銘柄や酒器、提供温度タイミングなど日本酒をトータルコーディネート
はなおか [東京・大塚]
日本酒ありきで料理を考案より深い味わいを追求
東京・大塚に店を構える「はなおか」は、「最高の日本酒をおいしく飲ませる」がコンセプトの和食店だ。「日本酒を心地よく味わっていただきたい。そのためにコース全体の流れを考え、お客様に合わせて日本酒をトータルコーディネートしています」と語るのは、店主の花岡賢氏。通常のペアリングのように一品の料理と一杯の酒が織りなす相乗効果を狙うのではなく、来店客の飲むペースや嗜好、全体の起承転結の流れを考えて厳選した日本酒を提供する。
料理は、全9品(4320円)と全10品(5076円)のコースのみ。ほとんどの人が全10品のコースを選び、日本酒のペアリングを楽しむという。「料理は、日本酒を味わうための創作和食です。内容は月替わりで『この日本酒とこの料理は相性がよさそう』という仮説を立てて試作し、例えば『この日本酒に合わせるなら少し苦みがほしい』となれば、香味野菜を添えたり、よりおいしく日本酒を味わえる要素を料理に加えています」(花岡氏)。
合わせる日本酒は基本的にお任せ。女将の和田静佳氏が、来店客の様子を見て選定するという。「前菜にはさわやかでフルーティな吟醸酒、刺身はすっきりとした辛口、メインの料理には個性的でしっかりとした味わいのものという大まかな取り決めはありますが、お客様一人ひとりを見極めて日本酒を選んでいます。一緒に来店された方それぞれに、違う銘柄をお出しすることも珍しくないですね」(和田氏)。
その提供方法は、まず、最初に供する酒で来店客のペースを判断。料理や酒の進み具合、表情に気を配りつつ、次の一杯を考える。そのため、料理一品につき酒一杯ではなく、例えば飲み方がゆるやかな人には、そのとき食べている料理だけでなく、次に提供する料理にも合う日本酒を選ぶという。「日本酒で〝川の流れのように〟全体をつないで提供するのが理想です。ご満足いただくためにも利用シーンを把握し、どのタイミングでどんな酒を出すかや、合計の金額が上がりすぎないよう調整することも考えています」(和田氏)。
さらに、提供する日本酒の温度は5~50℃まで設定し、銘柄ごとに最適な温度で提供。酒器も多彩にそろえている。「酒器の材質や形状によって、酒の味わいや口当たりが驚くほど変わります。日本酒が持つ酸味や甘みなどの特徴がもっとも際立つのがグラス。この傾向は磁器、陶器、木製の順に弱まります。器の形状は酒の味に大きく影響しますので、個性やお客様の状況を見て選んでいます」と和田氏はこだわりを話す。
日本酒への造詣の深さに裏打ちされた、即興と呼ぶにふさわしいペアリングを提供している同店。これからも日本酒に真摯に向き合い、日本酒が醸し出す豊かな時間を届けたいという。
東京都豊島区南大塚1-51-18
※閉店