。浅場氏は飲食業界の経験は全くなかったが、店舗を統括するゼネラルマネージャーを起用して一任すればいいと説得され、裏方で組織の舵取りをするという立場で社長業を引き受けた。
しかし、コンセプトを理解し業容の改善まで任せられるゼネラルマネージャーの採用は難しく、1人目、2人目ともに長続きせず、比較的真面目だった3人目もコロナ禍による売上の急減を受け、2020年夏に辞めてしまった。「これはもう、自分でやるしかない」と意を決した浅場氏は、各店舗を回って現状を把握し、同様の問題意識を持っていた勤務経験の長いアルバイトスタッフをゼネラルマネージャーに昇格させ、二人三脚で次々と改善策を打ち出した。
まず、「安全・安心、ヘルシーでおいしい商品を、クイックで温かみのあるサービスで提供する」というフリホーレスの「事業目的」を会社全体で再確認し、その実現に向けて取り組み始めた。メニュー表を見やすく作り直し、厨房機器やレジへの再投資を行い、作業動線を改善したことで、提供時間も大幅にスピードアップした。
また「働くスタッフに理不尽がない環境」を目指して、マニュアルをビデオ化してわかりやすくし、パワハラ、セクハラなどのハラスメントを根絶するとともに、お客様にも仲間にも敬意を持って接し、誇りを感じられるようなチームワーク作りを進めている。スタッフ側にもコロナ禍による不安があった中でも、会社の理念に共感してくれる素直な人材が多く残り、規律と仲の良さが両立され、最近では人間関係を理由に辞めるスタッフがほとんどいなくなった。
一つ一つの取り組みの効果が顕著に現われてきた最近では、全店舗の月商の合計を店舗数で割った数値が、コロナ前の2020年2月期の190%に上がっている。同店がコロナ禍を飛躍への準備期間に転じさせた要因は、以下のようになるだろう。
- ヘルシーでボリュームのあるブリトーを主力商品とするファストカジュアル業態を打ち出している。
- クイック提供に磨きをかけ、オフィス立地でのランチ需要に対応している。
- 新体制下でのハード、ソフト両面での改善が効果を上げ始めている。
「ようやく上向きになってきたので、企業価値を毀損しないように、安定成長を続けたいです。当面は都心を中心に出店し、ブランドの認知度を高めていきたいですね」と、浅場社長は述べている。
(Text and shop photo by Food Biz, burrito photo by Frijoles)
住所
東京都渋谷区恵比寿西1-29-9 ツウロワ・イー代官山1F
TEL 03-6416-5873
営業時間
11:00~21:00
定休日
無休
https://r.gnavi.co.jp/9rrjz8p60000/map/
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