繁盛の法則 3カ条
- 「唯一無二の創作もんじゃ」として個性的な商品を開発
- 月島エリア内の6店舗で異なる利用動機に対応
- 日本各地の優れた食材をもんじゃ焼きに活かす
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月島でもんじゃ焼き店を創業し、10年間で7店舗に拡大
東京・月島のソウルフードとも言えるもんじゃ焼きを、日本各地へ、いずれは世界に広げていきたいという目標を掲げる「こぼれや」は、2015年に創業した気鋭のブランドである。2025年10月7日にオープンした「こぼれや 縁(ゆかり)」(60席)で月島エリアに6店舗となり、2025年5月に出店した「こぼれや 浅草」(44席)と合わせ、計7店舗となった。
月島の駄菓子店が発祥とされるもんじゃ焼きは、小麦粉を薄く溶いた生地を鉄板で焼き、「はがし」と呼ぶ小さなヘラで生地を押し付けてパリパリに焦がして食べたのが原型といわれる。その際、子供たちが柔らかい生地で鉄板に文字を書いて覚えたり、遊んだりした「文字焼き」が、次第に“もんじゃ焼き”と呼ばれるようになっていった。
元々は質素なおやつだったが、次第にキャベツ、揚げ玉、明太子、餅、チーズ、さらには肉類、魚介類なども使われるようになっていった。地下鉄月島駅を拠点に伸びる「もんじゃストリート」には、今や60~70軒のもんじゃ焼き店が軒を連ね、各店が工夫を凝らしたもんじゃ焼きを提供し、来訪者を楽しませている。
後発である「こぼれや」は、まずは器からこぼれるほど具だくさんであることを訴求した。経営元は株式会社delta(デルタ)で、代表取締役社長の中村 謙作 氏は1987年に浅草で生まれ、小学校5年生のときに母親の実家がある月島に移り、もんじゃ焼きに親しむようになった。
高校、大学時代は地元のもんじゃ焼き店でアルバイトをし、新店舗の立ち上げに関わるなど、ビジネスとしてのおもしろさも体験した。大学卒業後は大手IT企業に就職し、全国各地を回る多忙な日々を送るようになった。
サラリーマンとなって5年ほど経った頃、もんじゃ焼き店に関心を示していた大学時代の友人から「もんじゃ焼き店をやってみないか」と声をかけられ、創業に向けて動き出した。その友人を含む大学時代の仲間3人と、地元の友人を加えた4人が創業メンバーとなり、2015年10月に合同会社deltaを設立した(2023年に株式会社に組織変更)。
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落ち着いた空間で個性的な商品を提供する差別化が奏功
1号店の出店場所は、もんじゃ焼きを食べに来る人が集まるもんじゃストリート沿いを目指したが、物件探しは難航した。数カ月経った頃、「月島もんじゃ振興会協同組合」の重鎮の親戚が経営していたもんじゃ焼き店が閉店し、中村氏はその重鎮に、月島の未来に対するビジョンや、もんじゃ焼きの可能性について熱く綴った手紙を渡した。すると、重鎮はその思いを受け止めてくれ、物件を貸してくれることになった。その居抜き物件を使い、「こぼれや 本店」(26席)を2015年12月にオープンした。
本店はもんじゃストリート沿いとはいえ、月島駅側から壱番街、弐番街、参番街、四番街と連なる区画順では1番奥の四番街にあり、創業後1年ほどは集客に苦戦した。器から具材がこぼれるほどの迫力だけではなく、ターゲット層や利用動機を明確にする必要があると痛感し、「唯一無二の創作もんじゃ」というコンセプトを打ち出した。それが2017年で、社内では「リニューアル1.0」と呼んでいる。
路地裏に出た物件を使って2018年4月に出店した2号店の「こぼれや 結(むすび)」(26席)で、新たなコンセプトを具現化し、デートや会食にも使える落ち着いた空間、素材にこだわった高級指向の創作もんじゃ、全国から厳選した日本酒や焼酎をそろえ、目的客の誘引を強化していった。
1号店、2号店とも集客力が上がってきたところで、2020年からのコロナ禍に見舞われた。しかし、もんじゃストリート参番街にあるビルの6階に出た物件を使い、3号店を出店する計画は敢行することにした。ビルの6階まで上がってもらうための秘策として、もんじゃ焼き店には珍しい個室を多く作ってはどうかと企画していたところ、コロナ禍により家族や少人数で利用できる個室へのニーズがにわかに高まったことも後押しとなった。
2020年12月にオープンした「こぼれや 囲(かこい)」(54席)は、うち34席を2~8人用の個室9室とした。この個室が新たな需要を喚起し、コロナ禍が収束した後も、週末は予約で埋まる好調さを維持している。
さらに、コロナ禍の影響により同ビルの1階と地下1階で営業していたテナントが撤退した。そこで2022年7月に、まず1階に「こぼれや 別邸」(50席)を出店し、翌2023年7月に地下も借りて拡張した(40席)。
計90席となった別邸も軌道に乗ってきたタイミングで、2024年7月、それまではIT企業と兼業してきた中村社長がこぼれや事業の専任となった。また、もんじゃストリート弐番街に物件が出たことから、2024年12月に5号店の「こぼれや 二番街」(40席)を出店した。同じエリアでの自社競合を避ける意味合いも含め、二番街店では特に海鮮メニューに力を入れている。
店舗の出店と並行しながら、商品のブラッシュアップも常に継続してきたが、さらに2025年からは、日本各地の優れた食材をもんじゃ焼きとして提供し、生産者たちの思いを日本中、ひいては世界に届けたいという方向で動き出した。これを同社では「リニューアル2.0」と呼び、中でも富士山の源流水を使い、鹿児島産黒豚のとんこつや、鶏ガラ、サバ節、ウルメ節など10種の素材を5時間煮込んでとっただしで特徴を出している。
リニューアル2.0が形になってきたのと同時期の出店となった7号店は、二番街店から数十メートル先、より月島駅に近い物件を使った店舗で、さまざまな縁をこれからも大切にしたいという思いから「縁(ゆかり)」という店名にした。
こぼれやが創業10年間の歩みの中で、確実に知名度を上げ、伸長してきた要因は、以下のようになるだろう。
- 「唯一無二の創作もんじゃ」を掲げ、個性的な商品を打ち出している。
- 月島エリアの6店舗は、各店で異なる利用動機に対応している。
- 日本各地の優れた食材をもんじゃ焼きに使用し、生産者と消費者をつなげている。
営業時間や客単価は店舗によって若干違いがあるが、縁店での客単価は昼2,500円、夜4,000円と想定しており、周辺のもんじゃ焼き店より若干高い。
「今後は日本各地、さらには世界にもんじゃ焼きを広げていきたいです。まずは2026年中にマレーシアに直営店を出店し、そこからアセアン諸国、東アジアにも展開していけたらと考えています」と、同社営業推進部の篠崎翔太部長は述べている。
(Text and shop photo by Food Biz, )
住所
東京都中央区月島1-22-1 ミッドタワーグランド 113
営業時間
17:00~23:00 (LO. フード22:00、ドリンク22:30)
土・日曜・祝日 11:00~23:00(LO. フード22:00、ドリンク22:30)
定休日
無休(年末年始に休業日あり)
https://r.gnavi.co.jp/4t9nd6gn0000/
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