繁盛の法則 3カ条
- 干物製造をメインとする水産会社の直営店として出店
- 炭火で丁寧に焼き上げた干物を提供
- 「ミルキークイーン」を使ったご飯でも差別化
10年来の構想だった飲食店の出店を実現
静岡・伊東の水産会社の株式会社ケイポートが、自社製造の良質な干物を焼きたてで提供する定食店「魚恵(うおけい) 町田店」を、2023年1月21日にオープンした。JR町田駅から徒歩3分ほどの繁華街にあり、店舗規模は26坪24席。4人がけのテーブル2卓と、広めにとったカウンター席16席を配し、1人でも気軽に立ち寄れるような客席構成としている。
主力商品は「ひもの定食」(15品目/880~1,250円)で、ほか、西京漬けや塩麹漬けなどの「漬魚定食」(8品目/950~1,690円)、「煮魚定食」(4品目/990~1,890円)、「フライ定食」(3品目/1,150~1,390円)といった定食類をそろえている。オープンから午後2時までのランチタイムは定食のみを提供し、それ以降は一品料理やアルコール類も加え、居酒屋的な利用もできるようにしている。実際には、終日定食を目当てに来店するお客様が大半を占めており、夜も定食とともにビールやサワーを1杯オーダーするという利用が多い。客単価は昼1,200円、夜1,500円で、最近は平日で120~130人、土・日曜日は180~200人が来店しており、2023年末ごろからはずっと右肩上がりで客数、売上ともに伸びている。
ケイポートは1987年の設立で、干物を中心とする水産加工品の製造販売を行っている。伊豆近郊で水揚げされた地魚のほか、脂のりのいいノルウェー産のサバや、長崎産のアジなどを調達し、最新設備を駆使して干物などを製造している。魚の鮮度を損なわないように氷水で冷やした魚を素早く開き、魚のうま味を引き出す最低限の塩分を加え、コンピュータ制御による冷風乾燥機で、ほどよく乾燥させる。マイナス50℃まで冷える急速冷凍機で凍結させるが、保存料などの添加物は使用しないため、賞味期限は約1カ月と短い。
製造した干物は、伊東の直売所やECサイトで販売するほか、東京・神奈川を中心とする百貨店の催事にも販路を広げてきた。干物を提供する飲食店の出店は、創業者であり代表取締役の三谷 恵一 氏の10年来の構想だった。とはいえ、店舗での調理には熟練した調理人が必要であり、実現まで慎重に準備を進めた。干物を炭火で焼く専用機器との出合いや、煮魚は本社工場で加工して店舗に運ぶ体制が整ったことから、1号店の出店が具体化していった。
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炭火で焼き上げる干物と白飯のおいしさで人気を高める
出店場所は、三谷社長が高校時代まで過ごし、土地勘のある東京・町田市を選んだ。牛丼店の跡地である現物件をいったんスケルトンにし、落ち着いた和風の内外装に仕上げた。飲食店の開業・運営に長けたコンサルタントからのアドバイスを受けながら、効率的に稼働できる体制を整えていった。
「まさにゼロからのスタートでした。専用機械を使うとはいえ、炭火での干物の焼き方は難しく、魚の種類によっても違いがあります。オープン後の半年ほどは三谷社長も厨房に入り、一緒に試行錯誤しながら微調整していきました」と、小林 佑介 店長は振り返る。小林店長は他の飲食チェーンに10年ほど勤めていた経験があり、知人から「新店舗の店長候補を探している人がいるので、会ってみないか」と紹介され、オープンに合わせて入社することになった。業種は異なるが、小林店長はいずれは自身で飲食店を経営したいという思いがあり、そのために経営面全般を学びたいと、意欲的に取り組んでいる。
現在、魚を焼くのは小林店長と専門の社員で、それ以外の盛り付けや接客はパートスタッフが担当している。また、各席に配したタブレットを使ってのオーダーシステムや、お客様の入店時にはお茶とおしぼりを提供するが、お茶は2杯目以降からセルフサービスで取りに行ってもらうなど、時流に合わせた省力化も取り入れている。
定食において魚に勝るとも劣らない重要な存在といえば、ふっくらと炊き上げた白飯といえよう。こちらは三谷社長のこだわりで、もちもちした食感で評価が高い、ミルキークイーンを使用し、福島の生産農家から3日置きのペースで直送してもらっている。4升炊きの業務用ガス釜で1日3~4回炊飯するが、通常の水加減だと柔らかくなりやすいため、必ず炊き上がり具合を確認して調節している。特に新米となる10~12月は加水量をさらに減らすなど、細心の注意を払っている。定食ではご飯の量を小盛150g、並盛220g、大盛300gから選ぶことができ、価格は変わらないが、魚のおいしさとともにご飯が進むため、大盛の注文が6割を占め、以下、並盛が3割、小盛が1割となっている。
自社製造の干物を焼きたてで提供する定食店として、「魚恵」が右肩上がりの成長を続ける要因は、以下のようになるだろう。
- 干物製造をメインとする水産会社の直営1号店として運営されている。
- 炭火で丁寧に焼き上げた干物を提供している。
- 「ミルキークイーン」を使ったご飯のおいしさでも差別化している。
干物類は、伊東の加工工場から毎日配送している。1号店の好調さを見て、今後の多店舗展開も計画しているが、まずは配送の利便性や、食材および人員の融通を利かせやすいということなどを踏まえ、町田周辺への出店を優先していく考えだ。
(Text and shop photo by Food Biz, )
住所
東京都町田市原町田4-1-8 太陽ビル No.11 1F
TEL 042-851-8352
営業時間
11:00 ~22:00(LO.21:30)
定休日
無休(年末年始に休業日あり)
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