2023/08/22 特別企画

飲食店に「ヴィ―ガン」「ベジタリアン」の来店が増加~基礎知識を高め、メニューに盛り込もう!~

「ヴィ―ガン」「ベジタリアン」の人口は年々増加傾向にある。インバウンドも好調な今、飲食店としては注文に応えるための対策が必要だ。菜食料理についての基礎知識と、メニュー考案のコツを具体的に紹介する。

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目次
飲食店のヴィーガン(ビーガン)対応は集客にも直結⁉
「ヴィ―ガン」「ベジタリアン」とは?
「精進料理」は、日本伝統の菜食料理
フレシキタリアン(動物性食品の摂取を減らす人)が増加傾向
肉や魚の代替となる食品を「栄養素」の視点で考える
メニュー案「ヴィ―ガン向け」「ベジタリアン向け」
今すぐ対応できる!メニューへの表示

飲食店のヴィーガン(ビーガン)対応は集客にも直結⁉

 動物愛護の観点や地球環境への配慮の高まりから、動物性食品を含まない「ヴィ―ガン料理」や「ベジタリアン料理」が広がりを見せている。インバウンドはもちろん、日本人の菜食主義人口も増加傾向である状況をふまえ、飲食店としてはオーダー時に応えられるようにメニューを用意し、集客や売上アップにつなげたいところだ。来店客から「ベジタリアン向けの料理はありますか?」という質問を受けて店員が困るようでは、次回以降の継続的な来店機会を失うことになるだろう。

 まず「ヴィ―ガン」「ベジタリアン」を正しく理解しよう。その上で、使用できる食品や組み合わせから、メニューとして取り入れやすい料理の一例やメニュー表掲示のコツなどを紹介していく。

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「ヴィ―ガン」「ベジタリアン」とは?

「ヴィ―ガン」とは

 卵や乳製品を含む動物性食物を一切口にせず、植物性の食品のみを食べる完全菜食主義者のこと。畜産による環境への影響や、動物への残虐な行為を減らそうという動物愛護・保護の観点から実践する人が多い。

・ヴィ―ガンが食べない食品

食品例(豚肉、牛肉、魚、卵)
 肉製品はもちろん、卵、乳製品、ハチミツも摂取しない。ゼラチンなどの動物性タンパク、カーマインなどの虫から抽出した色素、カツオだしが含まれるつゆなど、食品添加物や調味料も動物に由来するものは口にしない。白砂糖も加工の過程で骨炭と呼ばれる牛骨粉が使用されることがあるため、精製されていない黒砂糖やてんさい糖、メープルシロップなどで代用することが多い。

・ヴィ―ガン料理に使用できる食品

食品例(ナッツ類、種子類のスーパーフード)
 米、野菜、果物、穀類、ナッツ類、種子類などの栄養価の高いスーパーフード、海藻、キノコ類など。肉の代わりに大豆を使用した代替肉、乳製品の代わりに豆乳やココナッツミルクを使用した製品を食べることも。飲酒は、植物から作られるアルコールであればOK。

「ベジタリアン」とは

 野菜を中心とした食生活を送る菜食主義者のこと。さまざまな菜食主義者の”総称”で、ヴィーガンもベジタリアンの一種。ベジタリアンには種類があり、肉は食べないが乳製品を食べる「ラクト・ベジタリアン」、卵や乳製品を食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」、卵や乳製品に加え、魚も食べる「ペスコ・ベジタリアン」などがある。

・「ラクト・オボ・ベジタリアン」が食べない食品

食品例(加工肉)
 一般的に欧米では、ベジタリアン=ラクト・オボ・ベジタリアン(卵や乳製品を食べる)を指す場合が多い。肉や魚は食べず植物性食品を中心に摂取し、動物福祉や環境問題といった関心のある社会問題や、自身の健康状態などに合わせて食物を取り入れている。

・ベジタリアン料理に使用できる食品

食品例(穀類)
 ベジタリアンの種類にもよるが、米や穀類、野菜、果物、きのこ類などの植物性食品を使用する。ヴィーガン同様、白砂糖は避ける人が多い。

「精進料理」は、日本伝統の菜食料理

「精進料理」とは

精進料理・がんもどきの煮物

 「殺生をしない」という仏教の教えに基づき、肉や魚を使用せず、野菜や穀類、海藻などだけで作られる。ヴィーガンと共通する部分も多く、「オリエンタル・ベジタリアン」と呼ばれることも。

・精進料理に使用しない食品

食品例(ニンニク、タマネギ)
 野菜の中で、煩悩を刺激するとされる五葷(ごくん)(ニンニク、タマネギ、ネギ、ニラ、ラッキョウ)は避ける。基本的には肉や魚は口にしないが、殺生されているところを「見ていない」、「聞いていない」、自分のために殺生されたと「知らない」という3つの条件が満たされれば肉や魚介類を使ってもよいとされている。

・精進料理に使用できる食品

食品例(干しシイタケ、昆布、麩、高野豆腐、切り干し大根)
 「精進物」と呼ばれる野菜、穀類、海藻類、豆類、木の実、果実などの植物性食品を使用。植物性食品の乾物も多く使われる。そして、見た目や食感を肉や魚に似せた「もどき料理」が多く存在し、がんもどきはその一つ。湯葉、コンニャク、シイタケなどがもどき料理に活用されることも多い。また、鰹節は動物性食品にあたるため、だしには昆布と干しシイタケでとる精進だしが使われる。

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フレシキタリアン(動物性食品の摂取を減らす人)が増加傾向

 動物性食物をあえて避ける、またはゆるく取り入れる「フレキシタリアン」についてはご存じだろうか。「柔軟に」という意味を持つ英語のFlexible(フレキシブル)とベジタリアンを組み合わせた言葉で、植物性食品をベースに、場合によっては肉類も食べる柔軟性のある食生活を送る人のことを指す。自炊をする際には肉や魚を使用しない、週に数回は肉を食べない日を設けるなど、日本でも意識的に動物性食品の摂取を減らす人が増加傾向にあるようだ(※1)。

(※1)参考 【23年1月】日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査 

肉や魚の代替となる食品を「栄養素」の視点で考える

 次に、ヴィ―ガン・ベジタリアンメニューを考案する際の基礎知識として「栄養素」について触れる。体に不可欠な栄養素の中には、主に動物性食物に多く含まれるものがあるのだが、その栄養素をうまく補填することができる植物性の食品を、具体的に挙げてみよう。

・たんぱく質

食品例(大豆)
 たんぱく質は肉、魚、卵、乳製品といった動物性食品に多く含まれるため、ヴィーガンの場合に最も不足しやすい栄養素の一つ。植物性タンパク質が豊富に含まれる大豆製品など、豆類や穀類を摂取することで栄養不足を防ぐことができる。

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・不飽和脂肪酸(DHA、EPA)

食品例(チアシード)
 不飽和脂肪酸の中でもオメガ3は主に魚に多く含まれる。植物性食物では、チアシード、フラックスシード、ヘンプシード、くるみなどの種子類にも豊富に含まれるため、それらの食品で補填が可能だ。

・ビタミンD

食品例(キノコ類)
 主な摂取源は魚類、肉類、卵類で、野菜や穀類にはほとんど含まれない。植物性食物ではキノコ類の含有量が高く、特にキクラゲに豊富に含まれる。

・鉄

食品例(ホウレン草)
 鉄は大きく2種に分けられ、動物性食品に含まれるヘム鉄と、植物性食品に含まれる非ヘム鉄がある。非ヘム鉄はホウレン草、大豆製品、キヌアなどに多く含まれるが、ヘム鉄に比べて吸収率が低いとされる。非ヘム鉄の吸収率は、タンパク質やビタミンCなどと一緒に摂取することで高めることができる。

・カルシウム

食品例(ひじき)
 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、小魚などの動物性食品に多く含まれ、植物性食品では豆腐、納豆などの大豆製品に豊富。ひじきなどの海藻や、小松菜、水菜などの野菜からも多く摂取できる。

・亜鉛

食品例(きな粉)
 亜鉛を多く含む食品にはカキ、豚レバー、牛赤身肉などがある。一方、植物性食物では、きな粉、油揚げ、納豆、切り干し大根、小麦胚芽、玄米、カシューナッツ、ココア、デーツなどに多く、食事からデザートなどさまざまな料理でヴィーガンメニュー用の代替食品として活用できる。

メニュー案「ヴィ―ガン向け」「ベジタリアン向け」

 使用できる食品と栄養素について理解したところで、満足感が得られるメニューは何か、飲食店が用意しやすく、また需要も見込めるメニューは何かという視点で、「ヴィ―ガン向け」「ベジタリアン(ラクト・オボ・ベジタリアン)向け」に分けて具体的に見てみよう。

・ヴィ―ガン向け

  • メニュー例(ひよこ豆カレー)
  • メニュー例(大豆ミートの唐揚げ風)

 植物性食品は動物性よりも脂質が低く、さっぱりとした料理になりがち。スパイスや調味料を活用し、香りや辛みでインパクトのあるメニューに仕上げよう。大豆ミートを使ったドライカレーや豆カレーなど、カレー粉を使った味付けは汎用性が高い。

 また、切り方や調理法を工夫して食べ応え出すのもポイント。天ぷらのような揚げ物は満足度を出しやすいメニューの一つだ。衣に卵を使用せず、小麦粉と片栗粉を使って野菜を揚げる野菜天ぷら、タケノコやトマト、パプリカで作る寿司など、和食はヴィーガン料理として再現しやすい。味の深みやうま味を加えるには、昆布やシイタケ、野菜だしの活用も有効だ。

 そのほか、ハンバーガーのパティは植物を原料とする代替肉を使用、唐揚げには鶏肉やつなぎの卵を使わず大豆タンパクと米粉で調理するなど、定番の肉料理をヴィーガン向けにすることは可能。原材料に豆乳などの植物性食品のみを使ったマヨネーズ風調味料や、大豆やナッツを原料にしたヴィーガンチーズなどを使用すれば、味のバリエーションも出しやすく、ポテトサラダやグラタンのようなクリーミーな味わいの料理も再現できる。

・ベジタリアン(ラクト・オボ・ベジタリアン)向け

  • メニュー例(ピザ・マルゲリータ)
  • メニュー例(コーン、豆、ひじきの天ぷら)

 卵や乳製品が使用可能なベジタリアン(ラクト・オボ・ベジタリアン)向けメニューは、マヨネーズ、チーズ、牛乳などのうま味とコクを活用し、より味や食感の幅を出しやすい。

 洋食であれば、ひき肉を使用しない野菜のコロッケ、野菜たっぷりのチーズグラタン、野菜だしのクリームシチューなど、バリエーション豊富に再現可能。イタリアンでは、マルゲリータピザ、きのこのピザ、野菜のペペロンチーノなど、通常メニューがベジタリアンメニューに当てはまる場合もある。

 そのほか、豆腐のそぼろと炒り卵の二食丼、精進だしの茶碗蒸し、厚揚げのチーズ焼きなど、だしを変更したり肉を抜くだけで活用できる「和」のメニューも。つなぎに卵を使用できるため、天ぷらも通常の衣を使用し、野菜に置き換えるだけでベジタリアンメニューに変更できる。

今すぐ対応できる!メニューへの表示

 例で挙げたように、ヴィ―ガン・ベジタリアンメニューは生野菜サラダに限ったものではない。自店のメニューを見直すと、動物性食品を使っていない料理がすでにいくつかあるのでは。そういった商品はメニュー表にアイコンや目印をつけるだけでヴィーガン、ベジタリアンの利用客に訴求できる。動物性食品を使わない商品だけを抜き出し、別途ヴィーガンメニュー(植物性食品使用)、ベジタリアンメニュー(植物性食品使用、卵と乳製品を含む)などとしてポップにまとめてもよいだろう。インバウンドなど、需要が高い店は実践みてはいかがだろうか。

 ただし、肉や魚の天ぷらを揚げた油でベジタリアン用の天ぷらを調理したり、通常のパティをグリルした鉄板で大豆ミートのパティを調理すると、肉の小片や肉汁がベジタリアンメニューに混入してしまう可能性が。メニュー導入の際には調理器具を分けるといった配慮が必要だ。

 大豆ミートなどの代替食品の認知度が徐々に高まり、日本国内でも食の多様性が広がる昨今。今後ますますヴィ―ガン・ベジタリアンメニューの需要が高まっていきそうだ。時代とともに変化するニーズに柔軟に対応し、利用客に選ばれる店づくりに役立てたい。

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