目次
・オフィス街でレストラン&グロサリー業態を出店し、月間4,000人以上を集客!
「THE ONO MARKET ~ETWAS TENJIN~」(福岡・天神)
・駅近のレトロな飲み屋街のビストロが“お酒好きの30代女性”を虜に
「ビストロ食堂Bonappetit」(広島・広島市南区)
コロナの影響がだんだんと弱まり、今後は友人や仕事仲間での飲み会や宴会、家族での食事などの利用が期待できそうだ。そこで気になるのが、今、集客が好調な店はどんな取り組みをしているのかということ。集客に成功する店のエリアや客層、利用シーン、メニューなど、前編・後編で計4店舗の戦略を見ていく。
前編では、レストランの利用だけでなく、食品やワインなどの物販、デリカテッセンや鮮魚コーナーなどを設けて“レストラン×グローサリー”として出店し、さまざまな利用シーンを取り込んで月間4,000~6,000人を集客する福岡・天神の店、“お酒好きな30代女性”をターゲットにし、「驚きとおいしさ」を両立させたメニューでネット上で認知度を高め、予約なしでは入れない繁盛店に成長した広島駅の「エキニシ(駅西)」エリアにあるビストロを紹介する。
【後編はこちら】
今、集客できるのはこんな店【後編】~戦略を立てターゲットを呼び込む!~
オフィス街でレストラン&グロサリー業態を出店し、月間4,000人以上を集客!
福岡県福岡市中央区天神3-5-18 ホテルエトワス天神1F
https://r.gnavi.co.jp/3c0d4kur0000/
ONO GROUPのノウハウを結集。外食の魅力を中食にも生かす
九州最大の繁華街である福岡・天神で、オフィスビルや飲食店が多く建ち並ぶエリアに、“レストラン&グロサリー”として2021年11月オープンした「THE ONO MARKET ~ETWAS TENJIN~」。店内にはイートインスペースを囲むように、鮮魚、中華、デリカテッセン&シャルキュトリー(食肉加工品)、パン、酒、物販などのコーナーを設け、レストランとしてもフードマーケットとしても利用できるのが特徴。近隣で働くビジネス層や天神に買い物で訪れた人などを集客し、月間4,000~6,000人が来店するという繁盛店に成長している。
運営元は、福岡や京都を中心に和食やフレンチなどを展開している有限会社ディー・ディー・カンパニー(通称・ONO GROUP)。「世界一小さな食のテーマパーク」をコンセプトに据えた、外食の新しいスタイルを追求した新業態だ。ONO GROUP全店を統括する小野聖二氏は、「コロナ禍で店内営業が制限され、お客様との接点が途切れた状態が長く続いたことは、経営だけでなく、スタッフのモチベーションにも影響しました。そこで、外食に中食の要素を取り入れることで、よりお客様と接点を増やし、つながっていきたいと考えました」と出店の経緯を語る。天神エリアを選んだのは、ONO GROUPの創業地である福岡・舞鶴に隣接しており、近辺に系列店舗が複数あるため、認知されやすいという狙いもあった。
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飲食店と物販店の機能を兼ね備えているが、軸となるのは飲食業の強みである「切り立て、作り立て」。例えば鮮魚のコーナーには、毎朝、福岡・長浜の市場からオーナー自らが厳選して仕入れた魚介が並ぶ。その魚介を使った「海鮮丼」(ランチ1,480円、ディナー880~1,480円)は、名物の一つとなっており、店内利用でもテイクアウトでも人気が高い。魚介は一尾や切り身でも購入でき、その場でさばいて刺身や寿司、焼き魚など注文客が食べたい調理法で提供することも可能。もちろん、持ち帰りにも対応する。
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デリカテッセンやシャルキュトリー、チーズなども人気。デリカテッセンは、店内で調理されたサラダなどが並び、シャルキュトリーやチーズは熊本の生産者から仕入れている。店内では「シャルキュトリ6種盛り合わせ」(1,280円)として提供するほか、テイクアウトでは量り売りにも対応する。パンも毎朝店内で焼き上げたものを販売し、ランチとして購入する人が多く来店。特に「ソフトフランスパン」(880円)はイートインでおいしさを知り、お土産に購入して家族で楽しむ人もいるという。
物販コーナーにはオーガニックやSDGs(持続可能な開発目標)を意識した食品などが並ぶ。「全ての商品がスタッフがこだわり抜いて選んだもの」と小野氏は話す。「販売したいと思ったら生産者と会い、商品の背景を知った上で仕入れ、それをお客様に伝えていくようにしています」(小野氏)。
そして決済は、全てクレジットカードなどで行うキャッシュレス決済にしており、ONO GROUP独自のチャージ式プリペイドカードも発行。「コロナ禍で非接触が望ましいことと、イートインと物販の会計管理のしやすさからキャッシュレスにしました」(小野氏)。プリペイドカードは、チャージ金額によってお得なポイントが付くため、このカードを購入して利用する人も多く、現在約4,000枚発行している。「プリペイドカードがあることで、当店を思い出してもらえ、リピートしていただけるきっかけになっていると思います」(小野氏)。
多彩な料理や商品がラインナップされ、さまざまな利用ができる一方で、“どんな店なのか”は伝わりにくい面もあった。そのため、店頭で販売を行って入店のきっかけづくりをしたり、来店した人には声掛けして丁寧に説明。また、2022年夏~秋にかけては店内でビアガーデンのように楽しめる「オノマーフェス」を開催。飲み放題プラン(2時間1,800円、テラス1,000円)や飲み放題&オーダービュッフェのプラン(2時間3,800円)などを設定し、ビジネス層が多く来店しており、認知拡大にもつながった。
月商は約1,200万円(70坪)で、イートインとその他の売上比率はおよそ8対2。イートインで入店し、注文後の待ち時間に店内を見て回って物販やテイクアウトを利用する人が多く、約4割がリピーターだ。すでに複数の商業施設から出店依頼があり、小野氏は「まだまだ伸び代は大きいと考えているので、さらにパワーアップさせ、会社の成長につなげていきたい」と展望を語る。
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駅近のレトロな飲み屋街のビストロが“お酒好きの30代女性”を虜に
広島県広島市南区大須賀町11-6
https://r.gnavi.co.jp/9p463f9f0000/
自然に店の情報がSNSで拡散するような仕掛けで、集客アップに成功
広島駅南口から西に徒歩3分の「エキニシ(駅西)」は、戦後に建てられた小さな古民家などが並ぶエリア。近年の広島駅周辺の開発に呼応するかのように、数年前から古民家をリノベーションしたおしゃれな飲食店が増え、地元住民だけでなく、県外からの観光客も訪れるディープな飲み屋街に変貌しつつある。
その一画に、ホテルや洋食店で約10年、シェフとして経験を積んだ中村祐介氏がオープンさせたのが「ビストロ食堂Bonappetit(ボナペティ)」。店内は1~2階を合わせて7坪14席のこぢんまりとした空間。来店客の8割は20~30代の女性で、そのほとんどが1人もしくは2~3人の少人数グループだ。1日の来店数は20~30人弱で、ほぼ毎日2回転しており、「週末は予約で満席、平日でも6~7割は予約で埋まります」と中村氏。1回転目は新規の予約客が多く、予約の隙間を埋めるように常連客が入店し、2回転目になるとほとんどが常連客になっているという。
「エキニシ」は、広島の繁華街である八丁堀や紙屋町、流川町に比べると、ややディープな“知る人ぞ知る”エリア。そこでいかに集客するかを考えた中村氏が、ターゲットに選んだのは“お酒好きな30代女性”だった。「当初から、エキニシに来て店を探している人を呼び込むのではなく、『Bonappetit』に来るためにエキニシに足を運んでもらいたいと考えていました。そのためにSNSの発信力が強い30代の女性に情報を拡散してもらい、ネット上で認知度を高めて集客することにしました」と中村氏は戦略を語る。
この戦略に合わせて打ち出したのが、「驚きとおいしさ」を両立させたメニューだ。「おいしくてもインパクトに欠けると情報は拡散されず、逆に驚きがあっても味が伴っていなければ再来店にはつながりません。フレンチの本格的な技法を使いつつ、印象に残るネーミングや写真を撮りたくなるようなビジュアルを意識しました」と中村氏。
その一つが、カウンター席の目の前に並べているピンチョス。「ベーコンのキッシュ」「マッシュポテトのコーン仕立て」など、常時10種類以上を用意している。料理に刺している串の色によって150~310円まで4つの価格を設定し、カウンターに座っている人が自由に取って食べられるようにしている。また、黄身が白い「たむらのタマゴ」を使った「Bonappetオムレツ 白い恋人たち~今宵涙こらえて~」(860円)や、ホワイトチョコレートとレモンソルベで仕上げた「白い恋人のガトーショコラ」(780円)など、ビジュアルと味にこだわった料理をバリエーション豊かに用意している。
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さらに、調理は中村氏が一人で行っていることもあり、予約率を高めることで仕込みを含めて効率的に調理を行いたいと考え、予約につながるような目玉メニューも用意。その一つが、「豚のパン包み」(コースのみで提供)だ。ローストした豚ヒレ肉を野菜やキノコとともにパン生地で包んだ一品で、見た目のかわいらしさも相まってSNSで拡散されるメニューとなっている。
同じく要予約のメニューとして人気なのが、魔女が主人公の人気アニメ作品に登場する料理をモチーフにした「パイ包み焼き」(2,510円)。提供時にはスタッフが主人公のコスプレをし、作中のBGMも流して雰囲気を盛り上げる。さらに、コスプレの小道具の1つであるカチューシャを来店客に渡すと、ほぼ全員が装着して写真を撮り、SNSで拡散してくれる。こうして認知と人気が広まり、狙い通り来店客の6割が予約客で、そのほとんどがコースを利用している。
また、ドリンクにも工夫を凝らしている。ソムリエの資格を持つ中村氏が厳選したワインや、各種のカクテルを提供。アルコール、ノンアルコールともにアニメのキャラクターをイメージさせる色彩とネーミングが女性に人気を博している。若い人の来店も多く、全体の3割以上がアルコールを飲まないこともあり、ノンアルカクテルの注文率が高く、売上にもつながっている。
一方、一過性に終わらせず再来店につなげるために重視しているのが接客。見送りのときに「チャオ」と呼び掛けるなど、楽しく親しみやすい雰囲気づくりを心掛けており、厨房に立つ中村氏との会話を楽しみにカウンター席に来るファンも多く、オープンから2年で予約しないとは入れない繁盛店に成長した。
2021年5月からは、以前から構想を練っていたキッチンカーでカレーの販売を開始。「週1~3回くらいの稼働で、大学や企業、高齢者施設などから依頼があります」と中村氏。さらに、最近は自転車で広島駅前に行き自家製のタルトを販売するなど、新たな販売チャネルの開発にチャレンジしている。こうした移動販売の利用客にはショップカードを渡しており、SNSなどでの情報拡散というデジタル戦略に加えて、対面で話ができるアナログな戦略でも認知の拡大を図っている。
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