2024/11/06 繁盛の法則

「いわしや」(東京・青山一丁目)讃岐の流れをくむ、自家製麺の味わいで魅了するうどん店とは

地下鉄青山一丁目駅に直結する青山ビルヂングの飲食店フロアにある「いわしや 青山店」。讃岐うどんの流れをくむ、コシの強いうどん目当てに連日230~240人のお客様が訪れ、都心の老若男女を引き付けている。コロナ禍には、売上9割減という苦境を経験したが、2021年秋には売上水準を回復させ、以降3年以上、前年同月比100%超えという伸びを継続している。

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繁盛の法則 3カ条

  1. 2日間かけて製麺する、独自のうどんを提供
  2. イリコだしや天ぷらなど、うどんの引き立て役にも注力
  3. 一部セルフサービスを導入し、素早い利用を実現

香川で修業したうどん職人の指導を受けて、都心に出店

しっかりした噛み応えのあるコシの強さと、フワーッと広がる小麦粉の香りが特徴のうどんを目当てに、「いわしや」には連日230~240人のお客様が訪れている。地下鉄青山一丁目駅に直結する青山ビルヂング地下1階の飲食店フロアが全面改装された2018年9月に出店。コロナ禍では大打撃を受けたが、その後はコロナ禍前を大きく上回る成長に転じている。

本店は兵庫・西宮にあり、店主の征木 康宏(まさき やすひろ) 氏が脱サラから香川県でのうどん修業を経て、2006年4月に独立開業を果たした。中国自動車道西宮北インターチェンジのほど近くにあり、人気観光地の有馬温泉などへの行楽客にもよく知られた繁盛店である。青山店は征木氏の指導を受けて出店したのれん分け店で、ソルト・コンソーシアム株式会社が経営している。同社の井上 盛夫 代表取締役社長と征木氏が旧知の友人であり、「いわしや」を東京でも展開したいという、お互いの思いが一致して出店が実現した。

ソルト・コンソーシアムは2002年2月設立で、2024年10月現在で国内に多業態で計43店舗の飲食店を経営している。ほか、ソルトグループとして宿泊施設、商業施設、不動産などの企画・開発・運営、イベントやパーティーの企画など幅広い事業を手がけ、イギリスやモルディブなどへの海外進出も果たしている。この青山ビルヂング地下1階を統一感のある内装への全面改装を担当したのも同社で、フロア内の全7店舗のうち、「いわしや」のほか、グリル料理「The Burn(ザ・バーン)」、鶏だしおでん「かしみん」、お好み焼き・韓国風鉄板焼「ぎゅんた」の計4店舗を経営している。うどん店は今のところ「いわしや 青山店」1店舗だが、今後は国内での多店舗展開や海外への出店も目指していく。

コロナ禍を機に地道な認知度アップに努める

冷たいうどんに生玉子とネギをのせた「冷玉」(750円)は、卓上に用意されたしょうゆをかけ、よく混ぜ合わせて食べる。うどんの独特の歯ごたえと、麺そのものの風味を味わえる一品。麺は茹で上がりで260gを提供しており、ボリューム感もある。天ぷらは手前が「なす」(220円)、奥が「舞茸」(220円)。天ぷらは、ランチのピーク時以外はオーダーが入ってから揚げ、アツアツの状態で提供している

「いわしや 青山店」は27坪33席で、一部セルフサービスを取り入れている。お客様は入店するとまず商品を注文し、会計を済ませる。支払いは現金もしくは交通系ICのみとし、会計方法が煩雑になり過ぎないようにしている。番号のついたレシートが発行され、商品ができたら番号で呼び出されるので、お客様が受け取り口まで取りに行く。食後の下げ膳はホールスタッフが行う。以前はお客様に返却口まで運んでもらっていたが、商品の受け取り口と返却口が近く、繁忙時はお客様同士が密集してしまうので、スタッフが下げるように変更した。お客様は食べ終わったらすぐに退席できるようになり、客席の回転も速くなった。

うどんは生地作りに2日かけ、曜日や天候を考慮しながら仕込み量を調整する。そのため、予想以上の来客があってもすぐに追い打ちができるわけではなく、麺切れで閉店することになる。製麺の1日目に小麦粉と塩水を合わせ、しっかりと足踏みしてコシを強くする。その後、熟成庫に入れて丸2日寝かせる。塩分濃度や加水量はその日の天候によって微調整し、定休日である日曜日を挟む場合は熟成庫の温度を低めにするなど、安定した味のうどんを提供するために細心の注意を払っている。そこまで対応できるうどん職人を育成するには時間がかかるため、多店舗化を進めるには人材育成が大きな課題となっている。

だしは、讃岐うどんならではのイリコ(煮干し)をベースに、昆布や数種類の魚節を加えて、その日の麺の量に合わせて必要量を取っている。うどんメニューとしては、「ざる」(750円)、「釜あげ」(780円)、「ぶっかけ(温・冷)」(780円)、「冷玉」(750円)、「釜玉」(780円)、牛肉を使った「肉ぶっかけ(温・冷)」(1,000円)や「肉そば」(950円)、肉厚のワカメをたっぷりのせた「鳴門産生わかめ(温・冷)」(800円)などをそろえている。天かすとネギはセルフサービスで取り放題としているほか、追加トッピング(10品目、150~500円)、ピーク時以外は揚げたてを提供する天ぷら(13品目、180~340円)を用意している。客単価は1,050円になる。

讃岐うどんの流れをくむコシの強いうどんで、「いわしや」が都心の老若男女を引き付けている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 2日間かけて製麺する、独自の硬質なうどんを提供している。
  2. イリコ主体のだしや揚げたての天ぷらなどが、うどんの味わいを引き立てている。
  3. 一部セルフサービスを取り入れ、素早く利用できるように工夫している。

オープン1年後の2019年に入社し、その2カ月後から店長を務めている佐藤 信哉 氏は、翌2020年からのコロナ禍では上司のアドバイスを受けながら店舗の営業を極力続けた。店内の客席を43席から33席に減らしてアクリル板の仕切りを入れ、同時にテイクアウト、デリバリーでの販売を開始した。

さらに、近隣の企業へのあいさつ回りや周辺へのポスティングなどの地道な宣伝を行い、認知度を上げる努力を重ねた。2020年4~5月の最初の緊急事態宣言のときは売上9割減という苦境を経験したが、その後は次第に回復し、2021年秋には2019年の売上水準まで戻ってきた。コロナ禍中に認知度が上がった効果もあり、以降3年以上、前年同月比100%超えという伸びを継続している。

「以前は午後7時ごろまで営業していましたが、コロナ禍後はうどんが売り切れてしまう時間がどんどん早くなっています。麺だけではなく、うどんつゆ、トッピングや天ぷらの具材も用意しなくてはいけないので、今はその全体量を徐々に増やしている状況です」と、佐藤店長は確かな手応えを感じつつ、着実な成長を志向している。

(Text and shop photo by Food Biz,




いわしや 青山店
住所
東京都港区北青山1-2-3 青山ビルヂングB1F
TEL 03-6812-9822
営業時間
11:00~麺終了まで(16:00ごろまでに閉店することが多い)
土曜日 11:00~14:00 (麺終了まで)
定休日
日曜日・祝日
https://r.gnavi.co.jp/55ejtgkb0000/map/

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