2019/04/09 特集

ドリンクと料理のマリアージュはもっと自由に! 進化するペアリング(4ページ目)

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モダンなベトナム料理にワインや日本酒などを合わせて新しい道筋を

An Di(アンディ)[東京・外苑前]

低温調理し、肉のきめ細やかさを際立たせたメインの「子羊の炭火焼」には、凝縮感があるが重くないオーストリア産の赤ワインを。添えられたブラッドオレンジとシナモンのチャツネがワインの熟成感とも絶妙なハーモニーを奏でる

膨大なドリンクリストからベストな一杯を提供

 「An Di(アンディ)」は、ワインテイスター・ソムリエの大越基裕氏が、自らの世界観を表現する場として2017年7月オープン。フレンチの世界で活躍してきた大越氏だが、「世界の食は、軽やかで、フレッシュな方向に進んでいる」と分析。その方向性と親和性のよいベトナム料理を、洗練したレストランフードに昇華させ、世界中のワインや日本酒などと一緒に楽しませることをテーマに据えた。

 大越氏は、東京・銀座のフランス料理店「銀座レカン」でソムリエを務めていた頃から、ペアリングコースを提供していたため、同店でもコース(6500円)に合わせ、「ドリンクペアリング」(5300円)を提案。「ワインが好きでも、膨大なワインリストから料理に合ったワインを選べるお客様は非常に少ない。ペアリングコースには、お客様に『今日はこの道を歩いてみてください』というメッセージなのです」と、大越氏は話す。

前菜の「ティーリーフサラダ」は、茶葉にもち麦やナッツなどを混ぜて食す。五味のうち、足りない甘みをイチゴのドレッシング(右奥)と、赤果実の香り漂うガメイ(ブドウの品種)100%のフランス産スパークリングワインで補う
コースの3品目で提供する「根菜とアサリの生春巻き」には、糖度は低いが旨みが感じられる日本酒「澤屋まつもと 守破離」をペアリング。両者の繊細な味わいが引き立つ

 ペアリングの手法にはいくつかあり、大越氏は「中和」「同調感」「風味」「テクスチャー(食感)」「五味(甘み・酸味・塩み・旨み・苦み)」でペアリングを提案。例えば「中和」では、料理の脂などの重さをドリンクで中和させたり、塩辛さを甘さで中和させたりする。「同調感」では、料理の酸味とドリンクの酸味を組み合わせたり、ハーブにハーブのような香りがするドリンクを合わせたりと、味や香りに同調感を出すとペアリングがしやすいという。「当店では、フォーにぬる燗の日本酒を提供していますが、これは『テクスチャー』で合わせたもの。食感や温度を考えれば、ワインより日本酒のほうが合うと思います」(大越氏)。

各国のワインが充実。このリストの中から、最適な一杯を提供するのが「ドリンクペアリング」だ

 また、ペアリングの内容を来店客に説明することも大切と考えている。感性の世界を言葉に落とし込むことで、共感と感動が生まれ、豊かな体験ができるからだ。通常、ペアリングは提供しているレストランでの注文率が3割といわれるなか、同店の注文率は4~5割。「日本酒や焼酎には、まだ世界に認められていない価値と、ワインとは異なる旨みがあります。これからも積極的に使っていきたいですね」と大越氏。今後もペアリングの世界観を広げていく。

An Di(アンディ)[東京・外苑前]
東京都渋谷区神宮前3-42-12
https://r.gnavi.co.jp/dc7nan8w0000/
ローカルフードであるベトナム料理を、現代的な調理法を組み合わせて、モダンな料理に昇華。ワインのみならず、日本酒や焼酎、サワーなどもラインナップし、女性を中心に集客する。
オーナー 大越基裕氏
東京・銀座の「銀座レカン」でシェフソムリエを務めた後、2013年に独立。ワインテイスターとして、様々な企業やレストランへのコンサルタント、セミナーの講師や執筆など幅広く活躍する。

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