家庭で飲む人が増えれば、飲食店の価値も高まる
──「GEM by moto」では、四合瓶(※2)の日本酒を主軸に仕入れています。新政酒造も四合瓶を主軸とした製造に切り替えられていますが、この経緯は?
佐藤 4年ほど前に千葉さんから、新店では四合瓶をメインに扱うつもりだと聞き、大賛成しました。ちょうどその頃、うちで造る日本酒も一升瓶から四合瓶に切り替えたいと考えていたんです。一升瓶に比べると、四合瓶のほうが新鮮なうちに飲み切りやすい。特に鮮度が重要な銘柄の場合はお客様にとってメリットが大きく、飲食店にとっても管理しやすいです。僕は日本酒をおいしく楽しんでもらうために、四合瓶での流通がもっと増えてくることを期待しています。
千葉 私が四合瓶を仕入れたいと思ったきっかけは、四合瓶が並んでいる海外の店を見て、単純にかっこいいと思ったこと。ただコスト面で不安もあり、迷っていたなか、佐藤さんに背中を押してもらいました。四合瓶は回転が早いので、例えば抜栓から2日経った銘柄と、同じ銘柄の開けたてを飲み比べてもらうといった提供の仕方もしやすい。お客様からも好評です。
また、お店だけでなく、家庭の冷蔵庫にも入れやすいので、四合瓶の流通が増えれば、日本酒を家で日常的に飲む層も増えると思います。ビールやワインと同じように日本酒を家で飲む人が増えれば、飲食店にとってもプラス。「同じ銘柄でもGEMで飲んだら味の印象が違う」「GEMの料理と合わせた方がおいしい」と思ってもらえたら、それが来店の動機になるからです。
佐藤 飲食店側の千葉さんがそこまで広い視点で考えているのはすごいですね。確かに、1人でも多くのお客様に日本酒の良さを知ってもらわなければ、需要は伸びていきません。
飲食店ならではのよさをわかりやすく伝えていくことも大事だと思う。僕が飲食店限定の銘柄を造っているのには、店ならではの体験の一つになればという考えもあります。
※2 日本酒4合(720ml)が入るボトル。以前は一升瓶(1.8ℓ)での流通がほとんどだったが、消費の変化によって四合瓶で流通する銘柄も増えている。
──お二人とも、業界全体の発展も含めた広い視野で日本酒の未来を見据えていますが、今後チャレンジしてみたいことは?
佐藤 今、自社で酒米を無農薬栽培する取り組みを本格化しています。ゆくゆくは、田んぼの近くに小さな蔵を構えて、培養酵母を使わず、より原始的で自然と共生した酒造りを追求するのが夢ですね。
千葉 佐藤さんは予告なく次々に新しいチャレンジをされるので、追いかけるのが大変ですが、そのたびに私も新しいことを学べるのが本当に楽しい。私自身は今後、日本酒と料理のペアリングを海外で発信する活動をスタートしたいと考えています。
佐藤 四合瓶のときもそうでしたが、僕と千葉さんは、考える内容や思いつくタイミングが似ていて、ここまで同じようなステップを踏みながら成長してきた感があります。日本酒の現状や未来を、もっとよくできるはずだと思っていることも、大きな共通項ですね。
千葉 2人とも1年前と同じことはしていないですよね。より楽しい日本酒体験をお客様に提供していけるよう、これからもチャレンジし続けたいです。
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