90以上のブランドを持つGYRO HOLDINGSは、なぜ好調なのか? 根本社長が語る3つの事業戦略

多彩なブランドを持つ“個店の集合体”株式会社GYRO(ジャイロ) HOLDINGS。2021年12月から代表取締役社長に就任した根本寿一氏はいち料理人からレインズインターナショナルの社長を経て今に至る異色の経歴の持ち主。そんな根本氏に、これまでの歩みとGYROの武器を生かした今後の戦略について聞いた。

URLコピー

多彩な“個店の集合体”で、食ビジネスに化学変化を起こす!

高校時代のアルバイトがきっかけで、すでに決まっていた大学進学を取りやめてまで飲食の道に進んだという根本寿一氏。和食料理人として修業を重ね、30歳手前で独立。その後は、当時「牛角」などで成長していた株式会社レインズインターナショナルへ。物流の分野で実績を積むと、執行役員、子会社の社長、本社副社長を経て、2016年には社長に就任した。

そんな彼が次にたどり着いたステージが、株式会社GYRO(ジャイロ) HOLDINGSのトップのポジションだった。GYRO HOLDINGSは、2019年にカフェ・カンパニー株式会社と株式会社subLime(サブライム)という2つの飲食企業が経営統合して誕生した持株会社で、現在はアジア最大級の資産運用会社・PAGの傘下にいる。M&Aや独立支援で成長してきたsubLimeの社風を色濃く残しており、91ブランド・230店舗を持つ、いわば“個店の集合体”だ。こうした武器を生かしつつ、「M&A」「独立支援」という事業の柱に加えて2023年9月からは「FC事業」もスタート。こうした取り組みの狙いと、今後の展望について聞いた。

目次
大学合格から一転して料理人の道へ
レインズに入社も、3日で「やめたい!」と直訴
多彩な武器を持つGYROの強みと弱み
「M&A」「独立支援」「FC事業」の3軸に注力
全国各地で食ビジネスでの独立を支援したい
「リーダー×一問一答」&「COMPANY DATA」

――飲食の世界に入ったきっかけは?

高校3年生のとき、大学進学が決まっていたのですが、入学までの間、たまたま洋食店でアルバイトをしたんです。飲食店の仕事を初めて間近で見て、料理人ってかっこいい、料理を作って喜んでもらえる空間っていいなあ、と思いました。仲良くなったシェフに「将来、自分の店を持つなら早いほうがいい」と言われ、大学に進学せずに料理の修業をすることに。そのシェフに紹介された修業先の店とタイミングが合わず、調理師学校へ。大学に進学する予定が、いきなり飲食の道ですから、両親も驚いていましたが、しぶしぶ認めてくれました。

学校では和洋中と製菓も学びましたが、料理人としてのカッコ良さから和食を選びました。白衣と雪駄で、包丁を握って厨房に立つ雰囲気に惹かれたからです。卒業後は明治記念館に就職し、結婚式などの料理を作り、結婚式シーズン以外は、箱根の温泉旅館「強羅花壇」といった高級旅館やホテル、料亭など、さまざまな店舗に派遣されて働きました。

明治記念館では約7年間勤めて、その後小さなホテルの料理長など、いくつかの会社で働きました。そんな折、当時所属していた会社が倒産してしまって…。その会社が東京・中目黒に持っていた和食店の賃貸契約が3年ほど残っており、会社から引き継ぐ形で独立しました。契約が残っている3年だけの期限付きだったこともあり、かなりの好条件。そうでなければ、28歳で借りられる物件ではありませんでした。

この店では、それまでの路線を踏襲して、夜は客単価8,000~15,000円の割烹コースを提供。ランチも始めて、ビジネス層などを中心に集客して繁盛しました。その後、期限がきたので移転しようと近くで物件を探したのですが、家賃が高すぎて手が出ません。

そんなときに知人から紹介されたのが、「牛角」「土間土間」を展開していた株式会社レインズインターナショナルでした。当時、レインズは和食居酒屋を開発中で、和食の経験がある人材を探していたのです。そのためか、いきなり社長(西山知義氏)に面接してもらい即決で採用され、3日後くらいに入社となりました。

1965年、神奈川生まれ。調理師専門学校卒業後、和食の料理人として結婚式場・旅館・料亭などで経験を積む。28歳で独立し東京・中目黒に和食店をオープン。その後、2000年に株式会社レインズインターナショナルに入社。業態・メニュー開発、仕入れ・物流部門で活躍し、2016年代表取締役社長に就任。2021年2月に退任し、同年12月より現職。

【飲食店の開業をお考えの方はこちらをチェック!】
失敗しない飲食店経営とは?「7つの戦略」であなたのお店はガラリと変わる

――その後、執行役員、子会社の社長、副社長を経て、2016年に社長に就任されました。

最初は開発中の和食居酒屋に配属され、メニュー開発を担当しました。ずっとやってきた仕事ですが、今までレシピも食材も仕入れも価格も、すべて頭の中で感覚的に組み立てていたものを、「パソコンを使って目に見える形にしてほしい」と言われました。当時の私はパソコンを全く使えません。包丁を握らず、パソコンの前に一日中縛られる生活が信じられず、入社3日目に「もう辞めます!」と上司に言ってしまいました。

上司は私より5歳若い20代後半でしたし、私を3日で辞めさせるわけにはいかないと焦ったのか、必死に止めてくれました。その必死さに負けて、気を取り直してパソコン教室にも通いました。

人生、何が幸いするかわかりません。結果的に、これが私にとって大きな転機になりました。1店舗でなく100店舗を考えることで、人とのつながりも仕事の幅も大きく広がったからです。数百店舗に波及するメニューを作ることが面白く、若いスタッフとの仕事も楽しい。レインズに入ったからこそ感じられた、新しい仕事の喜びでした。

その後担当したのは物流や調達の仕事です。メニュー開発は重要ですが、欲しい食材を作る生産現場を見つけ、物流を構築することは、飲食企業にとって同じくらい重要です。特に2000年代前半はBSEや食肉偽装事件など食材にまつわる事故や事件が多発していましたから、安全な食材の調達は成長戦略の1つとして関心が向けられました。その流れもあったのか、2009年に執行役員、2014年に食材の調達と配送をサポートするグループ会社コストイズの社長、2015年にレインズ副社長になり、翌年代表取締役社長に就任しました。

――2021年2月には社長を退任し、同年12月、GYRO HOLDINGSの代表取締役社長に就任されます。

GYRO HOLDINGSは、2019年にカフェ・カンパニー株式会社と株式会社subLime(サブライム)という2つの飲食企業が経営統合して誕生した持株会社です。もともとsubLimeがM&Aを積極的に行って多種多様なブランドを獲得し、2021年には資産運用会社PAGの傘下に入りました。現在は8つの事業会社・91のブランド・230店舗を有し、客単価800円のラーメン店から30,000円のミシュランの星付き店まで持っています。

私自身は、20代で自分の店を持ち、レインズで一兵卒からトップまで経験して飲食人として一つの区切りを感じていました。年齢も50代半ば。仕事人としての時間軸を考えると、次のフェーズを考えてもいい時期ではないかと…。そんなときにPAGと縁がつながり、GYROの社長に就任することになったんです。GYROについては、「こんな会社があるのか!」と驚くほど多彩な武器(ブランド)を持っているな、と感じました。

この多彩さが当社の強みであると同時に弱みでもあります。当社の傘下にある230店舗は業態や客単価が幅広いだけでなく、仕入れ先も物流も使っているPOSレジもバラバラ。いわば個店の集合体です。食材も人も取引先も管理されていないので、効率が悪い。ところが、この非効率が宝物になる瞬間があるから面白いんです。

例えば、当社の中には、唯一無二の食材を作る小規模の生産者と日払いで取引をしている店があります。この生産者はチェーンとは絶対に取引ができません。ということは、この唯一無二の食材は、当社の強みになり得ます。同様の例が無数にあるのが当社の特徴。しかもあらゆる業態があるので、掛け合わせることによって今までにない価値を生み出すことが可能です。組み合わせも無限大。これからどんな化学変化を起こせるかワクワクしています。

――現在、注力している取り組みを教えてください。

M&Aには引き続き力を入れます。2022年の「牛8(USHIHACHI)」に続き、2023年6月に株式会社ESOLAを子会社化し、株式会社縁尽から大阪の3店舗を譲り受けました。いずれも事業基盤の強化が目的。ESOLAは当社の空白エリアである山陰・山陽・九州への出店の土台になりますし、大阪の3店舗は梅田の一等地で、戦略上、押さえておきたい物件だったというのが理由の一つです。

2022年10月、株式会社パッションアンドクリエイトから焼肉専門店「牛8(USHIHACHI)」(写真)を買収した

さらに、2023年9月からFC事業も開始しました。まず、ESOLA買収によって取得した「ワイン×イタリアン ESOLA」をFCブランド第1弾として展開します。このブランドはワインビュッフェが売りで、低投資で出店できて利益率が高いのが魅力。家賃の高い繁華街ではなく郊外出店を狙って、長く安定的に続けられるブランドに育てたいですね。

株式会社ESOLAを子会社化し、2023年9月から「ワイン×イタリアン ESOLA」(写真)をFCブランドとして展開することを発表した

そして、忘れてはいけないのが「独立支援」。これはsubLimeから続く社風で、2006年の創業から今日まで約50人の社員が独立し、総店舗数は100を超えています。現在はコロナ禍の影響や食材費・人件費の高騰などで、独立志向が弱まっていますが、飲食業界を守り発展させるためには、独立したい人がリスクなく自分の店を持てる環境を作りたい。社内独立に限らず、社外の人も含めて独立を支援できるような体制を整えていきたいと考えています。

このほか、新業態も出店しています。2022年オープンの「カルビとシロメシ カルビーノ」(東京・竹ノ塚)は客単価の異なる焼肉業態を持つことでリスクを分散させたいと考えて開発しました。既存ブランドとして、高級業態の「牛の達人」、ミドルエンドの「牛8」があるので、レッドオーシャンである客単価3,000円のマーケットを取るために作ったブランドです。

同じ新業態の「鉄板焼肉KINTO」(東京・神保町)では、食事ニーズを繁華街でどれだけ取れるかを探っています。ほか、北海道の朝採れ海鮮料理が楽しめる北海道レストラン「KIBORI」は、本社を構える新宿におけるシンボル店として出店しました。これらはいずれも多店舗展開を展望しています。

  • 2022年9月、東京・神保町に新業態「鉄板焼肉KINTO」をオープン。繁華街での食事ニーズの獲得を狙ったブランドだ
  • 2022年11月、東京・新宿にオープンした北海道レストラン「KIBORI」。1,000体の木彫りの熊が並ぶ内観が特徴的

――最後に、今後の目標を聞かせてください。

先ほどお伝えしたM&A、FC、独立支援の3つを事業の軸として今後も注力していきたいと考えています。

短期的には、M&Aのターゲットとして北海道・東北・近畿・山陰・九州といったエリアに注目しています。理由は、当社が関与し支援する企業が日本全国に存在して、物流を含めたネットワークを構築したいから。また、アジアからヨーロッパへの進出も準備しています。

長期的には、当社の理念である「食で未来を創る」ことが目標。日本は過疎化と一極集中が進んでいますが、全国には魅力的な地域がたくさんあり、移住したいと思っている人は少なくありません。当社は日本中のすべての地域で、食ビジネスで独立したい人を支援したい。その環境を作ることに貢献できる企業でありたいです。

独立の形態も、これまでの常識にとらわれることなく、例えば、店舗でなくキッチンカーでも面白いと思っています。飲食店のない地域に複数のキッチンカーが出向き、即席のレストランを作るのもいいかもしれません。今はまだ、どこにもないビジネスでも、当社ならニーズに応じてさまざまな変化や発展が可能です。食を通じて、新しい未来を創る。その一翼を担えたらうれしいです。

リーダー×一問一答

■経営者として一番大切にしていること
組織マネジメントの在り方、自立心と克己心。自立とは、自分の考えや行動に芯があることであり、責任ある行動を取ること。克己とは、強い信念をもって何事も諦めず行動すること。自身に問いかけるのと同時に、そういうメンバーが育つよう組織マネジメントにおいて大切にし気を付けている。

■愛読の雑誌や書籍、Webサイト
特に決まっていないが、ランダムに時間がある時、楽天/SBI証券の情報や金融ニュース、外食日報・産業新聞・日経・日経MJ・日経トレンディなど

■日課、習慣
トレーニングや体を動かす事を意識している

■今一番興味があること
プライベートで乗馬。臆病で神経質、警戒心が強く、仲間意識が強い。そのうえ、性格含め個体差がある馬達に跨り、思うように乗りこなすことの難しさ。調教された馬は、乗っている人の力量を判断し、その人の指示によってのみ動く。それも意思疎通があっての話。馬の社会も人の社会も通じる感じがする。強引にだったり、上からだったり、自分勝手だったりでは馬も言う事を聞いてくれない。心が通じ合うこと、言葉が通じないが意思疎通ができることは、目や表情、しぐさでしっかりと馬に通じる。同時に心の動揺も見抜かれる為、嘘やごまかしは効かない。動物と接すると学ぶことや得る事が多い。

■座右の銘
「思いは手法の上流にある、しかしながら手法なき思いは無力」
何をするにも、強烈な思い、やりたいと思う意志が困難やらに立ち向かう最高の武器。ただ、これだけだと失敗も多いし、その理由もわからないことが多い。1晩寝かせ何回か繰り返し考えることで、突破できるアイデアが生まれる。そのアイデアを言語化し共有共感することで更に良いアイデアに。そこがないのに、突っ走るのは無駄が多い。

■尊敬している人
坂本竜馬、本田宗一郎

■最近、注目している店舗・業態
「うかい亭グループ」(最近ではなく、ここ30年くらい)
古き良き、佇まい、規律を持ち、いつの時代も色あせない。八王子にしっかりと根ざしながら、生産にも関わり、それでいて、銀座や日比谷、東京タワーといった感度の高い立地でもしっかりとブランディングしながら常に先進的に進化している所・飲食を文化にしている数少ないチェーンだから。

■COMPANY DATA
GYRO HOLDINGS株式会社
東京都新宿区西新宿7-22-43 新宿JECビル4F
https://gyro.holdings/
設立:2006年
ブランド数・店舗数:91ブランド、230店舗
従業員数:社員290人 アルバイト1,390人(2023年9月末時点)

インボイス制度への対応は万全ですか?

2023年10月スタートのインボイス制度に対応した「POSレジ購入」を検討している方も多いはず。
飲食店向けの低価格POSレジ「tenposAirPro」は、インボイスへの対応はもちろん、抜群の操作性と安心安全な設計が特徴。業界最安値基準で、補助金を活用すればさらに半額(最大)に!「テンポス情報館」による補助金申請サポートも充実しています。

▼詳細はこちらから
飲食店向け低価格POSレジ「tenposAirPro」。導入費用が半額になる補助金の申請も全面サポート!

飲食店の開業をお考えの方は「ぐるなび」にご相談ください!

「ぐるなび通信」の記事を読んでいただき、ありがとうございます。

「ぐるなび」の掲載は無料で始められ、集客・リピート促進はもちろん、顧客管理、エリアの情報提供、仕入れについてなど、飲食店のあらゆる課題解決をサポートしています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

▼詳細はこちらから
0円から始める集客アップ。ぐるなび掲載・ネット予約【ぐるなび掲載のご案内】