木更津で躍進するごはんクリエイト・野口氏の人と街を成長させる事業戦略とは?

千葉・木更津を拠点に3店舗を展開する株式会社ごはんクリエイトの代表取締役・野口利一氏。「若い人が集まり、育つ店」を目指して独立し、食育などにも尽力する彼に、料理人としての歩みと木更津の地で描く未来を聞いた。

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料理人、生産者、地元住民――“人に寄り添う”をテーマに店舗を展開

2013年オープンの「居酒屋ごくりっ」を筆頭に、木更津駅周辺に3店舗を展開。さらに各地の飲食店のメニュー開発や店舗経営のコンサルティング、地域での食育アドバイザーなど、多岐にわたる事業を展開する株式会社ごはんクリエイト。その根源にあるのは人とのつながりと、「木更津市を盛り上げたい」という地域への思いだ。

代表取締役社長の野口利一氏は、18歳からホテルや割烹料理屋、居酒屋などでの経験を積む中で「次代の料理人を育てることが大事」と感じ、後進の育成にも尽力してきた。人口減少、人材不足などさまざまな問題を抱える地方都市で、精力的に取り組みを続ける野口氏に話を聞いた。

目次
高校の先生にすすめられて飲食の道へ
過労でダウンし、飲食店の労働環境を考えるように
地元・木更津で「若手料理人を育てる店」をオープン
食育活動や地元の産物紹介にも尽力
3店舗目「舵輪」はPFI事業で出店
今後も“人に寄りそう店づくり”を
「リーダー×一問一答」&「COMPANY DATA」

――飲食業界に入るきっかけは何だったのでしょうか。

もともとは獣医になりたかったんです。でも、高校時代はぼやっとしていて勉強もせず、大学進学を先生に相談したら「もう今からじゃ無理だろう」と言われてしまいました。当時は就職氷河期で、就職も簡単ではない状況だったのですが、先生が「お前は手先が器用だから、料理だったらやれるんじゃないか?」と、ホテルを就職先として紹介してくれたんです。

ホテルの同期は、最初から包丁が使えるのはもちろん、調理師免許を持っている人も多く、僕とはスタート時点でのレベルが全然違いました。でも厨房で勉強するうちに、だんだんできるようになるのがうれしくて仕事が好きになり、休憩時間にオムレツの巻き方やピザ生地の作り方を教えてもらったりしました。2年間勤めた後は、寿司やふぐ、うなぎなどの和食店で修業を積みました。

1982年、千葉県木更津市生まれ。和食料理人の道に進み、ホテルや寿司店、ふぐ業態などで修業。25歳で居酒屋などを経営する外食企業に入社。2013年30歳で独立。同年「居酒屋ごくりっ」、2015年「洋食とワインの店ブッフルージュ」をオープン。2018年株式会社ごはんクリエイト設立。2022年Park-PFI事業で3店舗目となる「舵輪」をオープンした。

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――25歳で、居酒屋を運営する飲食企業に入社されたそうですね。

当時勤めていた店で、働きすぎてダウンし、一時休職していました。そんなときに先輩から紹介されて、千葉・茂原市の居酒屋で1年の期間限定でアルバイトを始めたんです。それまで自分がいた割烹や料亭とは全然違って、その居酒屋には若いアルバイトがたくさん集まっていました。「なぜ、こんなに若い人が集まるんだろう?」と思って、働きながらビジネスモデルを分析したんです。すると、アルコールでしっかり利益を生んで、それを給料として還元しており、若い人が意欲を持って働ける環境を作れていることが要因だと分かりました。

その後アルバイトから社員になり、翌年には総料理長を務めることに。仕入れから人の配置まで全部自分で携わるようになって、若い人たちに教えることも楽しかったです。生産性を高めるために社長にスチームコンベクションやブラストチラー(急速冷却器)、真空包装機を導入してもらい、労力を減らしながらもっとおいしくなる工夫をして、労働時間も短縮できました。このころには独立願望も強くなっていて、「若い料理人を育てる店を作りたい」と考えるようになっていました。

――30歳で独立して、故郷の木更津市で「居酒屋ごくりっ」をオープンされました。

地元を選んだのは、親もいるし、いずれ帰るから。当時、木更津にはほとんど店がなく、“死んだ街”としてニュースになるほど閑散としていました。でも、家賃が安いので損益分岐点を非常に低く設定できましたし、町の活性化になればという思いもあり出店を決めたんです。

こうして出した「居酒屋ごくりっ」は、当時(2013年)の木更津では珍しいカウンターメインの店舗で、日本酒にこだわり常時10本以上用意しました。「カウンターの店は木更津では流行らない」と周囲からは反対されましたが、“おいしい料理を作れる料理人がカウンター越しに接客したら強い”という読みが当たり、右肩上がりに売上が伸び、最高月商は600万円に達しました。「料理人の育成」というコンセプトもあり、独立志望の料理人にマンツーマンで料理や接客を教えていました。

2013年にオープンした創業店の「居酒屋ごくりっ」。木更津で珍しいカウンターメインの空間が受けて、最高月商600万円の人気店に

2年後、同じく木更津にオープンした2号店「ブッフルージュ」は、「ごくりっ」だけでは抱えきれなくなるほど増えたスタッフの働く場として、また生産者さんから紹介された地元食材をおいしく使わせていただく場として出店しました。こちらも“ワインが飲める洋食屋さん”という、まだ木更津にはなかった新しいコンセプトを掲げ、最高月商は900万円と好調です。

2号店の「ブッフルージュ」は、つながりのある生産者の食材を活用するために出店。こちらも最高月商900万円と好調だ

――店舗運営のほか、他店のプロデュースやメニュー開発、木更津市の食育活動などもされています。

経営者仲間のつながりで北海道から九州まで、各地の店舗のメニューやプロデュースに携わってきました。メニュー開発が一番多くて、累計50件くらい。料理人やスタッフを店舗で受け入れて教える人材育成もしていて、料理長を集めて「魚」「洋食」などのテーマで企業研修を行うこともあります。

高校時代の恩師の紹介で、木更津市の食育推進委員や、観光協会理事なども請け負っています。これについても根底にあるのは“若者を育てたい”という思い。学校で食育について話したり、地元の産物を紹介することで「農業にチャレンジしたい」「料理人になりたい」という子が出てきてくれたらうれしいです。

年に数回、学校などでの食育活動を行っている

――2022年には木更津市のPFI事業で「舵輪(だりん)」をオープンしました。その経緯は。

これまで経営者間のつながりで他の地域の町おこしにも携わったことがあるので、「木更津でも同じことをやりたい」と周囲に話していたら、ちょうど木更津市でPFI事業(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ=民間資金等活用事業)を募集していると教えてもらったんです。東京湾を一望する見晴らしのいい公園内の店舗で、“食”というテーマを与えられている場所なので、「まちの食の舵をとる」という思いから「舵輪」という店名にしました。市民や観光客の憩いの場になればと思い、“ハレとケ(非日常と日常)”がコンセプト。1階はカフェや食堂という“ケ”、2階ではウエディングやパーティー会場という“ハレ”の機能を備えていて、平日の客層は主に木更津市民、週末は約8割が市外の方々です。現在の月商は800~1,000万円で、10月の段階で12月は2階がほぼ貸切で埋まりました。

また「舵輪」には、ほかの店舗の生産性を高めるという役割もあります。セントラルキッチンとして、肉や魚などの加工をして「ごくりっ」と「ブッフルージュ」に納品するほか、他社からの委託商品の加工も行っており、重要な拠点となっています。

――今後の目標を教えてください。

木更津駅の西口駅前から「舵輪」がある鳥居崎海浜公園に至る大通り(富士見通り)は寂しい街並みなので、今後は大通り沿いに店舗をオープンして、街のインパクトを出せればいいなと思っています。かつては「ごくりっ」と「ブッフルージュ」がある東口側も、全然お店がなくて寂しかったのですが、「ごくりっ」のオープン後に多くの店ができました。西口にも盛り上がる力があるんだという空気を作っていきたいですね。

これまで出店した3店舗に共通しているのは、“人に寄り添う”ということです。料理人の育成、生産者とのつながり、地域の人たちとの交流。テーマはそれぞれ違いますが、これからも「人に寄り添う」という考え方を広げ、流れを作っていきたい。そしてうちから独立した子たちが各地で店を展開して、「あの町はなんだか明るい雰囲気だね」と言われるようになったらいいなと願っています。

店舗拡大が目的ではありませんが、会社として利益を追求しなければいけませんから、他店のメニュー開発やプロデュース、人材育成なども、今後さらに仕事の幅を広げたいと思っています。

リーダー×一問一答

■経営者として一番大切にしていること
街の資産になる店づくりを行い、携わる方々の利益になる仕組み作りと得た利益を街に投資できること。

■愛読の雑誌や書籍、Webサイト
飲食店痛快ゼミ、日本外食新聞、近代食堂、Instagram、Facebook、X(旧Twitter)

■日課、習慣
散歩、料理をすること、スタッフや生産者など周りの方々とお話しすること

■今一番興味があること
ごはんクリエイトの10年後

■座右の銘
変化と創造

■最近、注目している店舗・業態
「地方のホテルなどの再生事業」
機能の変更で、街にどんなインパクトがあるのか。日本のほとんどは地方であり、地方の生産力の向上が、求められていく中で各地域がどのような戦略なのか、非常に興味があります。

■COMPANY DATA
株式会社ごはんクリエイト
千葉県木更津市大和1丁目8番3号
https://www.gohancreate.co.jp/
設立:2016年
ブランド数・店舗数:3ブランド、3店舗
従業員数:社員11人 アルバイト30人

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