2022/12/15 特集

通いたい店になる!~ファンを獲得し、再来店につなげる~

飲食店にとって「何度も足を運んでもらうこと」が肝になっている今、ユーザーにとって「通いたい店」とはどんな店なのか。3店舗の事例から、通いたくなる仕掛けやファン獲得の取り組みを紹介する。

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目次
200種を超える創作料理でファンを獲得。来店客の9割がリピーターに!
 「旬味満菜居酒屋 味寛」(大阪・九条)

「薬膳料理教室」で参加者と結び付きを深め、リピーターが増加
 「プライベートダイニング LABO」(東京・赤坂)

「セルフ飲み放題」が大好評!メニューを刷新し、より集客できる店に成長
 「大衆和牛酒場 コンロ家 飯田橋店」(東京・飯田橋)

 外食の回数がコロナ以前に比べ低い状況にある中で、飲食店にとっては「何度も足を運んでもらうこと」「リピーターを獲得すること」が肝になっている。では、ユーザーにとって「通いたい店」はどんな店なのか。飽きられないようにと200種以上の創作料理を提供し、来店客の9割がリピーターという居酒屋、「薬膳料理教室」を開催し参加者とコミュニケーションを取ってファンを増やしているダイニングバー、約30種の「セルフ飲み放題」やメニューの刷新が好走しリピーターを含め集客が好調な居酒屋から、“通いたくなる仕掛け”やファン獲得の取り組みを紹介する。

200種を超える創作料理でファンを獲得。来店客の9割がリピーターに!

旬味満菜居酒屋 味寛(大阪・九条)
大阪府大阪市西区九条1-20-23 福元マンション1F
https://r.gnavi.co.jp/pv90gzum0000/
大阪・九条駅から徒歩2分。「毎日来ても飽きない店」がコンセプトの居酒屋。創作料理を提供し、メニュー数は200以上に及ぶ。30~60代の近隣住民や京セラドームを訪れた観光客などを集客。

定番料理から発想を膨らませ、飽きられないメニュー作りを意識

 大阪市西区・九条にある居酒屋「味寛(みかん)」は、2011年オープン。新鮮な野菜を使った、毎日ラインナップが変わる創作料理が自慢で、近隣に住む30~60代女性を中心にファンを多く獲得。来店客の9割がリピーターだ。

オープン時は約20席だったが2016年に増床し、現在は全40席。シックでありながらも、寛げる空間にしている

 地下鉄と私鉄の2路線が乗り入れる九条駅周辺には商店街と住宅地が広がり、下町情緒のあるエリア。駅から徒歩10分のところには京セラドームもあり、観光客なども行き交う。周辺には飲食店も多いため、オープンに際しオーナーの左納寛(さのうひろし)氏は、近隣の店舗と差別化を図るため、野菜を料理の中心に据えることを決意する。「飽きられないことを意識してメニュー作りをしています。野菜料理だけではなく、野菜と何を組み合わせたらおいしいか、喜んでもらえるかを軸に考えています」と左納氏は語る。

左から時計回りに、本日のおすすめの「黒毛和牛すき焼きのスクランブルエッグ」(869円)、「淡路産丸ごと玉葱のオーブン焼き」(429円)、「とうもろこしのかき揚げ」(759円)。野菜にさまざまな素材を組み合わせた多彩な料理が人気の秘密

 そんなふうに考えてきたメニューは、「本日おすすめの野菜料理」として「紫芋のポテトサラダ」「淡路産丸ごと玉葱のオーブン焼き」(ともに429円)などがラインナップされるほか、魚料理、肉料理パスタやシメのご飯もの、おでん、おつまみなど、常時200種以上ある。その8割がオリジナルの創作料理だ。

 メニュー開発のポイントとして左納氏は「既存の料理をヒントにすること」をあげる。「例えば『ブリ大根』であれば、ブリとダイコンをしょう油で煮ているので、ブリやダイコンを揚げてみたらどうだろう、しょう油を違う調味料に変えてみたら、魚を肉に変えたらなど、もととなる料理を分解しながら考えを派生させています」(左納氏)。定番料理やなじみの味から発想を膨らませ、調理法や調味料を工夫することで幾通りもの料理を生み出し、来店客から「いつ来ても違う料理が楽しめる」と支持されている。

その日の野菜料理と肉料理を盛り合わせた「ベジあて盛り合わせ」(869円)と「肉あて盛り合わせ」(1,089円)を一緒に盛り付けた一皿。さまざまな料理が楽しめるとともに、ボリューム満点で人気が高い

 人気メニューはその日おすすめの野菜料理、肉料理をそれぞれ盛り合わせた「ベジあて盛り合わせ」(869円)と「肉あて盛り合わせ」(1,089円)。この2品を同時に注文された場合は、大皿に一緒に盛り付けて印象を高めている。そのほか「自家製クリームコロッケ」(528円)や「黒毛和牛すき焼きのスクランブルエッグ」(869円)なども人気で、6~10月に提供する「とうもろこしのかき揚げ」(759円)は、これを目当てに来店する人もいるという。左納氏は「料理は多めに盛り付けて満足度を高めています。“お腹いっぱいで食べられなかったから、次はあのメニューを食べよう”と思っていただければ」と語る。

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  • 2020年春オーダーシステムを導入し、タブレットでの注文に。ほとんどのメニューに画像を入れ、注文しやすくしている
  • ドリンクでもオリジナルメニューを打ち出す。左からビールを野菜ジュースで割った「ベジビール」と、カルピスで割った「カルビー」(ともに429円)。飲みやすいと、女性から評判だ

 注文は2021年春よりタブレットでのオーダーシステムを導入しており、操作性や利便性を考え、表示されるメニューには全て画像を添え、分かりやすく伝えている。そのほか、「お造り盛り合わせ」(1,000円)は、1人前注文するごとにハズレなしのくじ引きを付け、お得感によって注文率を高めている。また、コース利用で何度も来店している人には飽きが来ないように内容をフレキシブルに変えたり、雨の日であればランチでコーヒーサービスを実施したりと、ファンになってもらえるような取り組みも欠かさない。

  • 「お造り盛り合わせ」(1,000円)を注文すると、1人前ごとにくじ引きができるサービスを実施。ハズレなしで、会計金額の半額割引、枝豆、グラスワインのサービスなどが当たる
  • 箸袋の裏には、LINEのお友だち登録や自店のInstagramページ、HPにつながる二次元バーコードを記載。表には店の売りである野菜と左納氏のイラストを入れ、印象アップ!

 情報発信では、ぐるなびのほかSNSも活用。箸袋に各種二次元バーコードを記載して登録を促している。「LINEなどでは雨の日のサービスなどタイムリーな情報のみ投稿しています。頻繁に来店を促すような投稿をしてしまうと、かえってお客様が離れてしまうのではないかと考えています」と左納氏。

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 「何度行っても飽きない店」として地域住民に支持され、年末年始も予約は好調。今後は地元の人に向け、料理教室の開催なども視野に入れており、将来的には業態を変えながら5店舗ほど展開したいと考えている。

オーナー 左納 寛 氏
小学1年生の時に料理人なると決め、高校卒業後から大手チェーンや居酒屋などで勤務。その後、大阪・北新地の創作料理店で料理長を務め、29歳で独立・開業した。

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「薬膳料理教室」で参加者と結び付きを深め、リピーターが増加

プライベートダイニング LABO(東京・赤坂)
東京都港区赤坂3-13-16 田川ビル1F
https://r.gnavi.co.jp/a53ug2tt0000/
2016年11月、「ドラマティック ビバレッチ研究所」を掲げ、バーとしてオープン。2019年よりスパイス&ハーブをコンセプトに加え、カレーや薬膳料理なども提供。ビジネス層のほか、スパイス好きのファンを獲得する。

バー業態からフードに力を入れ、料理教室も好走し、売上が3倍に

 東京・赤坂駅から徒歩2分の場所にある「プライベートダイニング LABO」は、スパイスやハーブなどの薬膳を取り入れたカレーなどの料理とドリンクを提供するダイニングバー。11時30分~翌5時まで営業し、周辺で勤務するビジネス層やカレー好きな人、深夜帯には同業者などが多く来店しており、2021年7月より開始した「薬膳料理教室」が話題となっている。

温かみのあるインテリアと長いカウンターが特徴の店内。カウンター越しに来店客とスタッフの会話が行き交う
ランチでは、「薬膳カレープレート」(1,000円~)を中心に提供。カレーが選べ、スパイスを使った惣菜5品が付く。ランチ・ディナーで提供する季節限定のカレーも人気

 ホテルバーテンダーだった森貴之氏が赤坂でバーを開いたのが2016年11月。だが、若者を中心としたアルコール離れを意識し、次第にフードの比重を高めることを模索。3年前、スパイスやハーブを駆使した薬膳料理を探求しているスパイシスト・のこ氏をフード担当のスタッフとして迎え、スパイスカレーなどの薬膳料理の提供を開始した。

 2021年2月には、キッチンスペースを広げるため、現在の場所へ移転。以来、のこ氏が作る薬膳料理にファンが付き、足繁く訪れる人も増えたという。「ランチでもカレーとともにアルコールのオーダーがありますし、深夜にスパイスカレーを食べるお客様もおり、昼夜ともにフードもドリンクもニーズがあると感じています」とのこ氏。

各テーブルに薬膳料理教室の案内を置いてアピール。カレーと惣菜2品を2時間ほどで作り、試食(飲み放題付き5,000円)。メニューは月替わりで、1名から参加可能
11月の料理教室で作ったメニューは(写真手前から時計回りに)「ハーブチキンカレー」「パプリカのスパイス炒め」「タンドリーチキン」の3種。ライスは、タイ米・日本米・インディカ米を独自にブレンドしたものを、毎回ふるまっている

 そして、2021年7月よりスタートしたのが料理教室。コロナの影響で酒類の提供が制限された中で始めた挑戦の一つだ。「弁当の販売やケータリングにも取り組んでいますが、お酒を提供できないと来店者数が減少します。それなら料理教室を開いて、来店のきっかけにしてもらおうと考えました」と、のこ氏は振り返る。来店客が比較的少ない土・日曜日の夕刻を料理教室の時間に充て、スパイスカレー1種類と惣菜2品を作って試食し、2時間飲み放題付きのプラン(5,000円)を考案。参加者にはキッチンに入ってもらい、のこ氏が手順だけでなくスパイスの特徴などを丁寧に教えながら一緒に調理を行う。

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料理教室では、のこ氏(写真右)が書き起こしたレシピを参加者に渡して説明するとともに、参加者がキッチンに入り、のこ氏に教わりながら調理を体験する
  • スパイスとタマネギを炒め、ハーブチキンカレーを作る。作りながら「タマネギの水分が飛ぶまで炒める」「チキンを入れたら底から返すように炒め、焦げ付きを防ぐ」など、失敗しないコツを伝える
  • 料理教室は2時間飲み放題付き。ビール、ワイン、カクテル、ノンアルドリンクなど好みのドリンクをオーダーできる。写真は柿(右)とキウイ(左)の「季節のフルーツビネガードリンク」

 告知は店内チラシやInstagram、ぐるなびなどで行い、最初はなじみの常連が参加していたが、次第に過去に来店したことがある人、SNSなどで料理教室を知って参加する新規客なども増加。スパイス好きな人、健康やカロリーを気遣う人、アレルギーで食べられない食材がある人などから支持され、参加者からは習った料理を家で作って画像が送られてきたり、質問が寄せられることもあるという。また、料理教室をきっかけに店のリピーターになった人もおり、集客アップにもつながっている。のこ氏は「スパイスには体調を整える働きがあります。普段の営業や料理教室を通して、一人でも多くの人にスパイスを日常的に取り入れて楽しんでほしい」と語る。

 料理教室の盛り上がりとともに店のリピーターも増えており、来店客の半数はリピーターが占め、今では「移転前の3倍の売上」と森氏。今後もブラッシュアップして料理教室を続けるほか、コロナ禍の収束とともに期待されるインバウンドへの対応も視野に入れている。

スパイシスト のこ 氏
体の調子を整える薬膳料理を追求し、グラフィックデザイナーから転身。スパイスとハーブをふんだんに使ったカレーや薬膳料理を考案している。

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「セルフ飲み放題」が大好評!メニューを刷新し、より集客できる店に成長

大衆和牛酒場 コンロ家 飯田橋店(東京・飯田橋)
東京都千代田区飯田橋4-5-6 ECS第6ビル1F
https://r.gnavi.co.jp/g7dajhhz0000/
2018年に和牛とワインの大衆居酒屋として、東京・飯田橋駅近くにオープンし、近隣のビジネス層を中心に集客。新橋、渋谷、代々木にも系列店があり、2022年4月から全店でメニューの刷新に取り組み、ブラッシュアップを図っている。

肉料理を拡充し、幅広いラインナップで予約&リピート増!

 和牛とワインをリーズナブルに提供する大衆酒場として、2018年に東京・飯田橋駅近くにオープンした「大衆和牛酒場 コンロ家 飯田橋店」。「霜降り和牛鍋」(1人前2,508円)などが人気で、20~50代のビジネス層が多く来店。集客で効果を発揮してきたのが、ワインや生ビールの「セルフ飲み放題」だ。

ドラム缶を使った椅子とテーブルで大衆酒場感を演出した店内。左奥には少人数用の個室も完備し、カップルやファミリーに好評

 店内にはワインや生ビール、レモンサワーなどが入った樽が30種ほど並び、「セルフ飲み放題」ではこれらの樽から来店客が好みのドリンクを自由に注いで飲むことができる。価格は30分390円、その後1分15円。樽にはドリンクの種類や銘柄、特徴などを記載しており、さまざまなドリンクや銘柄が選べる面白さ、自ら注ぐエンタメ感が好評を博している。また、30分以降は1分単位での会計となるため、コストパフォーマンスの高さや明朗会計な点も受けている。店長の成岡真夏氏は「来店時にはセルフ飲み放題をご案内することで、ほぼ全てのお客様が利用されており、喜んでいただいています」と語る。「セルフ飲み放題」を目当てに再来店する人も多いという。

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壁にはワインやビールなど約30種の樽が並ぶ。「セルフ飲み放題」では、来店客が酒を自由に選んで樽から注ぐことができる
  • 「セルフ飲み放題」は、30分390円、1分延長ごとにプラス15円。ワインや生ビール、サワーのほか、オーダー制でカクテル、ソフトドリンクなども飲み放題
  • 来店客は樽に書かれたワインの銘柄、特徴などを読んで選ぶ。自ら注ぐエンターテインメント性が魅力の一つとなっている

 さらに2022年10月からは、この飲み放題にオーダー制でカシスやピーチのリキュールを使ったカクテルなどもラインナップに追加。選択肢を増やすとともに、軽めのアルコールニーズにも応え、特に女性から好評だ。

名物の一つのお通し「炙り肉寿司」。来店客の目の前でバーナーで炙って提供する。写真や動画を撮ってSNSに投稿する人も多く、認知の拡大に一役買っている

 加えて人気なのが、お通しの「霜降り和牛寿司」(385円)。A4ランクの和牛薄切り肉をシャリの上にのせ、来店客の目の前でスタッフがバーナーで炙って提供。炙る様子を撮影してSNSに投稿されることも多く、またそのおいしさから追加注文が入ることもあるという。

A4、A5の和牛を使った肉メニューを豊富にラインナップ。創業以来の看板メニュー「霜振り和牛鍋」(2,508円)のほか、2022年4月に投入した「最強の肉プレート盛り合せ」(3,278円)も人気に

 メニューは、より本格志向にして魅力あるものにしたいと考え、2022年4月に自家製調味料などを使った料理を加え、刷新。人気の「霜降り和牛鍋」などは残しつつ、和牛ステーキや鴨肉の西京味噌漬けなどの肉4種を盛り込んだ「最強の肉プレート盛り合わせ」(3,278円)や「至福の和牛レアカツ」(1,628円)をなどを投入。ワインとの相性が良くコストパフォーマンスも高いと好評だ。「黒毛和牛の牛すじ煮込み」(693円)などの大衆酒場的なメニューとともに、幅広く楽しめるメニュー構成にしたことで、徐々に客足が伸びている。

 「秋以降は大人数の宴会予約が増えています」と成岡氏。「セルフ飲み放題」、お通しの「霜降り和牛寿司」、魅力的なメニュー構成が原動力になって団体予約が増えており、リピート率も上昇。この勢いをさらに伸ばし、宴会シーズンに向けしっかりと準備することにしている。

店長 成岡 真夏 氏
焼き肉店で17年間勤めた後、2022年4月入社。「コンロ家」の東京・渋谷店に勤務し、6月から飯田橋店に配属となり、11月より現職。

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