ノンアルコールペアリングで、店のコンセプトや世界観を体感
sio [東京・代々木上原]
お茶に果実などのエキスを加えて立体的な味わいに
東京・代々木上原駅からほど近く、2018年7月にオープンした現代的なフレンチを提供する「sio(シオ)」。前身となるレストラン「Gris(グリ)」を、当時シェフだった鳥羽周作氏が買い取り、様々なクリエイターと共に創り上げる「共創型レストラン」をコンセプトに出店した。30~40代半ばのビジネス層を中心に集客し、クリエイターや起業家など感度の高い人たちが多く集まる店として注目を集めている。
同店が提供するのは、ディナー10品(10800円)、ランチ6品(6264円)のお任せコース。それぞれ「アルコールペアリング」(ディナー6480円、ランチ4320円)と「ノンアルコールペアリング」(ディナー5400円、ランチ3240円)を付けることができる。なかでも「ノンアルコールペアリング」では、中国や台湾産のお茶をベースにした「ティーペアリング」を提供しているのが特徴だ。「アルコールが苦手な人が増えていますが、そういった方にも当店のコンセプトや料理の世界観を体感して、楽しんでほしいと考えています。おしぼりやカトラリー、照明、トイレ用の香りなど、すべてにこだわりがあるので、ノンアルコールドリンクにもこだわるのは自然な流れですね」と鳥羽氏は話す。
ティーペアリングの内容は、ソムリエ2名で考案。出店当初は、台湾茶をメインに提供していたが、エンターテインメント性を追求し、記憶に残るものにするため、現在は、お茶に果実やスパイスから抽出したエキスをブレンド。そこに炭酸を加えるなどして、立体的な味を作り出している。ソムリエの亀井崇広氏は「鳥羽シェフの料理は、味わいが優しく全体にまとまりがあるため、ドリンクで何か不足な要素を補うような手法は合いません。料理のポイントをふまえ、例えば料理の色や使用している食材など、“どこにフックをかけるか”を考えて、オリジナルのドリンクを作っています」と語る。
亀井氏は、まず、料理にどんなワインに合わせるかをイメージしたうえで、その印象をノンアルコールで再現するには、どのようなドリンクがよいかを考えるという。「例えば、前菜の『イカ/ブッラータチーズ』には、表面にハーブが使われているので、さわやかなハーブの風味にソーヴィニヨン・ブランの白ワインを合わせたいと考えました。そこで、チーズは発酵食品なので、お茶も発酵茶である中国産のキームンを採用。そこに、ライチのエキスや陳皮で香りをつけ、イメージするワインに近づけました」(亀井氏)。
さらに、使用するグラスにも工夫がある。コースの1品目にはシンプルなスープが提供されるが、その繊細なイメージを持ったまま、先入観を持たずに2品目の料理と一緒にドリンクを味わってほしいと、中が見えない黒いブラインドグラスで提供。味わった後には何を使ったドリンクなのかを説明するため、来店客との会話のきっかけにもなっている。そのほかのドリンクも飲む量や見せ方を考え、最適な形状のグラスを選んでいる。
「お客様にもっと喜んでもらうためにはどうするか。そこにこだわると、多様なアプローチが見えてきます」と鳥羽氏。9月には都内の商業施設内への出店が決まっており、今後ますます目が離せなくなりそうだ。
東京都渋谷区上原1-35-3
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