2020/03/24 特集

スタッフをまとめ、チーム力UP! 行動派店長のチームビルディング術(2ページ目)

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「本気の面接」と「新人研修」を導入し、社員同士の交流も深めてチーム力UP

大学1年時に飲食店でアルバイトを始め、4年生のとき、“本気の接客”が注目されていた「陽はまたのぼる 府内店」の系列店にアルバイトで入店。2018年3月に正社員になり、同年9月、リニューアルした系列店「陽はまたのぼる竹田はなれ店」に配属され、副店長、店長を歴任。

店長のやりがいは?
お客様の心からの笑顔に出会えたとき、成長を見守ってきたスタッフがお客様にほめられたときに、やりがいを実感します。

自分の長所と短所は?
長所は人に対して全力で向き合うところと、好きなことにはどんどん取り組むところ。数字が苦手で、苦手意識を持つものに対して、積極的になれないのが短所です。

接客の楽しさに目覚め、人材育成の統括を目指す

 大分駅の北側に広がる繁華街にある、大分のソウルフードともつ鍋が自慢の居酒屋、「陽はまたのぼる 竹田 はなれ店」。2018年9月のリニューアルオープンの際、店長候補として立候補したのが、その半年前にアルバイトから正社員になったばかりの花苑(はなぞの)麗氏だった。選考を経て、統括部長の下、店長としての業務を中心的に学び始めたが、チームづくりは手探りの状態。そこでまず力を入れたのが、アルバイトへの面接・研修と、社員同士の絆の強化。以来、徐々にチーム力が育まれ、接客レベルも向上し、前年実績を超える売上を継続的に実現している。「接客の楽しさに触れたのは、大学入学後に始めた居酒屋でのアルバイト」と花苑氏は振り返る。4年生の春、「学生最後の1年間は、本気で接客と向き合える店で働きたい」と、当時、現在の店のすぐ近くにあった「陽はまたのぼる府内店」の門をたたく。同店は2014年、花苑氏が大学1年のときに「居酒屋甲子園」で優勝。地元ではよく知られた繁盛店だった。首尾よくアルバイト採用が叶って、系列店へ配属。飲食店の様々なポジションならではの思考や想いを知りたいという考えから、アルバイトながら店長会議、料理長会議、数字会議などにも参加して、接客以外にも幅広く貪欲に学んだ1年だった。

【花苑山流・行動のポイント】
月に1度は県外へ視察

必ず月に1度は県外に出て、気になる飲食店を視察する。距離的に近く、興味深い店が多い福岡県の繁華街がメイン。面白い取り組みを見つけたときは、仲間にフィードバックし、自店に合わせてアレンジして取り入れることも少なくない。

社内の他部署の会議にも参加
アルバイト時代から「飲食店のすべてを学びたい」と思っていたため、店長になる前から店長会議や数字会議などに参加。料理人の仕事と気持ちを理解するために、料理長会議にも参加して、食材や料理の知識を深め、接客に生かしている。

スマイルランチ
店の社員全員が、営業前の店に昼食持参で集まり、ランチを食べながらディスカッションする「スマイルランチ」を、月1回企画している。「来年度の行動指針」「営業中に特に意識するべきこと」など毎回テーマを設け、方向性を確認する。

個人方針発表会
社員が仕事における目標や夢、キャリアプランを発表し合う「個人方針発表会」を、花苑氏が提案して定期開催。各自が資料を作成し、プレゼンテーションを行う。「聞いたからには全力で応援する」ことをルールにして信頼関係を築く。

 大学卒業時、一度は他業種への就職を考えたが「本当に好きなのは飲食業」と気がついた花苑氏は、2018年2月、アルバイトから正社員に。そして、現在の店舗で新しい取り組みを精力的に展開し始めた。その1つが「本気の面接」だ。それまでのアルバイトの採用面接は、会社の理念と条件を伝えることが主な内容。しかし「応募者の人生や価値観を深く知ったうえで、一緒に働きたい」と考えた花苑氏は、1時間以上をかけて、これまでの人生で感動したこと、辛かったことなど10の質問を投げかけることにした。「人間の行動の背後には、それぞれが背負った人生があります。面接でその一端でも聞き出せたら、寄り添うことができるし、成長を支えられるはず」と花苑氏。すぐに心を開いてくれる人ばかりではないが、聞き出せた内容はノートに記録。「定期的に見返すごとに、新たな発見があったり、別の角度からのコミュニケーション方法を思いついたりもします。徐々に心の距離を縮められ、今ではアルバイトスタッフ全体がチームの一員として力を発揮していると感じています」(花苑氏)。

“本気の面接”で本音を引き出す!

アルバイトの採用面接を、理念の説明や条件のすり合わせに終わらせず、これまでの経験について話してもらい、信頼関係の土台を築く。質問内容は「人生で一番感動したこと」「一番辛かったこと」など10項目。すべて記録にとり、1時間以上かかることもある。

手作りの資料や「研修」で行動の意味を浸透

アルバイトに対する研修では、手作りのイラストシートや動画、パワーポイントを駆使して、対話を進める。1つ1つの接客アクションの具体的なやり方とともに、そのアクションがなぜ必要なのかを、花苑氏のフィルターを通してわかりやすく説明する。

 もう1つ、花苑氏が力を入れているのが「新人研修」だ。現在、「働くとは何か研修」「5S11A研修」を実施しつつ、オリジナルの「100時間研修プログラム」の構築を目指している。この「新人研修」の特徴は、就業初日と2日目に、花苑氏が自らの実践によって体得した接客ノウハウを、手作りのイラストや動画によって、イメージしやすいよう伝えていることだ。例えば、会社全体の取り組みである「5S11A」(接客の5つのシーンと11のアクション)の1つに「取りざらッシュ」(取り皿交換)がある。もともとは「来店客に言われる前に取り皿を交換する」ことだが、花苑氏は「新たに出す料理を一番おいしく味わってもらうためには、取り皿の交換は不可欠」と、その意義を深掘り。アクションを単なる項目に終わらせず、自分のフィルターを通して、目的を理解してから具体的に行動できるよう伝えている。「この研修によって、接客の方向性が一致してきた」と手応えを語る花苑氏。さらに、社員同士の絆を深める「スマイルランチ」なども行い、チームの土台づくりにも気を配っている。

営業中はホールに立ち、来店客が笑顔になれる接客を行うとともに、アルバイトスタッフに常に目配りして、成長をサポート

 「目標は人材育成部長」と花苑氏。現在作成中の「100時間研修プログラム」を全店で共有できるレベルにブラッシュアップし、スタッフの成長と来店客の笑顔、会社の発展を追求する。

花苑氏が自主的に作成中のオリジナル人材育成プログラム「100時間研修プログラム」。自社全店で使えるレベルを目指している

陽はまたのぼる 竹田 はなれ店(大分・大分駅北口)
大分県大分市府内町1-2-4 府内1 番館ビルB1
https://r.gnavi.co.jp/n6u9kkaw0000/
JR大分駅徒歩5分のビル地階に、2013年オープン。2018年、オープンキッチンのある開放的な空間にリニューアルし、大分地鶏の「鶏の蒲焼串」などのほか、地元食材を使った郷土料理をメインに提供。主に30~50代のビジネス層を集客。

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