受け入れ態勢とシフト編成のポイント
受け入れ態勢のポイント
全員で歓迎し、安心してもらう。家族へのあいさつも忘れずに!
晴れて採用が決まり、新人スタッフが初めて出勤する日。「店側の受け入れ体制でまず大切なことは、スタッフ全員で新人を歓迎する雰囲気を作ること」と、白岩氏は力説する。
「例えば、スタッフの中に新人が来ることを知らない人がいたとしたら、その人は疎外感を持つかもしれません。その気持ちは、しばしば新人への不親切や無愛想となって表れてしまう」と白岩氏。たった1人の不親切が新人の不安感を煽り、やる気を削ぐ。それを防ぐには、スタッフ全員が新人の情報を共有し、店全体で歓迎ムードを高めることが大事だ。「初日までに新人の名札を用意し、ロッカーを決め、サイズの合う制服を用意する。それが安心感を与え、働く意欲を刺激してパフォーマンスを向上させる」と語る白岩氏。こうしたことが、離職率の低減につながるのは言うまでもない。
同時に、あらためて教育体制も整備しよう。近年は新人の育成を現場任せにせず、初期の教育を本部・本社が行うケースが増えている。「会社の理念などは、本部やオーナーが教えた方が伝わりやすいですし、この部分を本部が行えば、現場の負担も軽くなります」と、白岩氏もこの傾向に賛同する。
一方、現場でやってはいけないことは、「ほったらかしにすること」と白岩氏は指摘する。「新人は慣れない現場に来て不安で一杯。何をしたらいいか、どこにいるべきか、誰に聞いたらいいのかなど、迷う状況を作らないように、担当者を付けるなどしっかりフォローしましょう」と注意を促す。
さらに、「家族へのあいさつも重要」(白岩氏)だという。新人を受け入れる際は、家族にあいさつをしておくことで安心してもらえ、本人も「大事にされている」という気持ちになる。家族と店がつながることが、新人を心の面から支えるのだ。もちろん、家族が店のファンになることも期待できる。
シフト編成のポイント
「仮決めテクニック」で早期に準備。余裕を持った人員配置が満足度を上げる
新人スタッフとともに迎える年間最大の繁忙期、忘年会シーズン。必勝のシフト編制術として白岩氏が推奨するのが、「仮決めテクニック」だ。
「シーズン真っ只中の12月のシフトは、早めに"仮決め"してしまいます。12月の予定が10月に決まっている人はあまりいないので、まず店が必要だと思う人数やメンバーでシフトを組んでみて、"仮決め"と断ってスタッフに聞いてみるのがいいでしょう」と白岩氏はアドバイスする。スタッフの予定が出そろってからでは、準備が出遅れてしまうし、店が求める人数が確保できない可能性も高い。「スタッフには、できるだけ"仮決めシフト"に合わせてもらうようにお願いし、どうしても都合がつかないときは、まずはスタッフ同士で調整してもらうようにするといいでしょう」(白岩氏)。
同時に店としては、早期予約獲得に向けて、販促活動に取り組むことが重要になる。「前年に忘年会を開いてくれた企業やグループの幹事には早々にアプローチし、『オーダーメイド宴会』(リクエストに柔軟に対応してコースメニューなどを構成する宴会)を打ち出して、予約をできるだけ早く固めましょう。そうすれば、より正確な見通しで食材やオペレーションの準備ができ、シフトも組みやすくなるはず」(白岩氏)。そうした準備が、来店客の満足度アップにつながるのだ。
もちろん、シフトを組むときには、「スタッフ間に不公平感が出ないように気を配らなければいけません」(白岩氏)。店から見ると、どうしても、多く働いてほしいスタッフと、そうでないスタッフがいるものだ。だからといって特定の人を重用し、他の人の勤務時間が少なくなれば不満が生まれ、店の雰囲気の悪化につながる。これはもちろん、来店客の満足度にも影響する。
ここで活きてくるのが、それぞれの「月の最低希望収入額」だ。白岩氏は、「通常の月も、この金額を考慮に入れながらシフトを組みますが、忙しい日が続き、スタッフ全員の稼働率が上がる12月はなおさら、『最低希望収入額』を下回る人が出ないように調整したい。そうすれば、不満の芽は出てこないはずです」と解説する。
さらに、繁忙期の人材活用において白岩氏が重視するのは、「この時期の『人件費』は、『販促費』と捉えて多めにスタッフを投入し、接客の水準が下がらないようにすること」だ。なぜなら、繁忙期は黙っていても売上が上がるので、一見すると成功したように見えるのだが、実は忙しさで接客の質が落ち、満足度が下がっている場合が少なくないからだ。「それは、年明け以降の集客・売上の停滞というかたちで表れます。これを防ぐためには、忘年会シーズンに余裕を持った人員を配置し、お客様の満足度が下がらないようにすること」と話す白岩氏。仮に人員がだぶついても、「来店客からアンケートを取得する」「取得したアンケートに対してお礼状を書く」「外回りの営業や店外でのチラシ配り」など、販促の仕事を担当してもらえばいいのだ。「そうすれば満足度を下げることもないですし、スタッフもしっかり稼ぐことができて満足する。それこそ、いいこと尽くめ」(白岩氏)なのである。