飲食業界は人手不足から人余りに?
一時的に人材不足が解消し、経験者を採用しやすい状況
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、かつてない激しい環境変化の真っ只中にある飲食業界。この状況下で、これまで慢性的に続いてきた人手不足にも変化が起きている。内閣府と財務省が発表した今年4~6月期の法人企業景気予測調査でも、特に宿泊・飲食サービス業において、従業員が「過剰気味」と答えた企業の割合が「不足気味」を大きく上回り、“人余り”の状況が顕著となっている。
サービス業に特化した研修を提供するグローイング・アカデミーの学長である有本均氏は、現状について「確かにコロナ禍を受けて、飲食業の人手不足は解消されている状況ですが、これはあくまで一時的なものでしょう」と指摘する。「この先、コロナの影響がどのくらい長引くか予測が難しいものの、長期的には日本の労働人口が減っていくことは間違いなく、5年後、10年後の採用状況を考えると楽観視はできません」。言い換えれば、一時的に人余りに転じている今は、コロナ後を見据えて新たな人材の獲得や育成に注力するチャンスでもある。
現在の人余りの状況をさらに細かく見ると、勤務先店舗の閉店などで転職を余儀なくされた、飲食業経験のある求職者が多いことが特徴に挙げられる。そのため、即戦力となる人材を採用しやすいメリットがあるが、一方で考慮すべき点も。「経験者であるということは、ほかの企業・店の文化や風土、仕事の進め方などが体に染みついた人でもあるということです。そうした、自店とは全く違う色を持つ人たちが採用市場に多く集まっているのが現状」と有本氏。だからこそ、どのような人を選び、どのように育てていくかがより肝要になる。
また一方で、採用活動だけでなく、今いる従業員を大切にする取り組みや働きかけも欠かせない。コロナ禍の厳しい状況の中でも、店に残ることを選んだ社員やアルバイトスタッフだからこそ、これまで以上に目を配り、彼らがやりがいを持って働ける環境を整える重要性が増している。
ウィズコロナのこの時代に、店や企業はどのようなことに留意して人材を採用・育成し、従業員との関係を築いていくべきか、掘り下げていく。