ビストロ仕込みの「ピタサンド」が代々木上原で大ヒット!いよいよ日本で人気が加速する予感

「La Pita de Maison Cinquantecinq(ラ ピタ ドゥ メゾンサンカントサンク)」は「ピタサンド」を主力商品とした中東料理店。フランス・パリで定着している中東の「ピタサンド」をモデルに、フレンチのプロが本気でメニューを開発。オープン1年足らずで公式インスタグラムのフォロワー数は1万人超えし、週末は150個売り上げています。

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「ピタサンド・ファラフェルサンドイッチ」

La Pita de Maison Cinquantecinq(ラ ピタ ドゥ メゾンサンカントサンク)(東京・代々木上原) 

流行最先端の街・パリでは、中東風の「ピタサンド」が日常食としてなじんでいることをご存じでしょうか。

いよいよ日本にもこのフードカルチャーの波が来る…と、先んじて”渾身のピタサンド”を看板に開店したお店があるといいます。今回は、"生きがいはおいしいランチとスイーツ"というフードライター小田中雅子さんが、東京・代々木上原にある「La Pita de Maison Cinquantecinq(ラ ピタ ドゥ メゾンサンカントサンク)」の「ピタサンド・ファラフェルサンドイッチ」を紹介。日本で「ピタサンド」人気の火付け役となるであろう一品の、メニュー開発までの秘話やポイント、そして”食べてみたい”と人の心を動かす術を深掘りします。

小田中 雅子
フードライター。新聞社系メディアのグルメ記事でライターとしてのキャリアをスタート。以後、ぐるなび媒体「dressing」など主に飲食関連のWebサイトで記事を書いている。ランチやスイーツ、パンなどのグルメ情報が得意。特にランチはその日の幸福度を決めると信じ、店選びに1時間以上かけるほど、おいしいランチ探しに余念がない。

フードカルチャーをけん引する「シェルシュ」が手掛けた新業態
ポケットにぎっしり詰め込むのは、フレンチテイストの中東料理
もっと広く知ってほしい、さまざまな人が楽しめる中東料理の魅力
SNSフォロワーは1万人超え! その秘訣は…

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フードカルチャーをけん引する「シェルシュ」が手掛けた新業態

西洋の空気が流れる、3階建てのかわいらしい建物

「代々木上原」駅を出て線路沿いに歩くと見えてくる、ひと際目立つヨーロッパ風の建物。赤い屋根、オレンジの土壁に白いドア、花鉢で飾られた2階の窓。その一角に佇むだけでパリ郊外を訪れたような気分になります。

この建物に店を構えているのが「La Pita de Maison Cinquantecinq(ラ ピタ ドゥ メゾン サンカントサンク、以下ラ ピタ)」。以前は、人気ビストロ「メゾン サンカントサンク」があった場所と言えば「ああ、あの店」と思い出す方もいらっしゃるかもしれません。2010年にオープン以来、個性的な飲食店がそろう代々木上原エリアにあって、フレンチをカジュアルに楽しめる店として長年愛されてきた場所です。

1階入り口のメニュースタンド。アルファベットと数字で西洋風に

そのビストロの移転を機に、ここに「ラ ピタ」が誕生しました。

「駅前にある立地の良さを生かすには、店の前を行き来するさまざまな人たちに、気軽に楽しんでもらえるものがいいなと思い、テイクアウトができる業態を考えました。その中で浮かんだのがパリで見かける中東料理のレストラン。ランチにはピタサンドを気軽に楽しんで、ディナーには野菜たっぷりの中東料理でワインを飲む。そんな店を作ろうと思いました」と語るのは、「ラ ピタ」を運営する株式会社シェルシュ代表取締役の丸山智博さん。

  • 2階にはカウンター席とテーブル席。大きな窓があり、開放感がある店内
  • 3階は屋根裏部屋風。椅子も一脚ずつ異なり個性的

1階にはキッチンとテイクアウトを受け付けるレジ台、そしてカウンター2席。2階と3階はビストロ時代のテイストをそのまま活かしたイートインスペース。3階の屋根裏部屋のような低い天井にアンティーク家具が並ぶフロアは、隠れ家の趣いっぱいで、ちょっとおしゃれなデートに使いたくなります。

  • テーブルセット。器にもこだわり、骨董市で買ったものなどを使用している
  • ランチメニューは見開き1枚に集約。使用フォントがやわらかくスタイリッシュ

ポケットにぎっしり詰め込むのは、フレンチテイストの中東料理

昼はピタサンド、夜はビストロメニューが楽しめる「ラ ピタ」。ピタパンに自家製総菜や自家製ソースを挟んだピタサンドは、週末になれば、イートインとテイクアウト合わせて150個もでる人気ぶりです。

看板メニューは「ファラフェルサンドイッチ」(ジュニアサイズ/1,210円)

定番4種類、季節代わり1種類ある中で一番人気は「ファラフェルサンドイッチ」。筆者も大好物で、わざわざ代々木上原で途中下車して買いに行くほどです。

調理風景。サンドは注文を受けてから作る。フカフカのピタパンがまるで器のようにさまざまな具材が盛り付けられていく

まず最初に2種類のパンから一つを選びます。「ふかふか定番の“プレーン”」か「もちもちの天然酵母“カンパーニュ”」。パンの特徴がすぐわかるネーミングが秀逸です。店をオープンするにあたって、一番苦心したのが理想のピタパン探しだったそう。

“プレーン”は、以前、人気ピタサンド店を経営し、今は卸をしている「PITA THE GREAT(ピタ・ザ・グレート)」のもの。厚みがあり、ふかふかの食べ心地がたまりません。“カンパーニュ”は練馬のベーカリー「コンビニエンス高橋」製造。少し酸味を感じ、小麦香る生地はパン好きのハートをつかみます。

「ラ ピタ」のファラフェルは衣がカリッと薄く、パセリがたっぷり使われ、香りの高さが魅力 (画像提供: ラ ピタ ドゥ メゾンサンカントサンク)

具材のファラフェルとは、ひよこ豆やそら豆を潰して、スパイスやハーブなどを混ぜ、丸めて揚げた中東のコロッケのような料理。この“コロッケ”を、ひよこ豆のペースト、フムスと新鮮な野菜、コルニッションと呼ばれる小型きゅうりのピクルス、マッブッハというパプリカとトマトをハーブやスパイスで煮込んだソースと一緒にパンにはさみ、タヒニソースというゴマのソースが掛けられます。「名称にたくさんカタカナが並んで、魔法の呪文のようですよね」と笑う丸山さん。

これでジュニアサイズ! サイドディッシュとセットで食したい人におすすめのサイズ

「野菜だけで作られたサンドをどうやっておいしくしようかと考えました。食感や味わいに変化をもたせ、途中で食べ飽きない工夫をしています。こだわりはボリュームです。パリでは腹ペコの男性がハンバーガーのようにガッツリ、ピタサンドを食べています。日本でもそんな風景が見られたらと思い、ファストフード好きな人が食べても満足感のあるピタサンドを目指しました」(丸山さん)。

サンドのサイズは通常とジュニアと2つあり、通常がいわば“大盛り”サイズ。サイドメニューのポテトなどを付けるなら、ジュニアサイズにした方がいいほどボリュームがあります。

野菜がたっぷり、どれも優しい味わいで、ほっこり心和みます。カリカリとクリスピーな食感のファラフェルはホクホクで、シルクのようになめらかなフムスとゴマのコクたっぷりのタヒニソースと相性は抜群。食べ進めると底にあるスパイシーなマッブッハのパンチのある味わいが顔を出し、まるでフレンチの一皿のような奥深い味わいのサンドです。

お肉を使ったメニューで人気のピタサンド「ニューオリンズフライドチキン」(ジュニアサイズ/1,320円)。「から揚げが大好きなんです」と丸山さん。バターミルクとスパイスを合わせた“洋風から揚げ”に、ランチソースと呼ばれるドレッシングを合わせている。ソースはバターミルクの代わりに、クレームエペスという発酵クリームを使用することで、より軽く爽やかに

もっと広く知ってほしい、さまざまな人が楽しめる中東料理の魅力

株式会社シェルシュ・代表取締役の丸山智博さん(写真右)、エリアマネージャーの今井恵里加さん(同左)

丸山さんはフレンチのシェフとしてキャリアをスタートし、独立後、ビストロ「メゾン サンカントサンク」をオープン。その後、居酒屋をジャパニーズビストロとしてアップデートした「Lanterne (ランタン)」(代々木上原店、池尻大橋店)、ギャラリーとビストロを兼ね備えた「AELU(アエル)」(現在はギャラリーのみ)、そして2024年1月には「ランタン」の進化系である大人の居酒屋「Lanterne はなれ」(東北沢)をリニューアルオープンさせるなど、個性がキラリと光る店舗を代々木上原近辺に次々と展開。そのほか、店舗コンサルティングやプロデュースなど食の分野で多岐にわたって活躍しています。

「今『ラ ピタ』は店の創成期で、ピタサンドのお店に捉えられがちですが、中東料理を気軽に楽しんでもらうというのが店のテーマです。パリに限らずヨーロッパにはどの街にも中東料理の店があって、日常生活に溶け込んでいる。そんな店をここに作ろうと思ったんです。昼はサンド、夜は中東料理のビストロのように使ってもらいたい。今は、その形にだんだんなりつつあると思います」と丸山さん。

店で使われているソースなどは全て手作り。中東で欠かせない調味料「ザアタル」も、さまざまなスパイスを取り寄せ、オリジナルレシピで作成。店舗で購入することもできる

野菜オンリーから肉の料理もそろう中東料理。ビーガンの人も、お肉が好きな人も、飲む人も飲まない人も、国籍、性別、年齢を問わずいろんな人に楽しんでもらえる店。「自分の店の利益というより、知名度がまだまだこれからのファラフェルやフムスとかを知ってもらって、東京中、いや日本中にこんなお店が増えていくことが僕の目標なんです」と丸山さんは「ラ ピタ」に込めた思いを力強く語ってくれました。

SNSフォロワーは1万人超え! その秘訣は…

「ラ ピタ」の公式インスタグラムのフォロワー数は実に1万人超え。何か仕掛けているのでしょうか。

「特別なことをしているわけではありません。発信力があると考えたものを自分たちで定期的にアップしているくらい。写真は、きれいに見え過ぎないようにするとか、料理に偏らず空間やスタッフを織り交ぜるなどの工夫はしています。海外のSNSを参考にすることはありますね」と丸山さん。

SNSは反響までを考えて発信する、だけど依存はしないという丸山さんの取り組みに、ファンが多くつく理由を見た気がします。

ビーガンの人も、お肉が好きな人も、国籍、性別、年齢を問わずいろんな人が満たされる

料理も日々工夫をし続け、定番のファラフェルやフムスも豆の潰し方、塩の入れ具合などよりよいものにするためにスタッフと共に取り組んでいるのだそう。

今後の展望について尋ねたところ「まだ初めて間もないため、まずはオペレーションとブランディングをしっかり固めたいですね。そして、海外そのままじゃなくて、『ラ ピタ』ならではのオリジナリティーのある中東料理レストランを作っていきたい。その形は直営店やプロデュースにこだわらずにやっていきたいです」と笑顔の丸山さん。

「今日はハンバーガーにする?、それともピタサンド?」ーー そんなセリフが日常になる日がくると思ったら、なんだかワクワクしてきました。

ピタサンドに合わせたいザアタル風味の「ミニフライドポテト」(セット価格350円)。ザアタルはパンチの効いたスパイシーな味わい。キーンと冷やしたビールやワインと合わせたくなる一品
「クレメ・ダンジェ タヒニとラズベリーソース」(770円)。フレンチの定番デザート「クレメ・ダンジェ」にゴマのタヒニソースを忍ばせ、ラズベリーソースとザクロをトッピング。チーズムースを食べるとほのかにゴマのコクが香り、少しエキゾチックな味わい
「コーヒー」(550円/写真左)は、スタッフ自ら生豆のセレクトから焙煎までしているオリジナル。「”Herb Are You?”の有機ハーブティー」(660円/同右)は、植物療法士(フィトセラピスト)が監修するハーブティーで、季節やリクエストに合わせて調合してもらったものを使用。どちらもホット・アイスで提供
La Pita de Maison Cinquantecinq(ラ ピタ ドゥ メゾンサンカントサンク)(東京・代々木上原)
東京都渋谷区西原3-5-1
https://r.gnavi.co.jp/ghj0h1pz0000/map/
千代田線・小田急線「代々木上原」駅北口より徒歩1分。駅前線路沿いに立つヨーロッパ風の建物はグルメ激戦区、代々木上原のレジェンド的存在。ピタサンドのイートイン、テイクアウトが主力だが、ランチタイムでもファラフェルと野菜のプレートで昼飲みを楽しむことができる。

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