2025/10/01 繁盛の法則

八丁堀「ピラミッド」独自開発の「ドイツビールカレー」で集客力を上げリピーターを増やす経営術

西洋料理の技法を生かせる欧風カレーをベースに、独自のアイデアでドイツビールを加えてコクと特徴を出した、八丁堀「ピラミッド」の「ドイツビールカレー」。周辺ビジネス街の客層をつかみ、昼の客単価1,400円だが、夜は本格ドイツ料理とドイツビールをじっくり楽しめる宴会利用の場合、客単価は6,000円になる。オーナーが貫く「進化し続ける商品力」と、広告宣伝なしで集客を続けるための具体的な経営ノウハウを紹介。

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繁盛の法則 3カ条

  1. ドイツ料理とドイツビールで特徴を出す
  2. 独特のドイツビールカレーの商品力で勝負している
  3. 商品も店舗も常に進化させている

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ドイツビールカレーを独自に開発して独立開業

ミステリアスな店名もさることながら、ドイツビールとドイツ料理、さらにはドイツビールカレ―というオリジナリティーの高い料理でその存在感を示しているのが、東京・八丁堀の「ピラミッド」である。2010年7月~2022年2月まで東京・築地で営業し、2022年3月に現在地に移転した。

オーナーシェフの山本 扶桑(ふそう) 氏は、1978年三重・四日市市生まれで、高校時代に地元の洋食店で皿洗いのアルバイトを経験し、オーナーやシェフたちに優しく接してもらったことから、飲食店で働く楽しさを実感した。大学進学を機に東京に移り、在学中も卒業後もフレンチ、イタリアンなどのレストランでの勤務を続け、当初はホールスタッフだったが、その後キッチンに入って料理を学んだ。

独立直前の2008年からの2年間は、縁あって東京・有楽町のドイツ居酒屋「JSレネップ」の料理長を務めた。その際、日本ではイタリアンほど一般的ではないドイツ料理や、多様なドイツビールと出合い、独立する際はドイツ料理をテーマにしようと考えた。

また、それまで西洋料理の修業を積んできた山本氏は、その技法を生かしながら、日本人には親しみやすい欧風カレーをメインに打ち出すことにした。当時はまだ築地に東京中央卸売市場があり、“食”をイメージしやすいエリアとして出店場所は築地を狙い、ビルの地階、15坪26席の居抜き物件で開業した。「ピラミッド」という店名は、覚えやすく、ミステリアスだが怪しげではないことと、その由来を巡ってお客様との会話のきっかけになればという、仕掛けを込めて名付けたものだ。

昼は欧風カレー、夜はドイツ料理とドイツビールという商品構成を決めた山本氏は、カレーと夜の商品との関連性を持たせる意味も含め、独自にドイツビールカレーを創り出した。「ドイツ産の樽生ビールを加えてコクを出していますが、これは私が作ったオリジナルのカレーなので、ドイツにもヨーロッパにもありません」と山本氏は説明する。

最初に小麦粉とラードをじっくり加熱してカレールーを作っていく欧風カレーの技法を基に、香味野菜、果物、ドイツビールなど、多彩な食材を使いこなしている。スパイス類のベースとしてS&Bの赤缶や、うなぎの蒲焼きのタレといった、日本人ならではの発想で加えている素材もある。

具材の牛肉や鶏肉は、それぞれスパイス類を加えて別々に煮込み、肉とその煮汁とカレールーを合わせて完成させている。豚挽肉を使う辛口のキーマカレーは、豚挽肉とスパイスを炒め、カレールーを加えて仕上げる。材料も作り方もかなり複雑で、さらに頻繁に改良を重ねている。

提供時には西洋料理ふうの演出を付加して、ライスとカレーは別盛りにし、ライスの上にはマッシュポテトをのせ、生クリームを添えて「味変」を楽しめるようにしている。

広告宣伝は一切せず、じっくりと口コミで顧客を増やしていくのが山本氏の開業以来のスタンス。創業店舗は地階というハンディはあったものの、ここにしかない奥深い味わいのカレーの店として認知されるようになっていった。

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コロナ禍後に好機とみて、店舗移転を敢行

手前がドイツビールカレーの中でも1番の人気商品「ご褒美ビーフカレー」(1,650円)。繊維の細かい希少部位のミスジを柔らかく煮込んだ、約60gの大きな塊肉が3個入っており、圧倒的なボリュームとごちそう感がある。ライスは普通盛りで220gで、上にマッシュポテト40gをのせている。トッピングのひとつの「ザワークラウト」(220円)は、ドイツ風キャベツの酢漬けで、心地よい酸味がカレーとよく合う。別添えの生クリームを途中でかけるとまろやかさが加わり、「味変」を楽しめる。平日のランチタイムは、220円以下のトッピング、ドリンク、ライスやルーの大盛などのどれか1品をサービスで提供しており、週に数回来店するリピーターは、その日の気分によっていろいろな組合せを楽しんでいる。ドイツビールは、樽生1種のほか、ボトルビール5種、ノンアルコールビール1種をそろえている

しかしながら、2020年からのコロナ禍の影響は甚大だった。山本氏は時短営業やアルコール類の提供自粛など、感染拡大防止のための要請は遵守しつつも、アルバイトスタッフの雇用を守るために休業はしなかった。それまでは日々の営業に追われていた山本氏だが、思いがけず立ち止まる時間ができたことから、商品構成の見直しや、各商品のさらなるブラッシュアップに努めた。

その中で浮上してきたのが、10年以上使用してきた店舗の老朽化だった。都心でもコロナ禍により閉店を余儀なくされた飲食店が多く、物件に動きが出てきたため、山本氏は移転を考え始めた。さすがに築地周辺では空き物件はほとんどなかったが、地下鉄で1駅先の八丁堀は、周辺のオフィスのリモートワークの影響も大きく、撤退した飲食店の跡地がいくつかあった。

その中のひとつ、通りから階段を数段上がって入店する、ガラス張りで明るい15坪28席の現物件を選んだ。旧店舗の常連客からは移転を惜しむ声も多かったが、山本氏は新店舗で新たなお客様を開拓し、お店をより進化させていくという方向性に迷いはなかった。

同店がオリジナリティの高い商品で、口コミで顧客を増やし続けている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 日本ではまだ数少ないドイツ料理とドイツビールで特徴を出している。
  2. 独自に開発したドイツビールカレーの商品力で勝負している。
  3. 商品も店舗も常に進化させていく姿勢を貫いている。

移転後は店舗の視認性が格段に向上したこともあり、着実に周辺のビジネス街から集客するようになっている。昼の客単価は1,400円で、1日平均80人、多いときは100人近くを誘引している。

夜は平均20人が来店しており、カレーを食べに来るお客様も多いが、3人以上で席を予約する場合は、宴会料理(3,080円~)のオーダーを依頼しており、宴会利用の際の客単価は6,000円になる。

「以前は店舗を増やしたいと思ったこともありますが、当店のように凝った料理を出す個人店の多店舗化は難しいと思います。今後も、その時の“旬”は何か、その時のベストはどれかを探し続け、改善し続けることが、私は一番大事だと思うのです」と語る山本氏。これからも変化を恐れず、逆に変化を続けながら前進していく考えだ。


(Text and shop photo by Food Biz,


ピラミッド
住所
東京都中央区新川2-3-7 浪商ビル 1F
営業時間
11:00~15:00 (LO. 14:30)、17:30~22:00 (LO. 21:15)
土曜日 11:00~15:00(LO. 14:30)、17:00~22:00(LO.21:00)
定休日
日曜日・祝日
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