2020/08/18 特集

採用戦線に異変あり!? ウィズコロナの人材を考える(5ページ目)

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人を生かす組織としての在り方とは?

教育や評価を仕組み化してしっかり運用する“覚悟”を

 先述の育成や評価の話でもキーワードとして挙がったように、人を生かす組織であるためには、教育や評価の仕組み化が重要だと有本氏は言う。「仕組みとは、平たく言えば、個人の能力に左右されず、全員が共有し、実践できる手法のこと。『仕組み化する』の反対は『上司の力量に任せる』です」。

 人に任せると、力量によって成果がゼロから100までばらつく恐れがあるが、それを仕組みに落とし込み、考え方と手法を習得することで、誰でも一定レベルの教育ができるようになる。「その仕組みの中に、それぞれの企業が大切にする価値観や風土・文化、『こういう人を育てたい』『こんな店づくりをしてほしい』といった考え方や方針を、しっかり入れ込むことが大切です」と有本氏は解説する。

 ただ、せっかく教育や評価の仕組みを作っても、それを運用する段階でうまくいかないというケースも起こりがちだ。その要因の1つとして有本氏は「『作った以上はしっかり運用する!』という経営者の覚悟が足りていないように思います」と指摘。「自社の将来を考えて人を育てることに経営者が優先順位を置いていれば、おのずと制度を運用することに対しての覚悟が生まれ、運用責任者をきちんと決めて、最重要事項として進めていくはずです。もし現状で、仕組みや制度はあるのにうまく機能していないのであれば、自社にとっての優先順位をもう一度見つめ直すところから始めることをおすすめします」とアドバイスする。

 また、ウィズコロナの店舗営業において、具体的に「人を生かす」方向性として、忙しさに応じてメリハリをつけた人員配置を徹底し、暇な時間帯の人手の余剰をなくすことも重要になる。特に忘年会シーズンも含め、この先しばらくは大規模な宴会が減少する代わりに、少人数のグループへと細分化が進むことが予想される。その場合、よりきめ細やかなサービスが求められるため、「人時売上の向上」に意識を向け、適切な人員配置によって時間帯ごとの差異をなくしていく工夫が必要だ。加えて、1つの店の業務だけに通じた人材ではなく、グループ内の複数店舗や複数業態でも力を発揮できる人材の育成も、今後はこれまで以上に重要になるだろう。

「未曽有の状況に直面している今こそ、人材育成と評価の仕組みを整える重要性が増している」と語る有本氏

 最後にもう1つ、有本氏が今だからこそ取り組むべきこととして挙げるのが、「自分たちの店や会社をこの先どうしていくか」という将来設計を、経営幹部だけでなく、従業員やアルバイトスタッフも交えて話し合い、一緒に考えていくことだ。「なぜなら、現在のコロナの状況下では、従業員にとって『この先のことや、会社が考えていることがよくわからない』という漠然とした不安が、モチベーションの低下に直結しやすいからです。当然、先を見通しにくい状況下で経営者の方も悲観的な思考に陥りやすくなっていることでしょう。今できることについて全員で前向きなアイデアを出し合い、行動に移していくことで、従業員の不安を完全に拭い去ることは難しくても、『わからない』ことからくるモチベーションの低下を防ぐことにはつながります」と有本氏は言う。

 「育成」と「評価」を両輪に、それらを仕組みとして定着させ、覚悟を決めてしっかりと運用すること。これを基本姿勢として、ウィズコロナの人材の生かし方を真剣に考えて取り組むことで、この先に再び訪れるであろう人手不足に対して、先回りして備えたい。

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