気づかぬうちに法律違反している可能性も!?飲食店オーナー必読の商標・著作権
商標法や著作権法は、自分の店を守り、トラブルを防ぐためにも必ず知っておくべき法律です。特にやっておきたいのが、店名の商標登録。自分の店が出店した後に、同じ名前の店が出た際に、差止請求や損害賠償を請求するなど、自店の正当性を主張する材料になるからです。他にも店のロゴやメニュー、SNSに投稿した写真など、知らないうちに他店に不正使用されたり、逆に自分たちが不正をしてしまうなど、商標や著作権上のさまざまなリスクが潜んでいます。
商標法違反・著作権法違反は10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が課せられ、法人による著作権侵害の場合は3億円以下の罰金と定められています。違反による罰則や訴訟といったトラブルを避けるためにも知っておきたい商標登録や著作権に関する基礎知識について、自身も飲食店を経営し、飲食店の法律関係のトラブルに対応してきた弁護士法人フロンティア法律事務所の代表弁護士・黒嵜 隆(くろさき たかし)氏に解説していただきました。
目次
・店名の商標登録は必須!ロゴも要注意!?
・店内BGMなど音楽に関する著作権にも要注意!
・パブリックビューイングなど映像系の著作権
・キャラクター関連は販促物への手描きもNG!
・HPやSNS、ぐるなびなどネット上での著作権や肖像権も注意が必要!
・「配架雑誌」「レシピ」「ゲーム機」も著作権の対象に?
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店名の商標登録は必須!ロゴも要注意!?
――商標について、飲食店が知っておかないといけないことは何でしょう。
商標は、企業や店舗が他人(他社)と区別するために使用するネーミング(店名・メニュー名など)やロゴマークです。商標法は、この商標を保護する法律です。商標を登録することで、他人が無断で同じまたは類似の商標を使用することを防げます。
商標には法的に非常に強い効力があるので、店名は事前に必ず登録したほうがいいでしょう。「オープンしたばかりだから…」「小さな店だから…」と言っているうちに無断使用されるという被害に遭うかもしれません。店名とロゴマークをセットで登録することもできます。ご自身での申請に不安を感じる方は、弁護士事務所や弁理士事務所に相談してみてください。
逆に、自分で考えた店名やロゴが、実は他の店と同じ、または酷似していて損害賠償請求や差し止め請求を受けてしまう可能性もあります。店名やロゴを決める場合は、すでに同じ商標がないか、特許庁のサイトで事前によく確認することも大切です。
以前、「たこ焼○×」という名前で商標権を取得した店舗が、それより前から営業している「蛸焼○×」という、漢字は違うものの読みが同じ店舗を商標法違反で訴えた裁判がありました。他社が商標登録出願する前から同じ商標を使用している場合、「先使用権」が認められることがあるのですが、このケースでは認められずに裁判所は商標法違反の判断をして、「蛸焼○×」は店名を変更せざるをえなくなりました。
店内BGMなど音楽に関する著作権にも要注意!
――店内で流すBGMやカラオケ、生演奏など、音楽の著作権について教えてください。
許諾がいらない音楽の代表例は、自分で作った楽曲、著作権フリーの楽曲、著作権が切れている昔の楽曲(クラシック音楽など)です。ただし、著作権が切れていても近年新しく演奏された楽曲なら、著作権の一種である「演奏権」に抵触するので注意しましょう。また、リアルタイムで流れているラジオはOKですが、録音したラジオを店内で再生することは著作権法違反になります。
月額使用料を支払っている有線放送や、店舗BGMサービスには許諾はいりません。ただし、SpotifyやAppleMusicなど、個人利用を前提としたサブスクリプションの音楽サービスは商業利用が禁じられています。
日本音楽著作権協会(JASRAC)への申請が必要なのは、市販のCDやDVDの再生、カラオケ伴奏、生演奏を行う場合です。JASRACに支払う著作権使用料は、店舗面積が500平方メートル以内なら年額6,000円。複数店舗を経営している場合には店舗ごとの申請が必要になります。JASRACは覆面調査で店舗を見回ることがあり、小さな個店だからといって見逃されるわけではないので必ず申請を行いましょう。
著作権法違反が発覚した場合、民事調停を経て著作権使用料を支払うことになる事例が多くみられます。この場合、原則として過去分の使用料も含まれますので注意が必要です。長年違反を繰り返していて、何回注意しても改善しない悪質な経営者の場合は、刑事告訴にまで至るケースもまれにあります。
許諾が不要なもの | 自分で作った楽曲、著作権フリーの楽曲、著作権が切れてい る昔の楽曲(クラシック音楽)、有線放送、店舗BGMサー ビス、ラジオなど※録音して再生するのはNG |
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許諾が必要なもの | 個人購入したCD・DVD、オンラインで購入したデジタル楽 曲、サブスクサービスの楽曲、YouTube、カラオケの導入、 生演奏 |
パブリックビューイングなど映像系の著作権
――DVDやテレビ、動画など、映像関連の著作権はいかがでしょうか。
業務用DVDや法人向け動画配信サービスなど、店での放映を前提にしている映像はOKです。テレビは放送中の映像ならOKですが、録画した映像を流すのはNGです。YouTubeは権利元から許諾が得られればOKですが、そもそもアップロードされているのは誰かの楽曲を勝手に使用しているなど著作権侵害の動画が非常に多いため、店で放映するのはおすすめしません。
スポーツバーなどパブリックビューイングを売りにしている店や、観戦料が発生する店の場合は、放送事業者などにライセンス料を支払って許諾を得る必要があります。ただ、例えばサッカーのワールドカップ決勝当日などに、「当店で観戦できます」と店内常設の家庭用テレビでの観戦を宣伝する程度なら、通常営業の範囲内として許容されるでしょう。
許諾が不要なもの | テレビ(家庭用テレビで観戦料を取らず、リアルタイムで放 映する場合)、業務用DVDなど |
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許諾が必要なもの | テレビ(大型スクリーン or 観戦料あり or 録画映像の放 映)、YouTube、市販のDVDなど |
キャラクター関連は販促物への手描きもNG!
――キャラクターの著作権について、問題ないケースとNGのケースを教えてください。
有名なキャラクターが描かれた市販のポスターやカレンダーを壁に貼ったり、フィギュアやぬいぐるみなどのグッズを店内に飾ることは問題ありません。しかし、店名やメニュー名をキャラクターを想起させる名前にしたり、看板やメニュー、ポスターなどの販促物にキャラクターを表示するのは商標権や著作権法違反になります。
また、有名アニメのキャラクターなど、スタッフによる自作イラストを使用することも著作権法違反になるためNGです。キャラクタービジネスに重きを置く企業なら、かなり厳しい対応を取られることも予想されますので注意しましょう。
問題ないケース | 店内に市販のキャラクターグッズやポスターを飾る |
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問題になるケース | 有名キャラクターをモチーフにしたメニュー(名前や見た 目)・店名、スタッフの手書きイラスト、スタッフがキャラ クターのかっこうをするなど |
HPやSNS、ぐるなびなどネット上での著作権や肖像権も注意が必要!
――インターネットに掲載する情報で気をつけたいことはありますか?
基本的に、「世の中に出回っている写真や画像は誰かの著作物」だと考えましょう。他店やメニューなどの写真を掲載するのは、その写真撮影者の著作権を侵害することになり、NGです。また、ぐるなびなど特定の媒体の店舗ページ用に撮影した写真は、ほかの媒体に転載することはできません。テレビや雑誌、ネットメディアに自店が紹介された誌面や画面を掲載する際にも、事前に許可を取ることが必要です。
来店客の写真を勝手にSNSでアップするのは、肖像権違反になる可能性が高くNGです。アップする場合は許可をもらうか、特定できないように加工することが必要です。
「配架雑誌」「レシピ」「ゲーム機」も著作権の対象に?
――著作権法違反の可能性があるものについて伺います。雑誌やマンガ類を店内に置くことは大丈夫でしょうか。
原則として問題ありません。店外に持ち出さないので拡散性が低く、短時間での閲覧なので法的に許容されています。ただし、タブレットで読む電子書籍についてはあくまで個人利用を前提にした契約になっていることが多いため、サービスとしてタブレットを置く際には注意が必要です。
――他店のレシピを、自分の店で再現して名前を変えて提供するのはOKですか。
レシピは「作り方」なので、著作物ではありません。著作権が発生しないので大丈夫です。しかしレシピ本や雑誌は著作物になるので、レシピ部分を切り取って店舗に掲示したり、ホームページに掲載するのは明確に著作権違反であり、過去に裁判で違法だと判断されたケースがあります。
――それ以外に著作権法違反の可能性があるシチュエーションは。
2018年、ゲームソフトをプレイできる「ゲームバー」をうたう店舗で、経営者らが著作権法違反容疑で逮捕されました。ゲームの著作権保護団体からの度重なる警告を無視して客にゲームさせ続けていた悪質なケースですが、ゲームも映画と同様に著作権法で定められた「上映権」が適用されます。店にゲームを据え置く場合には、許諾を取ることが必要です。
これまでご紹介したように、飲食店が商標や著作権について知らないと思わぬトラブルや訴訟に巻き込まれたり、不利益をこうむることも少なくありません。開業時は特に商標や著作権関係の取り扱いに関する知識を深めて、さまざまなリスクに備えていただきたいです。
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