今食べたいのは、カジュアルな本格割烹！「お造り」コーヨーハイツ@学芸大学

「お造り」5種盛り合わせ

コーヨーハイツ（東京・学芸大学）

学芸大学が飲食業界で注目されたきっかけは、多くの飲食店が大ピンチに陥っていたコロナ禍の時に、客足が変わらなかったことだといいます。食のトレンド感度が高い若い層が集まる最先端飲食エリアとして認知され、「勝負するなら学芸大学で」という飲食店が急増。そんな学芸大学で、絶妙にカジュアルダウンした本格割烹の料理が大評判を呼んでいるのが、「コーヨーハイツ」です。

今回は、2023年9月にオープンした「コーヨーハイツ」で提供される名物料理「お造り」5種盛り合わせを、週末の酒場巡りが趣味というフードライター・桑原恵美子さんが紹介。刺身醤油を使わずにそれぞれ違う味付けで仕立てる、組み合わせと魅せ方の秘けつを教えていただきました。

・ヴィンテージマンションの一室、看板のない隠れ家
・料理長の心意気と技、センスが光る「お造り」5種盛り合わせ
・代表と料理長は、野球部の先輩と後輩
・手ごろな価格なのに、ハイクオリティーなメニューがたくさん
・舌の肥えた鷹番（たかばん）の地元住民から大好評

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ヴィンテージマンションの一室、看板のない隠れ家

「コーヨーハイツ」があるのは、学芸大学から徒歩3分のところ。以前、このコーナーで紹介した「大衆酒場レインカラー」の右側の路地を入った、裏手です。

とはいえ、住所を頼りに近くまで行っても、あるのは普通のマンション。飲食店らしき看板も見当たらないのでとまどうかもしれません。でもよく見ると、このマンションの名前が「弘洋（こうよう）ハイツ」。

一見、普通の住宅に見えるドアが、店の入り口なのです。

おそるおそるドアを開けると、いきなりヴィンテージ感のあるカウンター席が。8坪の住居用のマンションをフルリノベーションして、カウンターのみ15席のお店にしたそうです。

品書きには本格割烹を思わせる料理名が並ぶ一方、ハムカツ、アジフライなどの居酒屋料理も。実はこのお店は、神楽坂の一軒家割烹「神楽坂 夢二」の新業態。学芸大学に集まる食の感度が高い若い層に、本格割烹の味をカジュアルに提供したいとオープンしたのだとか。

料理長の心意気と技、センスが光る「お造り」5種盛り合わせ

「本格割烹料理を、若い人にも広めたい」というbros＆co.代表取締役の高宮成さん、大戸快哲さんと、料理長の今福聡さんの意気込みが伝わるのが、刺身醤油を使わずに各々の味付けで食べさせる「お造り」盛り合わせ。

「お造り」盛り合わせには、「神楽坂 夢二」で出しているのと同じ大間のホンマグロを必ず入れるのがこだわりです。ホンマグロには、自家製のニラ醤油をトッピング。ニラのパンチのある香りをまとったホンマグロのおいしいこと。

アマエビとアカガイには、料理長特製の甘醤油をからめて。初めて食べた時から、この甘醤油で食べる刺身のおいしさにハマってしまいました。もう、刺身醤油には戻れないかも…！

ヒラスズキには、とろりとした濃厚なコクのある胡麻酢。白身魚の上品なうま味とのハーモニーが楽しいんです。アオリイカは、塩とレモンでさっぱりと。

別の日に食べた「お造り」3種盛り合わせ（900円）の時は、アオリイカに自家製の海苔佃煮がトッピングされていました。「海苔佃煮って、白いご飯だけじゃなく、イカともこんなに相性がいいのか」と驚いたのを覚えています。食べ慣れているはずのお刺身の新しい扉を開いてくれるのが、このお店のお造りなのです。

代表と料理長は、野球部の先輩と後輩

福島県出身の料理長の今福さんは、広島を代表する老舗割烹「酔心」で9年間修業を積み、いくつかの個人店でさらに腕を磨いた若きベテランです。2017年に「神楽坂 夢二」オープンに際して、野球部の先輩だった高宮さんに引き抜かれて料理長に就任。「最先端の飲食店が集まる学芸大学で勝負してみたい」という高宮さんの想いを受けて、「コーヨーハイツ」を任されました。現在はbros＆co.の総料理長として、いくつもの店舗を兼任しています。

手ごろな価格なのに、ハイクオリティーなメニューがたくさん

割烹クオリティーのお料理と同時に、親しみやすいカジュアルなお料理もそろえているのがこのお店の特徴。その代表が、「ニラユッケ」です。

「中華に使われることが多く、メインになり得ないニラを、クセを感じさせずに食べさせるには」と考え、ユッケ風に卵黄を乗せることを思いついたお料理。シャキシャキした歯ごたえと甘醤油の絶妙な甘辛さ、卵黄のコクがあいまって、ニラが最高のパフォーマンスを発揮しています。

春先には、揚げた桜エビをプラスした「ニラユッケ」が登場予定。話題となったメニューこそ進化系を考案して変化を付けていくのだとか。

居酒屋の定番、アジフライも、今福料理長の手にかかるとこの美しさ。衣の繊細な薄さをご覧ください。中はレアという絶妙な揚げ具合で運ばれてくるので、皿が置かれた瞬間にかぶりついてほしい！自家製わさびタルタルがまた絶品で、このタルタルだけでもお酒が飲めるほど。

シメにぜひ食べてほしいのが、土鍋ごはん。伊賀焼の陶芸作家・稲葉直人氏の作品を見て、高宮さんが一目惚れしたという土鍋を使い、今福さんの出身地である福島県只見産のコシヒカリを注文の都度、丁寧に炊きあげます。

舌の肥えた鷹番（たかばん）の地元住民から大好評

高宮さんによると、当初のターゲットは20～30代の女性だったのですが、オープンしてみると、それよりやや年齢層の高い地元の住民が足しげく通ってくれているそうです。

「学芸大学に長く住み続けているこのマンションのオーナーさんに聞いたのですが、今でこそ学芸大学はネオ居酒屋の街になっているけれど、少し入った鷹番は古くからの高級住宅街で、舌の肥えた人たちが多いそうです。『若者の店が増えたのはいいことだけれど、本当はもっとゆっくり飲みたい』と思っていた方たちのニーズに、この店がちょうどぴったりハマったのかもしれません。若い方々に割烹のよさを広く知っていただきたいという願いは変わりませんが、近くにいる方々も大事にして、細く長く続けていきたいです」（高宮さん）。

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