肉蕎麦トムラウシ 市ヶ谷本店
Key Point
- 北海道産の希少なそば粉を使った十割そばを提供
- 独自の肉つけそばを看板商品として訴求
- サービス面を重視し、居心地の良さで常連客を獲得
生パスタ専門店に続く、新業態としてそばに着目
北海道産のそば粉を使った十割そばを提供する東京・市ヶ谷の「肉蕎麦トムラウシ」は、昼は大盛り無料のそば類、夜は酒肴と酒類をそろえたそば居酒屋として、近隣のビジネスマンの支持を獲得している。
1番の人気商品は、店名にも冠している肉そばのひとつで、豚バラ肉を使い、自家製ラー油で辛味を加えた「豚辛汁つけそば」(950円)である。隠し味的に甘辛く煮た和牛そぼろが入っており、独特のうま味がプラスされている。特にランチタイムはオーダーの8割を占めているほどだ。
十割そばには、北海道中央部に位置する新得町のワカハラ農場で栽培されている「ぼたんそば」というそば粉を使い、押し出し式製麺機で製麺している。ぼたんそばは北海道で大正末期に選別された品種で、味も香りも強く、特有の甘みを持つが、栽培が難しく収量も少ないため、その後登場した「キタワセソバ」などの改良品種に置き換わっていった。現在は北海道のそば生産量のうち、わずか2%を占めるに過ぎないため、「幻のそば」とも呼ばれている。
経営元は株式会社trotto(代表取締役/大野木輝之氏)で、生パスタ専門店「パスターヴォラ」を都内で5店舗(田町、大手町、外苑前、日本橋、月島)を経営している。2本目の柱となる新業態の開発を考え始め、そば店はどうかと企画していた際に、パスターヴォラの常連客の新得町出身者から、新得町のそば農家を紹介できるという話が持ち込まれた。
大野木氏は2017年夏に初めて新得町を訪れて以来、ワカハラ農場をはじめとするそば農家や製粉業者との親交を深め、そば店出店の準備を進めていった。そんな折、大野木氏の高校時代の先輩から、「市ヶ谷で経営してきたカレー店を閉店するので、その物件を引き継いでもらえないか」という依頼があった。
そこで、そば店の1号店は市ヶ谷の細い路地沿いにある12坪18席の現物件を使うことに決め、2019年10月4日にオープンした。店名のトムラウシとは、北海道中央部の新得町と美瑛町の境に位置するトムラウシ山にちなんで名付けたものだ。
店内での居心地の良さを重視し、常連客を増やす
そば店の出店に際し、ベテランの調理人やそば職人を擁していない同社では、その中でも「おいしい」と評されるクオリティーの商品を、リーズナブルな価格で提供できるように、メニュー構成やオペレーションを工夫してきた。
そばそのもので勝負する手打ちそば店とも、早さと安さが身上の立ち食いそば店とも異なるスタンスで、お客様との会話や、店内で過ごす時間の心地よさを重視し、常連客を増やしてきているところに特徴がある。
「私たちには経験豊富なそば職人のような技術はないですけれど、なぜ北海道のそば粉なのか、ぼたんそばとはどういう品種か、といった会話をお客様としたら楽しいですし、そういう物語性を大切にしています」と、総務最高責任者の田島裕次氏は説明する。
大野木社長も田島氏も、以前は株式会社グローバルダイニングのイタリアン業態での店長経験者であり、店内でお客様に心地よく過ごしてもらえるようなサービスや接客を実践している。
とはいえ、1号店はオープン3カ月後の2020年の年明けから始まったコロナ禍で大きな影響を受けた。2020年4月の緊急事態宣言下では休業し、その後も営業時間の短縮やアルコール類の提供停止といった要請に従っての営業が続いた。ようやく当初目指したような形態で営業できるようになったのは2023年春ごろからである。
最近は、昼は客単価1,000円で1日平均65人、夜は客単価5,000円で20人ほどを集客し、着実に売上げを伸ばしてきている。同店が肉そばをメインとするそば店として、常連客を増やしている要因は、以下のようになるだろう。
- 北海道産の希少なそば粉を使った十割そばを提供している。
- 独自に工夫した肉つけそばを看板メニューとして打ち出している。
- サービス面も重視し、楽しさ、居心地の良さで常連客を獲得している。
2023年10月23日には、2号店の田町店を、JR田町駅近くに新築された高層ビル「田町タワー」の1階にオープンした。これは別業態の、パスターヴォラ田町本店が2010年12月の開業から変わらずに繁盛を続けているため、ビル側からの出店要請を受けたことがきっかけだった。また、戦略としても至近距離に同じパスタ業態を出店するよりも、そば店のほうがいいのではないかと判断した。田町店は25坪40席と、市ヶ谷本店の2倍ほどの規模になる。
「当社の直営店はパスターヴォラとトムラウシの2業態ですが、近年はコンサルティングや開業支援なども行っています。当社としての店舗展開ももちろん考えており、タイミングと機会が合えば出店を続けます。が、何年後に何店舗体制といった目標を立てて邁進するのではなく、自分たちの身の丈にあったタイミングと規模感で出していきたいですね。お客様もスタッフも取引業者も含めて人を大切にしたいので、今後も人とのつながりとモチベーションによって事業展開できたらと思います」と田島氏は語っている。
(Text and shop photo by Food Biz, )
住所
千代田区九段南4-6-6 佐藤ビル 1F
TEL 03-6265-6626
営業時間
11:00~15:00 (LO. 14:30)、16:00~22:00 (LO. 21:30)、土曜日・祝日11:00~21:00 (LO. 20:30)
定休日
日曜日
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