2025/06/05 繁盛の法則

「TOKYO エビフライ」 (東京・代々木)“ごちそう感”で勝負するエビフライ専門店とは

東京・代々木の「TOKYO エビフライ」は、9坪・14席ながら昼だけで1日80人近くを集客している。国産や海外産のエビを使い、3段階の温度で丁寧に揚げることで頭から尾まで食べられる。「エビフライ4種盛」が人気で、昼の客単価は2,100円。夜は特大エビや一品料理を提供し、客単価は4,500円に。駅近の居抜き物件を活用した低コスト開業、話題性ある業態で遠方からの来店も多く、ユニークなコンセプトに注目が集まっている。

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繁盛の法則 3カ条

  1. エビフライ専門店という明確なコンセプトを訴求
  2. 多様な産地のエビを3段階の温度で揚げて提供
  3. 居抜き物件を利用し初期投資を抑えて開業

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14席の店舗ながら、昼だけで80人近くを集客

“世界唯一のエビフライ専門店”として2025年2月20日にオープンした「TOKYO エビフライ」が、着実に認知度を上げている。9坪14席という小規模店ながら、初めて迎えたゴールデンウイークには、ランチだけで連日80人近くが来店していたほどだ。

使用するエビは国産のほか、世界各地から厳選して仕入れ、3槽のフライヤーを駆使して低温(155℃)、中温(170℃)、高温(200℃)と、徐々に高い油温で揚げていく。外側はカリッ、中はしっとりとした揚げ上がりとなり、有頭エビも頭から尻尾までおいしく食べられる。

メインのエビフライセットはスープ、ライス付きで、昼夜ともに「エビフライ2種盛」(1,520円)、「エビフライ3種盛」(1,850円)、「エビフライ4種盛」(2,070円)を設定している。エビフライは「プリッと有頭エビフライ」(クルマエビ科のエビ)、「しっとり有頭エビフライ」(天然赤エビ)、「希少 国産生エビフライ(小サイズ)」(広島・呉市産のくれぇ海老)、「海老メンチカツ」の4種から選ぶことができる。4種盛のオーダーが実に8割を占めており、「せっかく来たのだから、4種を食べ比べてみたい」という目的客の多さがうかがえる。昼の客単価は2,100円。

夜は、「桜エビ入りグリーンサラダ」(880円)、「プリプリ海老マヨ」(880円)など、エビフライ以外の一品料理や、長さ約35㎝の「『皇帝』海老の超特大エビフライ」(1尾4,840円)、「仏産   オマール海老のエビフライ」(7,480円)といったダイナミックなアイテムも加わる。夜はチャージとして300円が加算され、客単価は4,500円で、1日平均20~30人が来店している。

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洋食店を経営していた父親の背中を見て育つ

「エビフライ4種盛」(2,070円)のセットで、スープ、ライス付き。エビフライは上が「プリッと有頭エビフライ」、その下が「しっとり有頭エビフライ」、手前が「希少 国産生エビフライ」、左奥が「海老メンチカツ」で、その手前に小さな「焼き芋のフライ」(サツマイモ)を添えている。くれぇ海老の頭をオーブンで焼いて塩と合わせたエビ塩と、黒コショウを利かせたタルタルソースが、エビフライの味を引き立てる。奥のビスクスープは、オマールエビの頭をオーブンで焼いてから炒め、香味野菜などを加えて作る濃厚なクリームスープ

この個性的なエビフライ専門店をオープンし、小規模店ながらも調理を1人でこなしているのが、オーナーシェフの楡木 謙司(にれき けんじ)氏である。楡木氏は1982年横浜生まれで、小学校卒業と同時に東京・狛江市に移った。自宅から徒歩数分の場所で父親が洋食店を経営しており、ハンバーグ定食、カキフライ定食などの定食類が人気の地元で愛される店だった。

料理人としての父親の背中を見て育った楡木氏は、中でも父親が作るエビフライが大好きで、子どもながらにエビフライ独特の豪華さやぜいたくなイメージに魅了されていた。中学、高校時代は皿洗いなどでお店の手伝いをすることもあったが、父親の「息子には厳しくできない」という思いを受け、独自に料理の道を目指すことになった。

楡木氏は高校卒業後、町田調理師専門学校に進み、修了後は池袋の大型ホテルに就職して10年間勤務し、レストラン、宴会、バイキングなど、ひと通りのポジションを経験した。その後、新興の焼き肉食べ放題店の1号店に転職し、店長を経験しながら8年ほど勤め、20店舗ほどに成長していく過程を間近に体験することができた。

いずれは父親のように個人で独立開業したい、エビを使った専門店をやりたいとずっと考えていた楡木氏は、コロナ禍が収まってきた頃から本格的に準備を開始した。都内にも数店舗あるエビ料理店よりも、さらにインパクトの強いエビフライ専門店を目指すことにし、提供する料理を具体化しながら、物件も探し始めた。当初は新宿や渋谷周辺の繁華街を希望していたが、路面店となると家賃が高額になるため、少しずつ候補のエリアを広げていった。

2024年9月に焼肉チェーンを辞め、同年の年末に現物件を見つけた。JR代々木駅から徒歩30秒、ビルの2階にあるバーの居抜きで、テーブル8席、カウンター6席の客席は、元の造作のままのハイテーブル、ハイチェアを使っている。テーブルトップが小さめなので、その上に並ぶサイズのシンプルな食器類をそろえた。

厨房も約1.5坪と狭小だが、そこにフライヤーを3槽設置し、温度別に管理している。3段階の油温で揚げるという方法は楡木氏が独自に考え出したものだが、1つのフライヤーで1回に揚げられるのは最多で4尾まで。また、入れた直後は油温が下がるため、エビの様子を見ながら時間を調整し、ベストな状態となるようにつきっきりで揚げている。

オープン後1カ月ほどは、1日の客数が10~20人という日々が続き、少々焦りも感じたという楡木氏だが、3月中旬から新聞、テレビなどの取材が相次ぎ、次第に客数が増え始めた。ユニークなコンセプトが注目され、遠方からのお客様が多いのも特徴だ。

同店が創業後数カ月で、他店にはない魅力を発揮している要因は、以下のようになるだろう。

  1. エビフライ専門店という、インパクトの強いコンセプトを打ち出している。
  2. 多様な産地から仕入れた良質なエビを、独自に考案した3段階の温度帯で揚げる方法により、食感、食味を高めている。
  3. 駅から近い繁華街だが、ビルの2階の居抜き物件を使い、初期投資を抑えて個人での開業を実現している。

「オープンして意外だったのは、40~60代のお客様が多いことで、エビフライにぜいたく感を感じるのはその年代なのかなと思います。女性が7割を占めますが、年配の男性が1人で来店されることも多く、またわざわざ新幹線に乗って来られる方もいます」と楡木氏は述べる。

なお、楡木氏の父親は狛江の洋食店を2019年に閉店して茨城に移住し、ゆったりとした生活を送っているが、同店にすでに数回来店し、食事を楽しみながら温かく見守ってくれている。

「今は来客が集中する時間帯は手いっぱいになってしまうのですが、一つ一つきちんとした商品を提供する内部的な態勢を整えたいですね。また、夜の集客力も高めていきたいです」と、楡木氏はいい手応えを感じながらも、冷静に課題を分析し、「“エビフライ”といったら、ここ」といわれるくらいの存在を目指している。

(Text and shop photo by Food Biz,


TOKYO エビフライ
住所
東京都渋谷区代々木1-32-10 代々木ラックビル 2F
TEL 03-6383-3841
営業時間
11:30 ~14:30(LO.14:00)、17:00 ~22:00(LO.21:30)
定休日
月曜日
https://r.gnavi.co.jp/d4bj6sms0000/map/
https://www.instagram.com/tokyo_ebihurai/


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