2025/08/04 繁盛の法則

「御苑茶屋ZUZU」(東京・新宿御苑前)一個炊きの釜めしを“お茶漬け”にして締める「釜めし茶漬け専門店」とは

東京・新宿御苑に隣接する「御苑茶屋ZUZU 新宿御苑前店」は、釜めしを主軸に集客する繁盛店。金芽米と特製だし汁の釜めしを「釜めし茶漬け」として楽しませ、女性客や訪日外国人を惹きつけている。昼は1,800円、夜は2,400円の客単価で、花見シーズンにはランチだけで100人以上を集客する。10坪20席と小規模ながら、立地と独自の商品展開で成功を収めており、新たな出店計画も進行中。

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繁盛の法則 3カ条

  1. 米も具材もだしも吟味した釜めしを提供
  2. 薬味で味を変え、だし茶漬けで締める楽しみ方を提案
  3. 新宿御苑の前で国内外からの来園者を誘引

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花見シーズンなどには、昼だけで100人以上を集客

環境省が管理する国民公園の一つ、新宿御苑の目の前にある「御苑茶屋ZUZU 新宿御苑前店」は、釜めしを主力商品に、来園者をはじめ近隣の住民やオフィスワーカーを惹きつけている。

一個炊きの釜めし専用ガスコンロを導入して炊きたての釜めしを提供。まずはそのまま、次に薬味類を加えて風味を変え、最後にだしをかけてお茶漬けにする「釜めし茶漬け」という楽しみ方の提案もユニークだ。

“釜めし”という、ごちそう感のあるアイテムに、名古屋名物の「うなぎのひつまぶし」をほうふつとさせるアレンジを加えることで、独自性を発揮している。

オープンは、まだコロナ禍の影響が大きかった2022年5月で、新宿御苑の大木戸門の真向かいのビルの1階、カフェの跡地に出店した。

店舗規模は10坪20席で、三角形に近い変形のスペースだが、過ごしやすい季節は新宿御苑側の扉を開け、縁側のような使い方もできる。和食ということで訪日外国人にも注目されており、特に桜の開花シーズンには、来店客の5割ほどを外国人が占めている。

釜めしに使うのは、山形産「つや姫」の金芽米である。金芽米とは、特別な精米方法により玄米の表面から少しずつヌカを取り除いていくことで、ヌカ層とデンプン層の間にある「亜糊粉層(あこふんそう)」を残したものだ。

亜湖粉層には上質な甘味やうま味の元になる酵素が含まれているが、通常の精米方法ではヌカと一緒に除去されてしまい、さらに水洗いすると流れてしまう。そのため、金芽米に精米した後で無洗米仕上げにしている。店ではこの金芽米を1時間以上浸漬し、十分に水分を吸収した米150gずつを、釜めし用の内釜に入れ、冷蔵庫に入れてスタンバイしている。

釜めしを炊くとき、およびだし茶漬けにするときに使うだしは、北海道・日高産の昆布をひと晩水に浸けておき、翌日に火にかけ、築地のかつお節削りの老舗「和田久」製の削り節を加えて取っている。炊飯用の「飯地」も、お茶漬け用のだしも同じものを使うが、ともにしょう油と日本酒で調味する際の配合を変えている。この飯地により、釜めしを炊き上げた際にほどよく香ばしいお焦げができるのも楽しみの一つである。

釜めしに加える具材は、全国各地の食材を吟味して仕入れており、季節メニューも随時登場する。ランチタイムは釜めし茶漬け定食各種(1,430円~)をメインに営業し、定食には小鉢2種、薬味3種、みそ汁と、ランチタイムサービスでミニわらび餅が付く。

1番の人気商品は「紅鮭とイクラの親子釜めし茶漬け」(1,780円)で、脂の乗った紅鮭の塩焼きとイクラをたっぷりと乗せている。次いでさっぱりした風味の「柚子香る真鯛の釜めし茶漬け」(1,650円)も良く出ている。また、具材を炊き込んだ釜めしのほか、つや姫のみを白飯として釜炊きにした「金芽米『つや姫』釜炊きご飯定食」(メインのおかずは紅鮭塩焼き、鶏もも肉から選択、各1,300円)も用意しており、オーダーの1割弱を占める根強い支持を得ている。

昼の客単価は1,800円で、通常期の平日のランチタイムは平均40人ほどを集客しているが、花見シーズンの土・日曜日、祝日ともなると100人以上が来店する日も多く、女性客が約6割を占めている。夜は、近隣住民を中心に平均約20人を誘引している。アルコール類や一品料理もそろえているが、釜めしでの食事目的の来店が多く、夜の客単価は2,400円となっている。

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コロナ禍に出た好立地の物件を使って2店目を出店

人気ナンバーワン商品の「紅鮭とイクラの親子釜めし茶漬け」(1,780円)。山形産「つや姫」の金芽米を使い、脂の乗った紅鮭の塩焼きとイクラを乗せた釜めしを、まずはそのまま、次に薬味を加えて風味を変え、最後にだし茶漬けする楽しみ方を提案している。釜めしの手前の薬味は、左から刻みノリ、かつお節と昆布のつくだ煮、西洋ワサビと和ワサビを混ぜて食感にアクセントをつけたワサビ。その右が小鉢で、キンピラゴボウとカブのユズ漬け。その奥がアオサのみそ汁と、ランチタイムサービスのミニわらび餅。釜めしは大盛りにできないので、「飯地」で釜炊きにしたご飯を「追いめし」として100g150円(ランチタイムは1杯無料)で提供している

経営元は株式会社FFで、同店のほか、新宿・歌舞伎町で「お茶漬けバーZUZU」を経営している。「お茶漬けバーZUZU」は2002年12月のオープンで、当初は入居しているビルの所有者である有限会社エバーグリーンの直営店だった。諸事情により、初代店長を務め、いったんは離れていた松山 清明 氏が2013年5月から経営を引き継ぎ、2020年1月に株式会社FFを設立して法人での経営に切り替えた。

その直後から始まったコロナ禍により、バー業態は大きな打撃を受けたが、逆に新宿御苑の目の前という好物件と出合い、2号店の出店に踏み切った。開業当初はデリバリーやテイクアウトにも力を入れ、助成金を活用してホットドッグの販売を手がけるなど、さまざまな工夫をしながら軌道にのせていった。

同店が釜めし茶漬けという独特の業態を成功させている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 米も具材もだしも吟味した、一個炊きの釜めしを提供している。
  2. 薬味により風味を変え、最後はお茶漬けで締めるという、釜めしの楽しみ方を提案している。
  3. 新宿御苑の真ん前という立地で、和の業態の強さを活かし、国内外からの来園者を惹きつけている。

「釜めしというと、時間がかかるというイメージがあるかもしれませんが、厨房機器も進化しており、ここでは12分で炊き上がります。ウエイティングができているときは、待っている間にオーダーを取って炊き始め、席が空いたらすぐに釜めしを提供できるようにしています」と、統括マネージャーの髙村 優貴 氏は説明する。

リピーターの中には、事前に予約してから来店するお客様も増えており、また混雑時は利用時間1時間制に協力してもらっている。釜めし、お茶漬けのノウハウを着実に蓄積してきた同社では、2025年後半もしくは2026年には次の出店を実現すべく、着々と準備を進めている。

(Text and shop photo by Food Biz,


御苑茶屋ZUZU 新宿御苑前店
住所
東京都新宿区新宿1-1-1 ワコー御苑ビル102
営業時間
11:30~15:30 (LO. 14:45)、17:30~21:00 (LO. 20:15)
土曜日 11:00~21:00(LO. 20:15)
日曜日・祝日 11:00~20:30(LO. 19:45)
定休日
月曜日(祝日の場合は翌火曜日休。桜と紅葉時期の新宿御苑特別開園期間は月曜日も営業)
火曜日夜
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