2024/08/06 繁盛の法則

「鬼貝(おうがい)エキュートエディション横浜店」個性的な貝出汁粥専門店と低価格居酒屋の複合店とは

JR横浜駅改札内の飲食店街「エキュートエディション横浜」内にある、「鬼貝(おうがい)」はお粥と低価格で楽しめる“せんべろ”居酒屋を融合させた新業態。立地柄、1人または少人数での短時間での利用が多く、客単価は終日トータルで1,200円だが、月商750万円を売り上げる。客層の男女比はほぼ半々であるがランチタイムは女性が6割、夜は男性が6割を占める。

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繁盛の法則 3カ条

  1. 貝類を加えただしで炊く個性的なお粥を開発
  2. 低価格居酒屋との複合店として営業
  3. 顧客アンケートで要望を収集し、改善に努める

フリーペーパーの制作からスタートし、飲食業に参入

4種の貝を使った個性的なだしで炊き上げたお粥と、低価格で楽しめる居酒屋を融合させた「鬼貝(おうがい)」が、JR横浜駅改札内の飲食店街「エキュートエディション横浜」内に2024年5月24日にオープンした。滋味深く、ヘルシーな「貝出汁粥(かいだしがゆ)セット」(880円)に加え、ボリュームたっぷりの「黒酢豚(くろすぶた)ステーキ」(1,100円)、ダイナミックな「半身揚げ油淋鶏(ユーリンチー)」(990円)などの料理もそろえている。

居酒屋としては、1,000円でべろべろに酔える低価格居酒屋の俗称「せんべろ」を標榜する。28坪の店内に15席ある立ち席では終日、19席の椅子席でも15~18時の間は「せんべろセット(コイン4枚)」(1,100円) の利用が可能である。

お客様はまずセットを購入し、ドリンクや料理の代金は指定枚数のコインで支払う。せんべろセットを1回購入すると、3つのサイコロを振るチンチロリンに1回チャレンジできる。3つ同じ目が出たらプラス3枚、4・5・6(シゴロ)が出たらプラス2枚、2つ同じ目が出たらコイン1枚を追加でもらえる。使い切れなかったコインは持ち帰り、次回の来店時もしくは系列店で使うことができる。

経営元は横浜・戸塚区に本社を置く株式会社ブロケードである。2010年8月に今野 健二 氏が設立し、地域情報のフリーペーパーの制作という広告事業からスタートした。その中で多種多様な飲食店とのつながりが生まれ、飲食業界の悩みや課題、改善点などを身近に感じるようになった。

今野社長は次第に、既成概念にとらわれずに、新たな形で個性的な飲食店を展開したいと考えるようになり、まずイクラ丼専門店「波の 自由が丘本店」を2016年12月にオープンした。続いて2017年12月に東京・原宿にサーモン丼専門店「熊だ」、2019年3月に横浜にせんべろ居酒屋「呑(の)りすけ」、2020年11月にポークステーキ専門店「マロリーポークステーキ 自由が丘店」を出店した。このマロリーポークステーキは、上質な豚肉を低温調理でじっくり芯まで火を通し、ツーオーダーからフライパンで表面を焼き上げるポークステーキの味わいと、200g~2kgまでの大きさを選べる豪快な商品構成から人気店となり、2024年7月現在で直営5店舗、FC5店舗の計10店を経営しており、同社の飲食事業の柱に成長している。

お粥のだしとともに酒肴にも貝類を活用

ランチタイムの人気商品「ランチ黒酢豚ステーキ 半貝出汁粥セット」(1,210円)。右が系列店のマロリーポークステーキを彷彿とさせる200gのボリュームのある酢豚風のポークステーキで、カリッとした衣と黒酢ソースで仕上げている。カナダ産の大麦仕上げ三元豚を使用し、低温調理で芯までじっくり火を通しているため、厚みがあっても柔らかく、ナイフですっと切れて食べやすい。貝出汁粥は、アサリ、シジミ、ホタテ、ムール貝の4種の貝と、昆布、丸鶏、日本酒を使った貝だしをいったん沸かしたところに、生米を加えて2~3時間炊く。米と貝出汁の比率は1対4。前日に炊き上げて冷蔵庫でひと晩寝かせることでうま味をしみ込ませ、再加温して提供する。1人前には300g、セットの場合の半貝出汁粥は200gを盛る

マロリーポークステーキに続く新業態として開発したのが、貝汁粥専門店の「鬼貝」であり、まず東京・新橋に2023年11月に1号店をオープンした。しかしながら、ビジネス立地のランチタイムはお粥専門店への需要はあまり高くなかったため、「鬼貝」はエキュートエディション横浜店に集中することにし、新橋店は2024年6月に豚肩ロース定食専門店「豚屋 鳥山」に業態転換した。

今野社長がお粥に注目したのは、横浜中華街のお粥の有名店に行った際、そのおいしさと繁盛ぶりに驚いたことがきっかけだった。将来的にラーメン店も手がけたいという思いがあり、だしやスープの研究を続けていることも後押しとなった。お粥を炊くだしにアサリ、シジミ、ホタテ、ムール貝という4種の貝類を加えて特徴を出すと同時に、居酒屋メニューとして「ムール貝の唐揚げ」「大和シジミの醤油漬け」(各1コイン)を提供し、素材を無駄なく使い切っている。酒類を楽しんだ後の一品として、胃にやさしい「〆の貝出汁粥[S]」(2コイン)があるのも強みとなっている。

お粥や一品料理などの通常の商品は、卓上に置かれたQRコードをスマートフォンで読み込み、オーダーするシステムを採用している。利用後は顧客アンケートを送信し、気になったことや要望などを書き込んでもらう。回答者にはワンドリンクをサービスするため、回答率は20~30%と高く、再来店にもつなげている。

同店がオリジナリティーのある貝出汁粥と、遊び心を加えた低価格居酒屋の複合店として、着実に認知度を上げている要因は以下のようになるだろう。

  1. 4種の貝類を加えただしで炊き上げる個性的なお粥を主力商品としている。
  2. ゲーム感覚を加えた低価格居酒屋との複合店としている。
  3. スマートフォンを使ったオーダーシステムと連動させた顧客アンケートで要望を収集し、改善に努めている。

エキュートエディション横浜は、コロナ禍の2020年8月にオープンし、現在の「鬼貝」の場所ではしばらくビアパブが営業していた。改札内にあるのでJR線の利用客は改札から出ずに利用できるが、「鬼貝」を目指して来店する場合は入場券を購入する必要がある。この立地特性から、1人または少人数での短時間での利用が多く、客単価は終日トータルで1,200円となっている。男女比はほぼ半々だが、ランチタイムは女性が6割、夜は逆に男性が6割を占め、2024年6月は実績で月商750万円を売り上げた。

「駅構内ならではの特性に合わせたメニュー内容や価格帯に調整し、まずは月商1,200万円、将来的には2,000万円を目標にしていきたいです。鬼貝という業態をここでしっかりと確立し、既存店のある自由が丘や横浜などのエリアに出店すれば、相乗効果も期待できるのではないかと思います」と、今野社長は期待を寄せている。


(Text and shop photo by Food Biz, )

鬼貝 エキュートエディション横浜店
住所
神奈川県横浜市西区高島2-16-1 JR横浜駅構内
TEL 045-577-9595
営業時間
11:00~23:00
定休日
無休(施設の休業日に準じる)

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