寒い季節の訪れとともに、温かいお酒のニーズが高まってくる。そこで今回は、日本酒やカクテル、ワインなどのホットドリンクを売りに、温度や味、提供方法を工夫して、来店につなげている3店舗を紹介する。
11段階に設定した日本酒の温度で最高の味を提案
【東京・品川】ぬる燗佐藤 御殿山茶寮
各銘柄を最適な温度で提供。特長を書いたカードも好評
東京のJR品川駅構内の商業施設「エキュート品川」にある「ぬる燗佐藤 御殿山茶寮」がオープンしたのは、約1年前の2014年10月末。同店は、六本木にある「ぬる燗佐藤」の姉妹店としてオープン。「種類豊富な日本酒を様々な温度で楽しめる店」をコンセプトに掲げ、新鮮な魚介を中心に日本酒に合う料理を提供している。
店に入るとまず壁の棚一面にずらりと並んだ日本酒の一升瓶に目を奪われる。ここに並んでいるもの以外も含め、提供する日本酒は常時200種以上。ここに季節のおすすめも20種ほど加わるため、計220種以上という充実の品ぞろえだ。これらの日本酒の提供温度は、約0℃の「みぞれ」から55℃以上の「飛びきり燗」まで、5~10℃ごとに区分けされた11種類から選ぶことができる(一部メニューを除く)。「それぞれの日本酒のおいしさをいちばん引き出せる適温を知ってもらうのはもちろん、飲み慣れた銘柄でも10℃温度を変えると味がどう変わるかを試していただきたいです」と、株式会社東京レストランツファクトリー第三事業部・統括マネージャーの金子陽樹氏は話す。
接客では、まず好みを聞き出し、それに合ったおすすめの銘柄と温度を提案するようにしている。スッキリした飲み口を好むなら冷酒、フルーティーなものを好むなら、香りが楽しめる常温以上で。酸味のある銘柄は、冷やし過ぎると酸味が立つので約15℃の「涼冷え」をすすめるという。
カウンター席の前には“お燗場”を設置。お燗は微妙な温度の加減が必要なだけに、こだわりの設計で、左右で温度の異なる湯が張られている。温める際には、温度計を用いることで、正確な温度で提供できるように工夫している。「お燗のよさは体温に近いため、酔いがゆっくり回ること。お酒が強くない方でも、時間をかけて日本酒の味を存分に楽しんでいただけるのが特長と言えますね」と金子氏。
ほかにも、約30種のおちょこから好きなものを客に選んでもらうなど、日本酒好きの人を満足させる細やかな工夫が随所になされている。また、酒を出す際は、銘柄や特長が書かれた名刺サイズのカードを添えている。このカードは持ち帰りOKで「自分が飲んだ中で好みの味を覚えておきたい」「いろいろな銘柄を飲んでみたい」という人に好評。「コレクションしたカードを名刺ファイルにまとめて、来店する際に必ず持ってくる常連もいる」(金子氏)という。
駅の構内ということもあり、宴会の需要は六本木店に比べて少ないが、逆に「新幹線の発車時刻までちょっと1杯」という利用が多い。店の入口付近には“ちょい呑み”に適した「スタンディングスペース」も用意されており、ランチタイムに日本酒を楽しむ客も少なくない。特に帰省シーズンの8月は予想を大きく超える売上を記録した。
「今後も、日本酒の新しい飲み方を提案していきたい」と話す金子氏。料理一品ごとに、その料理に合う日本酒を提案するといった新たなコースの提供も検討しているという。
第三事業部統括マネージャー
金子陽樹氏六本木店で3年間勤めた後、「御殿山茶寮」の開店より統括マネージャーとして経営にも携わる。日本酒の豊富な知識や酒蔵とのパイプをサービス向上に活かす。
東京都港区高輪3-26-27
JR東日本品川駅構内エキュート品川2F
http://r.gnavi.co.jp/rcm51ayk0000/JR品川駅構内にある「エキュート品川」内。来店客の男女比は5:5で、客層はファミリーやシニア層など幅広く、まさにターミナル駅ならでは。エキュート品川の開業10周年に合わせ、蔵元来店イベントも開催している。