繁盛の法則 3カ条
- 人が集いたくなる、広々とした心地よい空間を創出
- 昼は午後の活力となるような定食を提供
- 夜は、酒類と創作和食が楽しめる居酒屋として営業
オフィス街での需要に合わせた業態として出店
昼は定食店、夜は居酒屋として気軽な利用を誘引し、2024年5月20日のオープン直後から地元の人気店となっているのが、東京・小川町の「LYFE (ライフ)酒と飯と」である。靖国通りから1本入った通りの角地にあり、39坪60席の規模がある。通りに面した2方向をガラス張りにすると同時に、木を多用し、客席間を広くとった店内は、開放的で心地よく、1人でもグループでも使いやすい造りになっている。
LYFEという店名は、生活という意味のLIFEを基に、1本道のようなIではなく、2本の道を1つにする場所という意味などを込めてYを使った。“酒と飯と”というサブタイトルにより、お酒も飲め、食事もできる、気さくな場所という特徴が表現されている。
ランチには、週替わりメニューも含めた定食5品目(1,100~1,850円)を、1日計100食限定で提供している。11時30分の開店から1時間半ほどで完売する日が多い。昼の客単価は1,300円。
夜は、創作和食の料理35~40品目と、約40品目をそろえた酒類が楽しめる。生ビールは、周辺の飲食店では扱いが少ないアサヒビールの「マルエフ」「マルエフ(黒)」(各690円)を選び、差別化アイテムとしている。夜の客単価は4,500円で、平日は平均60人、金曜日には120~150人が来店している。平均月商1,000万円を上げており、夜はドリンクの売上比率が6~6.5割を占めている。
配信頻度は、週1~2回ほど。ぐるなび通信の新記事や、旬な情報が通知されて便利です!ぜひご登録ください。
「ぐるなび通信デジタル」
ご登録はこちらから
アパレル企業、大手飲食企業での勤務経験を経て独立開業
経営は、2024年3月11日設立の株式会社十八(じゅうはち)商店で、代表取締役の井田 大輔 氏が創業し、得意とする芸や物事を意味する「十八番(おはこ)」から命名した。社員一人一人が得意なことを表現する場といった意味などを込めている。
井田氏は1983年、群馬・太田市生まれで、横浜の大学を卒業後、群馬・前橋市に本社を置くアパレル企業に入社した。2005年から9年半在籍し、マーチャンダイザーとして全国を回り、本部運営にも関わった。その後、ヘッドハンティングにより別のアパレル企業に移り、3年半勤務する中で、新ブランドの立ち上げなどを担当した。
この2社でさまざまな経験を積んだ後、井田氏はアパレル業界から離れて1年ほど全国を放浪し、その先の人生をどう歩んでいくかを考えた。その中で、鎌倉の海沿いにある材木座に1カ月ほど滞在したときに、このような場所でホテルを経営したいと思うようになった。とはいえ、資金もノウハウもなく、いきなりホテル経営は難しかったため、その足がかりとして某大手企業のロースタリーカフェでアルバイトとして働き始めた。
約1カ月後に経営元の社長が店舗巡回で訪れた際、20分ほど社長と立ち話をすることができ、自身の経歴や仕事への思いを熱く伝えた。その意気込みを買われ、翌日から社長室勤務を命じられた。大型レストランの運営や新店舗の立ち上げに携わるようになり、8カ月後には業績が低迷していた子会社の社長に抜擢された。井田氏はさまざまな施策を打ち出して翌年には黒字化に成功し、並行してレストラン事業にも関わりながら約7年勤務した。
しかしながら、コロナ禍により飲食業界が大打撃を受け、大手といえども組織の改編などが不可欠となった中で、井田氏は「今自分がやりたいことをやったほうがいい」と意を決し、2023年10月にその企業を辞め、独立開業に向けて動き出した。
物件を探す中で、候補地の1つが現在地の周辺だった。地下鉄小川町駅、淡路町駅、神保町駅、大手町駅などの真ん中に位置し、「ここに井戸端会議の井戸を作りたいと思ったのです」と井田氏は表現する。知人に「小川町辺りで物件を探している」と話すと、「1軒あるよ」と紹介されたのが現物件だった。
以前はコンビニエンスストアやマンションの展示室として使われていたスペースであり、飲食店用のガス設備の新設が必要で、39坪という規模は創業店舗としてはかなり広かった。しかし井田氏は、「コロナ禍によりコミュニティが狭くなってしまった中で、ゆとりのある空間で、温かく、手作りの料理をおいしく食べていただくという、本来あるべき飲食店の姿を実現したい」と、現物件での開業を決めた。
2024年2月に契約すると、店前の通行量に加え、周辺の飲食店、企業の詳細などを徹底的に調べ、こういう価格設定で、こういう業態だったら愛される店になるだろうと予測しながら、昼は食堂、夜は居酒屋という業態を選んだ。
初期投資を少しでも抑えるために、椅子以外のテーブルや内装は、井田氏が職人たちと一緒に手作りし、1カ月半で店舗を作り上げた。同時に、店前を通る人達にオープン告知のあいさつをしながら、名刺を計500枚配った。
その効果もあり、開業と共に多数のお客様が来店してくれるようになった。さらに、最近は当たり前のようになってきたタブレットやQRコードを使ったオーダーシステムは導入せず、ランチは来店客が注文用紙に鉛筆で食数を書いてスタッフに渡し、夜はスタッフが複写式の用紙に注文品を書き込むといったアナログに徹し、お客様とのコミュニケーションを重視している。
同店がビジネス立地で使い勝手が良く、ホッとできる憩いの場として支持されている要因は、以下のようになるだろう。
- 井戸端会議のように人が集いたくなる、広々と心地よい空間を創り出している。
- ランチタイムは午後の仕事の活力となるような定食を提供している。
- 夜は、酒類と共に創作和食が楽しめる居酒屋として営業している。
井田氏の元には早くも物件の紹介や出店依頼が舞い込むようになり、今後の展開に向けて動き出している。
「まず3店舗まではこの周辺にドミナントで出店し、地元での認知度を高めたいです。ただし、業態や店名、提供する商品は物件に合わせて決めていきます。また、会社創業から3年で年商5億円をひとつの指標とし、社員やアルバイトも含めた全員で達成していきたいと考えています」と井田氏は意欲を見せている。
(Text and shop photo by Food Biz, )
住所
東京都千代田区神田錦町2-4-1 ダヴィンチ小川町 1F
TEL 050-6866-0043
営業時間
11:30 ~100食売り切れまで(13:00頃に売り切れる日が多い)、17:45~23:00(金曜日~翌02:00)、土曜日15:00~23:00、日曜日・祝日12:00~20:00
定休日
無休(日曜日・祝日に休業する場合あり)
https://r.gnavi.co.jp/e5w7z2t30000/map/
■飲食店経営の明日をリードするオピニオン誌「Food Biz」
鍛えられた十分な取材力、現場を見抜く観察力、網羅的な情報力、変化を先取りする予見力、この4つの強みを生かして、外食業に起こっている変化の本質を摘出し、その未来を明確に指し示す“主張のある専門誌”です。表層的なトレンドではなく、外食業に起こっていることの本質を知りたい人にこそ購読をおすすめします。読みたい人に直接お届け!(書店では販売しておりません)
購読のお申し込みはこちら
年間定期購読: https://f-biz.com/nenkei/
単号購読: https://f-biz.com/tango/
詳しい内容は: https://f-biz.com/mag/
発行:株式会社エフビー
〒102-0071 東京都千代田区富士見2-6-10 三共富士見ビル302
HP https://f-biz.com/ TEL 03-3262-3522
資料請求・お問い合わせはお気軽にどうぞ
「ぐるなび通信」の記事を読んでいただき、ありがとうございます。
「ぐるなび」の掲載は無料で始められ、飲食店のあらゆる課題解決をサポートしています!