2014/06/11 特集

味を引き立てる香りが食欲増進!夏のスパイス料理

夏に向けて、スパイスを効かせた料理で食欲増進!今回は、スパイスの魅力をプロに聞くとともに、3名のシェフにスパイスを使った料理を考案してもらった。ぜひ、夏の新メニューの参考にしていただきたい。

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暑い夏がやってくると、食欲が落ち、体力が落ちてしまうことも、しばしば。そんな夏に向けて、スパイスを効かせた料理で食欲増進!今回は、スパイスの魅力をプロに聞くとともに、3名のシェフにスパイスを使った料理を考案してもらった。ぜひ、夏の新メニューの参考にしていただきたい。

スパイスライフアドバイザー大平 美弥氏スパイスの特性を理解し、活用・応用方法などを提案・指導できる資格「スパイスコーディネーターマスター」を2009年に取得。2010年より「Miya Spice Salon」を主宰し、スパイスライフアドバイザーとして活躍。スパイスの楽しさを広めようと講演、テレビ、ラジオ出演などを行うとともに、レシピ開発、スパイス&ハーブティーの監修、飲食店へスパイスに関する提案なども手がける。

スパイスの4大作用を知り、料理の幅を広げる

料理の味や香りを引き立てる名脇役のスパイス。その働きは大きく4つに分けられる。「臭み取り、香りづけ、色づけ、辛みづけがスパイスの4大作用です。また、多くのスパイスは芳香成分を持っています。一番強い作用を持つ『主効果』と二次的・三次的な作用を持つ『副効果』があるものが多く、それぞれのスパイスの作用と特性を理解して活用すると、メニューの幅がグンと広がります」と、教えてくれたのは、スパイスライフアドバイザーの大平美弥氏だ。

また、スパイスと混同されがちなのがハーブ。両者にはどのような違いがあるのだろうか。「ハーブはもともと『薬草』を指しており、毒性があるものも。トリカブトのように危険なものもあります。それに対し、スパイスは食品に分類されており、安心して使えます」(大平氏)。スパイスとハーブの違いを正しく理解したうえで料理に活かすことが必要といえそうだ。

そこでさらに知っておきたいのが、スパイスの作用や特徴を引き出す方法。スパイスには香りのもととなる精油などの成分が含まれており、これらをうまく抽出させることで、料理の印象も大きく変わるのだ。成分を抽出させるには油、アルコール、酢、水と合わせることが有効で、どれを組み合わせるかはそれぞれのスパイスで異なる。「料理人の方は、例えばトウガラシは油で炒めると辛みや香りが立つなど、経験値で理にかなった使い方をしていると思うのですが、その裏付けとなる理由を理解しておくと、新しいメニューを作るときにスパイスをより効果的に使えると思います」と大平氏はアドバイスする。

効果を最大限引き出すには、タイミングと分量が重要

スパイスを使うタイミングや分量も重要だ。「下ごしらえのときだけ」「調理中だけ」「最初から最後まで入れておいても問題ない」など、使うタイミングがスパイスの種類によって異なる。

例えば、煮込み料理によく使うローレル(クスノキ科)。煮込む際に切り込みを入れたり、ちぎったりすると精油成分が出やすくなるが、そのままにしておくと、苦みやアクも出てしまうため、味付けをする前に引き上げることがポイントだ。「スパイスは植物なので、同じ科目のものは似た性質を持っていることが多いです。食材に関しても同じ科目と相性がよいので、それぞれの科目を知っておくと使い方の参考になります」と大平氏は話す。さらに、分量についても注意が必要だ。「入れ過ぎると『オーバースパイス現象』といって、料理のバランスを崩すことにつながります。味や香りをみながら適量を探すことが大事ですね」と大平氏。

また、フレッシュを使うか、乾燥したドライを使うかにも気を遣いたい。例えば、フレッシュは新鮮な香りで彩りもよいが、水分が多いため青臭い成分がアクとして出やすい。そうした特性を理解したうえで料理によって使い分けたい。

スパイスは種類が多く、奥が深いが、大平氏に夏におすすめのスパイスを下に挙げてもらった。また、次ページからは、3名のシェフがスパイスを使った料理を考案。様々な特性を知ったうえで、香り高いスパイスメニューを提案してみてはいかがだろうか。

スパイスはハーブと違い、「食品」として安心して使える食材と位置付けられている。様々な特性を持つため、それを最大限に引き出す方法も知っておきたい

夏の料理におすすめのスパイス

1 トウガラシ(ナス科)気温が高い夏は汗をかくと体温が下がり、涼しく感じることがある。刺激的な辛みを持つトウガラシは発汗作用を促すため、トウガラシをたっぷり使った料理は夏にぴったり。パウダーの方が辛みを直接的に感じるので、辛くしたいときはパウダーを。辛みを抑えたいときはホールを使うのがおすすめだが、煮込むほどに辛くなるので注意。実として食べる場合はフレッシュを使う。様々な品種があるので、料理に応じて使い分けるとよい。
2 サンショウ(ミカン科)口の中がしびれるような辛さが特徴のサンショウは、ミカン科の植物。こってりしたウナギ料理に合わせるのは、柑橘系の爽やかさを出したいためだ。サンショウにはホールと、乾燥した果皮(かひ)をすりつぶした粉サンショウがある。しびれが心配なときはホールを使用し、料理から外せるようにすればよい。煮込む際は調理の最後まで入れておいてよいが、香りが強いので注意したい。和食や中華で使うイメージが強いが、洋食の肉や魚料理のソースにも合う。
3 ゴマ(ゴマ科)セサミン、ゴマリグナンなどの抗酸化成分を含むゴマは、紫外線で体の酸化が進んでしまう夏にぴったりなスパイス。特有の香りが食欲をそそるが、成分があるのは外皮の中。だが、外皮はとても硬く、成分は不揮発(ふきはつ)性であるため、使用する際は粒のまま使うよりも、すったり、炒るなどして成分を出しやすくすることが重要。香りも立ちやすくなり、体への吸収率もよくなる。たくさん使うとコクが出るが、カロリーも高くなるので注意。
4 コリアンダー(セリ科)コリアンダーはエスニック料理によく使われ、癖のある香りを持つパクチーの種子だ。しかし、芳香成分はまったく異なり、甘く爽やかな香りが特徴で、夏の暑さによるイライラやストレスを和らげることも。臭みを取る働きがあるので、羊肉や豚肉、鹿・鴨などのジビエなど、においの強い肉料理に使うとよい。また、成分は酢やアルコールに溶けやすい性質を持つので、ピクルスを漬ける際に入れたり、カクテルなどに入れたりしても香りが立つ。
5 カルダモン(セリ科)胃腸の働きが衰える夏に使いたいスパイスが、カルダモンとスターアニスだ。カルダモンは、清涼感のある香りと独特の風味を持つ。鞘(さや)状の外皮には芳香成分がなく、中の種子に成分が含まれているので、外皮に切り込みを入れたり、中の黒い種子を取り出したりして使う。手軽に使いたい場合はパウダーを活用すると便利だ。
6 スターアニス(モクレン科)スターアニスは、果実に数個の袋果(たいか)がついた星形が特徴で、甘い香りを持つ。中国では八角と呼ばれ、臭み消しや香りづけに使われる。果皮部に香りがあり、成分はアルコールに溶けやすい。煮込む際は調理の最後まで入れておいても問題はないが、香りが強いので使い過ぎは要注意。パウダーを肉料理のソースなどに使う方法もある。

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