さりげない心遣いと印象に残る会話が日常を特別な一日に
【東京・新宿】KICHIRI 新宿
来店客と会話で関係を深め、お見送りで生の声を聞く
居酒屋やハンバーグ業態など、様々な飲食店を展開しながら「おもてなしブランドNo.1企業」を目指す、株式会社きちり。同社でホスピタリティクリエイターとして、接客指導やスタッフ育成に当たるのが濵田汐里氏だ。
「大学時代に『KICHIRI』でアルバイトをして、接客の楽しさに目覚めました」(濵田氏)。高校時代も飲食店でアルバイトをしており、そこではマニュアル通りの接客をしていればよかったが、「KICHIRI」にはマニュアルがなく、自分で考えて行動することが求められたという。そのなかで、濵田氏は「さりげなく居心地のよさを演出するのが“おもてなし”」と考えるようになった。「自分がされてうれしいことを、相手にもする。何気ない日が特別なものになるようにしたいと思っています」。
その想いを表すために、濵田氏は来店客の状況をよく見て先を読む。例えば、店内を5分に1回歩き、各席の状況を的確に把握。客が目線を上げたり、コールボタンを探す素振りが見えたら、呼ばれる前にさっと席に行く。「大事なのは心遣いです。料理を運ぶたびに取り皿を持っていくと、テーブルが狭くなってしまいます。であれば、状況を見て必要なときだけ持っていけばいい。心を読んでその場の雰囲気に合わせたおもてなしをしています」(濵田氏)。
来店客に対してどんなことができるかを考えるためにも、コミュニケーションを大事にする。例えば、持ち物や服装などから「お買い物ですか」「お仕事、お疲れさまです」などと声をかけ、乾杯時に「おめでとう」の声が聞こえれば、何のお祝いかを探り、サプライズでデザートを用意することも。また、KICHIRIではコミュニケーションを取る機会を増やすために、客席で仕上げるメニューも用意している。アボカドに玉ねぎなどを混ぜてディップ状に仕上げる「メキシカン フレッシュ ワカモレ」(1069円)はその1つ。「作っている間は調理の説明をするだけでなく、来店動機などや個人的な会話などもするようにして、印象を残すようにしています」と濵田氏。
そして、濵田氏が特に重視するのがお見送りだ。エレベーターまで案内し、「今日はいかがでしたか?」などと感想を聞く。もし表情が曇れば、「何かございましたか」とお声がけをし、その場でフォローをする。「最後にお話しできれば、滞在中に気になることがあったとしてもカバーすることができ、サイレントクレームを防ぐことにもつながります。お帰りの際にお客様から“素”の『ありがとう』の言葉をいただけると、接客できてよかったなと思えますね」(濵田氏)。
接客に携わる人に対し、濵田氏は「日々、新しい出会いがあり、同じことがないのが接客。何か1つでも目的を持って、これからの人生にプラスになる働き方をしてほしいです」と、アドバイスする。今後については、「社内の講演会などを通じ、スタッフに自分が考える“おもてなし”を伝えたい」と語り、自らのノウハウを惜しみなく教えていこうと考えている。