2025/07/08 繁盛の法則

「CHIKYUMASALA」(東京・新宿三丁目)多様なスパイス料理をアレンジした独創的なカレー専門店とは

東京・新宿の地下鉄「新宿三丁目駅」至近のビルの2階にひっそりと佇む「CHIKYUMASALA(チキュウマサラ)」。コロナ禍に誕生した5坪6席の小規模店は、世界各国のスパイス料理をアレンジした独創的なカレーが売りで、カレーファンの“聖地”のような存在になっている。客単価は2,100円とやや高めだが、女性を中心に「ここでしか味わえない特別なカレー」を求める人々が訪れる。

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繁盛の法則 3カ条

  1. 世界各国のスパイス料理を基に独特なカレーを開発
  2. 元スナックの物件を使った店舗が不思議な雰囲気を強調
  3. 特別感や希少性が集客に貢献

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コロナ禍に登場した小規模店が、カレーファンの“聖地”に発展

レバノン風キーマカレー、ローマ風ラッサムスープなど、世界各地のスパイス料理を独自にアレンジし、カラフルに盛りつけたカレープレートの美しさ、楽しさ、おいしさでカレーファンを魅了しているのが、東京・新宿三丁目の「CHIKYUMASALA(チキュウマサラ)」である。ビルの2階、間口の狭いスナックが並ぶ一角にあり、店舗規模はわずか5坪6席。この謎めいた雰囲気も持ち味の一つで、カレー好きなら1度は訪ねてみたいと思う、いわば“聖地”のような存在になっている。

オープンは2020年6月で、新型コロナウイルス感染症が急拡大し、最初の緊急事態宣言が発令された期間の直後だった。コロナ禍では飲食店の夜間の営業に自粛要請が長く続いたことから、同店でも2024年6月までの4年間は昼のみの営業としていたため、さらにその希少性が高まった。

2025年6月から、常時用意するカレーが1種増えて3種になり、「カレー3種」(2,500円)、「カレー2種」(カレーの組み合わせにより2,000円または1,800円)、「カレー1種」(1,700円または1,500円)から選べる。プレート上にはサラダ、マンゴーチャツネ、ピクルス、燻製卵、プリザーブドレモンをのせたターメリックライスなどが盛り合わされるので、彩りも美しく、豪華な印象を与える。「せっかくここに来たのだから、いろいろなカレーを食べてみたい」というお客様が多く、導入早々にカレー3種が好評で、3種、2種、1種がそれぞれオーダーの3分の1ずつを占めている。客単価もやや上がって2,100円となっている。

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飲食ベンチャーの2業態目として苦肉の策により誕生

2025年6月から提供を開始した「カレー3種」(2,500円)。プレートの中央が国産米とパキスタンまたはインド産のバスマティライスをブレンドして炊いたターメリックライス(180g)で、上に酸味の強いプリザーブドレモンをのせている。奥中央の容器入りが「チポトレソイミートカレー」で、大豆ミート、燻製トウガラシ、ダークチョコレートを使ったベジタリアン用カレー。以降、時計回りにサラダ、タンドリーチキン入りの「プッタネスカ風バターチキン」、燻製卵、焼きナス入りフムス(ヒヨコ豆のペースト)の上に、和風だしを使ったキーマカレーをのせた「レバノン風キーマカレー」、小タマネギのピクルス、サツマイモとビーツのペースト、マンゴーチャツネ。右上の容器に酸味を効かせた「ローマ風ラッサムスープ」が入っている

経営元は、2016年11月設立の株式会社ERGである。代表取締役社長の佐々木 威人(たけひと)氏は、美容医療分野のビジネスを手がけて15年ほど経ったところで、新たに食に関するスタートアップを作りたいと同社を設立した。東京・浅草の元純喫茶だった物件と出合い、和食と朝食をテーマにしようと方向性を決め、中でも脇役的な存在でありながら、実は世界に発信していける大きな可能性があるのではないかと、“みそ汁”に着目した。料理人やクリエイターを紹介してもらってプロジェクトチームを作り、1号店である創作みそ汁とおにぎりの専門店「MISOJYU(ミソジュウ)」を2018年6月に出店した。

ところが2020年初頭から始まったコロナ禍で、飲食業界は大打撃を受けた。「MISOJYU」の開発に関わった1人で、料理人、写真家、ミュージシャン、編集者など多彩な経歴を持つエドワード・ヘイムス氏も苦境に立たされ、自身がプロデュースした神奈川・鵠沼(くげぬま)海岸のカフェが閉店に追い込まれた。同様に、佐々木社長が社員の福利厚生のために新宿三丁目に設け、4年ほど運営していた社員用スナックも継続が困難になった。そこで、鵠沼海岸のカフェで人気のあったカレーを、スナックの場所を使って昼間だけ提供してはどうかという、いわば苦肉の策で誕生したのが「CHIKYUMASALA」だった。

「エドワードのスパイスに対する強いこだわりとおもしろさがあるので、ランチに満足感のある何か特別なメニューとして、スパイスカレーだけに絞ってやってみようか、という経緯でした」と佐々木社長は説明する。

開業後4年ほどは、エドワード氏の指導を受けた女性スタッフが店内でカレーを作り、昼だけ営業するという体制だった。コロナ禍という状況の中で心がけたことを、佐々木社長はこう振り返る。

「メニュー構成をできるだけシンプルにし、他で真似ができない商品づくりにこだわってきました。カレーも当初は5~6種類あったのですけれど、あえて減らし、その代わり日替わりや季節商品などで、お客様を飽きさせないようにしました。“ここでしか食べられない特別なカレー”として、強い印象を与えたかったのです」。その戦略がカレーファンを惹きつける一因ともなっていった。

また、「MISOJYU」もコロナ禍で店舗の営業が難しかった時期に、「CHIKYUMASALA」の近くにセントラルキッチンを設け、そこから商品をデリバリーするという販売方法を導入した。現在はそのセントラルキッチンで、CHIKYUMASALA用のカレーの仕込み作業も行うようになり、夜の営業も開始した。このオペレーションの強化を担当し、現在、「CHIKYUMASALA」の店長を務めているのが、2024年2月に入社した小山 朝之(おやま ともゆき)氏である。小山氏はイタリアンのシェフとして外資系レストランに勤務していた経験があり、海外赴任の話が決まっていたが、コロナ禍により白紙になってしまったため、知人の紹介で入社し、セントラルキッチンの統括を担うことになった。「CHIKYUMASALA」に関しては、エドワード氏が考案する新作カレーを、実際のオペレーションに落とし込む作業も小山店長が担当するようになり、さらには店内での営業にも加わって2人体制にし、お客様と会話する機会も増やしてきた。

同店が独創的なカレーでファンを魅了している要因は、以下のようになるだろう。

  1. 世界各国のスパイス料理をアレンジした独特なカレーを提供している。
  2. スナックだった物件を有効活用しての出店が、謎めいた雰囲気を強調している。
  3. 特別感や希少性が集客を後押ししている。

現在の客数は、昼夜合わせて平日で平均50人、週末は75人ほどで、女性が約6割を占めている。

「ここにしかない魅力的な商品だと思いますので、イベントへの出店や、商材開発、また店舗の拡大なども含め、より多くの方たちに食べていただけるようにしていきたいです」と、小山店長は今後のさまざまな展開の可能性を探っていく考えだ。

(Text and shop photo by Food Biz,


CHIKYUMASALA(チキュウマサラ)
住所
東京都新宿区新宿3-11-12 永谷テイクエイト207
営業時間
11:30 ~15:30(LO.15:00)、17:30 ~21:30(LO.20:30)
定休日
月曜・日曜日

https://www.instagram.com/chikyumasala/

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