忘年会シーズンを控え、あらためて店のサービスを見直す時期。ワンランク上の接客を実践する“できるサービスマン”は、日ごろ何を考え、営業しているのか。接客に定評のある店舗のサービスマンに、その心得やスタイルを聞いた。
想像力や観察力を鍛え、来店客に寄り添い心をつかむ!
【東京・赤坂】Turandot 臥龍居(トゥーランドット ガリュウキョ)
情報を意識的にインプット。日常生活でも観察眼を養う
中国料理において日本を代表するシェフのひとり、脇屋友詞氏が率いるWakiyaグループ。「Turandot 臥龍居」をはじめ4店舗を展開し、体に優しい中国料理を提供するとともに、ホスピタリティに満ちた心地よいサービスにも定評がある。統括支配人を務める萩原清澄氏は、Wakiyaの接客の基本を「お客様の心に寄り添ったサービス」と語る。「同じお客様でも来店時の目的や気分は毎回異なり、それに応じてサービスは変わってきます。常連のお客様はもちろん、おそば1杯を食べに来られたお客様に対しても、そのときの気持ちを的確に汲んだサービスを追求しています」(萩原氏)。
そんな接客をするためには、営業中は常に緊張感を持ち、店内にくまなく目を配りながら、いつでも瞬時に適切な対応ができる心構えを、自らにもスタッフにも徹底する。予約客の情報は、可能なかぎり事前に調べてその人のバックボーンも含めて理解に努める。また、日ごろから経済や時事などのニュースやSNSで流れる常連客の情報などにも目を通し、最新の情報を入手することも欠かさない。「お客様がどんな背景で店にいらっしゃるのか、来店の前後も想像して接することで一歩踏み込んだサービスが可能になります。例えば、出張帰りのお客様が来店されれば、『いらっしゃいませ』ではなく、『お帰りなさい』という言葉のほうが温かみがありますよね。そういった言葉を重ねることが心をつかむと考えています」(萩原氏)。一方で、事前情報の少ない新規客の場合は、席に案内するまでのわずかな時間に、話し方や歩き方、物腰などから相手がどのような人物かを見極める。そのうえで相性のよいサービススタッフを瞬時に考え、その場で配置換えをすることもあるという。
こうした観察眼や想像力を磨くためには、「日常生活でも意識して周りに目を配り、人物像や何を考えているかを想像するトレーニングが大切」と萩原氏は語る。そうすれば感覚は次第に研ぎ澄まされ、例えば、企業のトップや特に配慮が必要な人が予約などをせずに来店した際も勘が働くようになるという。こういった萩原氏の指導を受けるスタッフ・増田健太氏は「指導されたことをまずやってみて、その結果を振り返り、どういう意図で言われたのかを自分に落とし込むようにしています。意識的に情報を入手することも心がけ、お客様の心や状況を読む力が少しずつ身に付いてきました」と語る。
サービスの仕事に就く若手へ萩原氏は、「自分というブランドを売り込む姿勢で接客してほしい」と呼びかける。「お客様が『楽しかった』『よい店だった』と思えるかは、サービスにかかっていると言っても過言ではありません。そのことに誇りを持って前向きに仕事に臨めば、おのずと周りに人は集まり、よりよい仕事につながるはずです」。萩原氏はプロフェッショナルな「サービスマン」という職業の認知度を上げるべく、セミナーや著書を通しても発信に力を注いでいる。