2018/09/25 特集

社員&PA採用でミスマッチを防ぐ! 人材補強に失敗しない面接術(3ページ目)

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飲食企業の人事全般を請け負うコンサルタントに聞く!効率的で効果的な面接のポイントとは?

売り手市場の昨今は、応募者自体が少なく、“来るものは拒まず”の状態になったり、面接に時間をかけることができずに、採用後のミスマッチが起こっている店も少なくないはず。限られた応募者に対し、短い時間で効率的、かつ効果的な面接を行うポイントを、株式会社ラフテルズの井上高司氏に聞いた。

【お話を聞いたのは】株式会社ラフテルズ CEO ブランドマネジャー 井上高司氏
「人事のトータルプロデュース」を掲げ、“社外人事部”として採用だけでなく、経営・組織戦略、評価・教育制度、労務管理など人事面を一貫してサポート。現在、約40社の飲食企業を含め、顧客企業の数は130社以上。

【POINT】面接では応募者を“口説く”

人材は、完全な売り手市場。“選定”より“プレゼン”を

採用面接というと、面接者が応募者に質問をし、その人の意欲や資質、能力を見極める場というイメージが強いと思います。しかし現在、「選定」は昔ほど重要ではなくなってきました。

なぜなら、人材は完全な売り手市場だからです。選ぶのは採用する側ではなく、応募する側。面接での印象が悪ければ、応募者は、その会社や店で働こうとはしません。これは社員でもアルバイトでも同じです。

したがって、面接する側は、自店で働いてもらうように、応募者を「口説く」意識が求められます。面接で好印象を与え「この店なら働いてみたい」と思われることがもっとも重要です。

だからと言って、事実と違うことを伝えて、興味を引くような面接は意味がありません。そうして採用しても、すぐに辞めてしまうでしょう。あくまでも現実の姿を伝えるための“プレゼンテーションの場”なのです。もちろん、自信を持って伝えられる職場環境を整えることが大前提です。

【POINT】自社の魅力を伝えるツールを作る

パンフレットなどを使い経営理念やビジョンを紹介

限られた時間で、応募者を“口説く”には、自店や自社の魅力が伝わるプレゼンテーションツールが効果的です。特にアルバイトは、各店の店長が面接をする場合が多く、店長ごとに伝える内容がバラバラ、ということも少なくありません。こうした状況を防ぐためにも、誰でも短時間で必要な情報を伝えられるツールが有効なのです。

代表的なツールが、クレドカードとパンフレットです。クレドカードは経営理念、今後のビジョンなどをまとめて掲載し、社員やアルバイトに渡すもので、端的に企業コンセプトを伝えられます。またパンフレットは、経営理念などに加え、会社の沿革、経営規模、年間スケジュールなど、詳しい情報も載せます。これらを応募者に見てもらい、面接者からも詳しく説明して、理解を深めてもらうのです。説明のための台本を作っておいてもいいでしょう。

また、同じツールを使っても、中途社員ならキャリアアップの制度、アルバイトなら時給アップの条件など、応募者によって確認したい情報が違うことを念頭に置いて説明するのも重要です。

株式会社ラフテルズが監修した飲食企業のクレドカード。経営理念やビジョンなどをまとめたもので、デザイン性もポイント
会社の規模や沿革、展望、組織の仕組みなどをまとめたパンフレットは、面接での説明に効果的

【POINT】質問シートの活用が有効

聞きたい質問をまとめて効率的な情報交換を図る

効率的に面接を行うために有効なのが「質問シート」の活用です。そもそも、初対面の2人が会話をしながら情報交換をするのは、難易度が高く、効率も悪い。あらかじめ企業や店が聞きたい内容をまとめた質問シートに回答を記入してもらうほうが、応募者にとってもハードルが低いのです。また、質問の回答をコミュニケーションのきっかけにすることで応募者をリラックスさせる、いわば“アイスブレイク”のツールとして使うこともできます。

質問シートを使った面接の一例としては、最初にシートに記入してもらい、パンフレットなどを使って、自店のプレゼンを行い、その後、記入してもらったシートの回答を基に、質疑応答を行うといった流れがスムーズでしょう。アルバイト採用の面接であれば、時間は30分くらいが目安です。

井上氏が提案する質問シートを活用した面接の一例

①質問シートの記入(10分)
面接前にパンフレットなどを渡して見てもらうほか、質問シートに
も答えてもらう。株式会社ラフテルズのシートは下記を参照。

②自店&自社紹介と条件面の確認(10 ~ 15分)
パンフレットなどを使いながら自社での働き方、評価制度などを伝
える。給与や勤務日数など条件面での希望なども確認。

③質問シートを基に質疑応答(5 ~ 10分)
質問シートの内容に関して必要に応じて質問。質問シートに「店や
会社について聞きたいこと」という項目を用意しておけば効率的。

終了(約30分が目安)

応募者の疑問や不安を解消することが本当の目的

質問シートの例として、当社の社員採用の面接で使っているもの(下)を紹介します。これは、アルバイト面接でも応用が可能。質問は6つまで設定できるので、例えばアルバイトの面接なら、「応募した理由」「あなたの長所(短所)」「働くうえで何を重視するか」などがよいと思います。

井上氏が考案した「質問シー ト」。「志望動機」「長所」など質問を6つ設定。答えを9つずつ書いてもらい、もっとも当てはまるものから順に番 号をつけてもらう。質問の一つを「当店(社)への質問」にすることで、疑問や不安を 解消することができる

それぞれの質問に対し、回答欄が9つあるので、この欄をできるだけ埋めてもらいます。そして、9つの回答のなかで、もっとも該当すると思うものから順に1~9の番号を振ってもらうのです。解答欄が9つもある理由は、思いつきではなく、よく考えてもらうため。悩んで絞り出した答えに本音や本来の人柄が出ることもあり、最初に書いた回答の番号が「1」になるとは限りません。この回答内容や番号を見れば、ある程度、性格や仕事への姿勢などを読み取ることはできるはずです。

このシートを使ううえでのポイントが、6つの質問のうちの一つを、「当店(社)への質問」にすることです。応募者は、働く場所を選ぶために、店を見極めようとしています。そのために、わからないことや不安に思っていることがあるはずなので、それを面接を始める前に書いてもらうのです。シートに書かれた疑問にしっかり答えるのはもちろん、面接前にどんな疑問を持っていたかを知ることで、その人が重視しているものも見えてきます。

このようなシートを使った面接なら、いわゆる「NG質問」をしてしまう危険が少なくなることもメリットです。面接では、業務に対する適正や能力を判断する目的以外に、興味本位で個人情報を聞くことはNGです。特に家族の収入・職業・資産、本籍地、思想や宗教、支持政党、婚姻の有無や予定などは、避けるべき話題といえます。会話の流れで何気なく聞いたことから、不快な思いをさせて思わぬトラブルや、企業や店の評判を落とすことにもつながりかねません。質問シートをベースに進めれば、NGの話題に触れる可能性が少なくなるはずです。

【POINT】合格はその場で伝える

辞退者には理由を聞き、採用の道を探る

売り手市場の現在、特にアルバイトの採用で細かい評価は重要ではありません。面接の印象がいまいちでも、働き始めると変わる人も多いので、「決定的にダメでなければ採用」くらいがよいでしょう。むしろ、応募者が「この店で働きたい」と意欲を持ってくれたか、つまり口説けたかが重要です。

そして、合格はその場で伝えるのがベター。もし応募者が保留したり辞退したら、その理由を聞いて解決法を提示し、口説き直すこともできるからです。また、辞退した理由によっては、時間をおいて再アプローチすることで採用に至るケースもあります。返却の希望がなければ、履歴書は一定期間、保管しておくことをおすすめします。

【ANOTHER POINT】面接は求人に関する様々な情報を得る絶好の機会!

主題からは逸れますが、面接は応募者から採用活動に関する情報を聞き出すチャンスでもあります。「普段、どんな求人サイトや求人誌を利用しているか」「その媒体を使っている理由」なども聞いてみましょう。合否の判定には無関係ですが、私の経験では率直に答えてくれる人がほとんどです。“働く場所の候補として自分の店を選んでくれる人は、どんな媒体をどんな理由で使っているのか”という有益な情報を得られる絶好の機会です。NG質問になる心配もありませんから、積極的に聞いて、その情報を採用活動に活かしましょう。

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