2023/12/06 繁盛の法則

店内で仕込むどぶろくで特色を出すブルワリーパブとは

店内で醸造したフレッシュなどぶろくを提供する「平和どぶろく兜町醸造所」が、東京・兜町の新築ビル「KITOKI(キトキ)」内に昨年オープンした。経営元は和歌山県の平和酒造株式会社で、日本酒の蔵元直営のどぶろくをメインとするブルワリーパブとして、幅広い客層から注目されている。

URLコピー

平和どぶろく兜町醸造所

Key Point

  1. 店内醸造の新鮮などぶろくを提供
  2. 日本酒やクラフトビールも含めた醸造酒バーとして機能
  3. 開放的な店構えにより気軽な入店を誘引

日本酒の蔵元が手がける新感覚のどぶろくが好評

店内で醸造したフレッシュなどぶろくを提供する「平和どぶろく兜町醸造所」は、日本酒やクラフトビールも含めた醸造酒の情報発信地として、幅広い客層を誘引している。経営元は和歌山・海南市に本社を置く平和酒造株式会社で、2022年6月17日に東京・兜町の新築ビルの1階にオープンした。

蒸した米に麹と水を加えて発酵させただけの醸造酒であるどぶろくは、発酵を進ませた後に、粕(かす)をろ過せず白濁した醪(もろみ)の状態で飲むお酒である。かつては一般家庭でも作られていたほど身近な存在だったが、その後、酒税法により無免許での醸造が禁止されたため、「平和どぶろく兜町醸造所」で初めてどぶろくを飲んだという若年層が少なくない。また、酵母が生きた状態で入っているので、おいしい状態を保つには醸造の知識や適切な設備が必要で、管理状態が悪いと酸味が強くなり過ぎるなど、デリケートな性質を持つことも特徴である。

同店では和歌山の本社から専門知識を持つ醸造家が赴いて仕込み作業を行い、仕込み後10日~2週間程度は7~8℃の冷蔵庫内で発酵を進ませる。アルコール度数が9~10%弱になったことを確認したら、マイナス5℃の冷蔵庫に移し、発酵を止めて保管する。仕込みは、ふた付きのホーロー製の容器で7~10リットルずつ行い、常時約150リットルのどぶろくが店内の冷蔵庫内で発酵もしくは保管されている。提供時には、ホーロー製容器を冷蔵庫から取り出し、お客の目の前でレードルからグラスに注ぐ。室温に置かれて数分すると再び発酵が始まり、どぶろくの表面が盛り上がったり、小さな泡が出てきたりするほど新鮮で、ヨーグルトに似た爽やかな酸味や、米や副原料のツブツブ感があり、いわばアルコール分を含んだスムージーのような感覚で楽しめる。定番の「プレーン」(70ml500円、120ml850円)、「小豆」「黒豆」「ホップ」「白麹」(各70ml550円、120ml950円)のほか、「本日の限定どぶろく」として秋なら栗、さつまいも、柿などが加わり、常時8~9種類、年間ではのべ約30種類を提供している。ほか、平和酒造の日本酒「紀土(きっど)」シリーズ、自社醸造のクラフトビール「平和クラフト」、梅酒や柚子酒といったリキュール「鶴梅」各種もそろえている。

フードメニューは、厨房スペースが限られているため、和歌山県の名産品や人気食材などを利用し、どぶろくと相性のいい酒肴として提供している。客単価は3,000円ほどで、ドリンクとフードの比率は約6対4、ドリンクの中では、どぶろく、日本酒、ビールがほぼ3分の1ずつを占めている。

手前の「金山寺味噌とクリームチーズのクラッカー」(450円)は2種の発酵食品を組み合わせた酒肴で、上から和歌山名産のサンショウを振っている。どぶろくは各70mlで、左が和菓子のような甘さを持つ「小豆」(550円)、中央が和歌山県産米のにこまるを使用した「プレーン」(500円)、右が「本日の限定どぶろく」として秋に提供した「栗」(550円)。なお同店では完全キャッシュレス決済と、スマートフォンによるモバイルオーダーを採用している。入店時に現金は使えないことを必ずお客に伝え、スマートフォンの不調時には店側でオーダーを取るなどの柔軟な対応により、トラブルはほとんどないという

街の再活性化の一翼を担い、外国人観光客の利用も増加中

平和酒造は昭和3年(1928年)の創業で、第二次世界大戦の戦中・戦後には酒を造れない期間を経験した。醸造再開後は、京都のメーカーが販売しているパック酒の原料として酒を販売する、いわゆる桶売りを続けてきた。その後、日本一の梅の生産量を誇る和歌山ならではの酒として、梅酒ブームの兆しが出始めた2005年に自社ブランドの梅酒「鶴梅」を発売した。南高梅など和歌山産の果物を使ったリキュールシリーズとして人気商品となり、次いで2008年に日本酒の自社ブランド「紀土」を発売した。2016年にはクラフトビールの醸造も開始し、「平和クラフト」として販売している。

進化を続ける日本酒蔵として、日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクトを推進する平和不動産株式会社から声がかかり、出店が実現した。両社に資本関係はないが、街や日本酒業界に新風を吹き込む姿勢には共通する思いがある。また、同店が入る10階建ての「KITOKI(キトキ)」ビルは、鉄骨鉄筋コンクリート構造と耐火木造を組み合わせた日本初の木造ハイブリッド建築として、建築業界でも話題を呼んだ。同店の内外にも木が多用されており、ガラス張りで開放的な外観から、どぶろく目当てではなくとも、1度入ってみようかという気軽な来店も誘引している。

店舗規模は18坪で、椅子を配したカウンター15席と、3~4人で利用できる立ち飲みのハイテーブル4卓を装備している。平日は1日40~50人、土・日曜日は60人ほどが来店しており、男女比は6対4と、こうした業態としては女性比率が比較的高いのも特徴だ。また最近は外国人観光客の利用が増えており、約1割を占めている。

同店が日本酒の蔵元直営のどぶろくをメインとするブルワリーパブとして、幅広い客層から注目されている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 店内で醸造する新鮮などぶろくをメインに打ち出している。
  2. 自社ブランドの日本酒やクラフトビールも加えた醸造酒バーとして、利用動機を広げている。
  3. 街の再活性化プロジェクトの一環で開放的な店構えの店舗とし、気軽な入店を促している。

通常の営業のほか、他の飲食店とのコラボレーションで、その店舗のメニューを店内で提供してもらうフードイベントも月1~2回行っている。

「ここを中心に、平和酒造のお酒だけではなく、日本酒全体やどぶろくについてもっと知っていただけるような、情報発信センターとして機能させていきたいです」と、平和酒造総務企画部の手嶋光氏は述べている。

(Text and shop photo by Food Biz, )

平和どぶろく兜町醸造所
住所
東京都中央区日本橋兜町8-5 KITOKI 1F
TEL 03-6264-9457 
営業時間
13:00~22:30(土・日曜日・祝日12:00~、日曜日・祝日もしくは連休最終日~21:00。物販・フードLO.閉店30分前、ドリンクLO.閉店15分前)
定休日
無休
https://r.gnavi.co.jp/5ypzphtb0000/

■飲食店経営の明日をリードするオピニオン誌「Food Biz」

「Food Biz」の特徴
鍛えられた十分な取材力、現場を見抜く観察力、網羅的な情報力、変化を先取りする予見力、この4つの強みを生かして、外食業に起こっている変化の本質を摘出し、その未来を明確に指し示す“主張のある専門誌”です。表層的なトレンドではなく、外食業に起こっていることの本質を知りたい人にこそ購読をおすすめします。読みたい人に直接お届け!(書店では販売しておりません)

購読のお申し込みはこちら
年間定期購読: https://f-biz.com/nenkei/
単号購読: https://f-biz.com/tango/
詳しい内容は: https://f-biz.com/mag/

発行:株式会社エフビー
〒102-0071 東京都千代田区富士見2-6-10 三共富士見ビル302
HP https://f-biz.com/ TEL 03-3262-3522

飲食店の開業をお考えの方は「ぐるなび」にご相談ください!

「ぐるなび通信」の記事を読んでいただき、ありがとうございます。

「ぐるなび」の掲載は無料で始められ、集客・リピート促進はもちろん、顧客管理、エリアの情報提供、仕入れについてなど、飲食店のあらゆる課題解決をサポートしています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

▼詳細はこちらから
0円から始める集客アップ。ぐるなび掲載・ネット予約【ぐるなび掲載のご案内】